二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 第四章 31話 ( No.59 )
- 日時: 2012/05/11 09:58
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
7月に入り、梅雨もすっかりあけた。
「お兄ちゃん、おっそーい!」
「明奈が急ぎすぎなんだよ」
蒼井彰(あおいあきら)ははしゃぐ明奈(あきな)の姿に苦笑した。
しかしこのように舞い上がるのも無理はない。
今まで自由の利かなかった身体で、まともに自分の足で出かけることなど出来なかったのだから。
「うっわぁ、空いてると思ったけど……いっぱいだね」
「まぁ、夏休み前といえども日曜日は混むさ」
2人は遊園地に来ていた。
明奈たっての願いだった。
「時間はあるし、乗れるやつから乗ればいいんじゃない?」
「そうだよね。それにお兄ちゃんが一緒にいるしね!」
入園してまず2人はこの遊園地の目玉でもあるジェットコースターに乗ることにした。
2人が最後尾に並んだ時点で2時間待ちとなっており、その人気さが伺えた。
「これじゃあ、これ終わったらもうお昼だね」
「そうだな。まぁちょうどいいじゃん」
「なんか勿体なかったかなぁ……。あれもこれも乗りたいのに」
明奈はそう言ってパンフレットとにらめっこしていた。
彰はそんな姿を見て、満たされていく自分の姿を内心に感じた。
(こんな日常を俺は望んでいたんだ)
魔法少女という存在自体が非日常的なのだろうが、今まではそんな非日常すら起こり得なかったのだ。
例え魔法少女という非日常があったとしても、今みたいな日常も同時にあるのだとすればそれは充分に幸せなことだ。
「明奈」
「なに?」
彰は明奈がこちらを向くのにあわせて携帯電話のカメラで写真を撮った。
「お、お兄ちゃん!?」
「はは、変な顔」
撮った写真を明奈に見せた。
「うわぁー恥ずかしい……消してよぉ」
「これも記念だろ?」
「いじわる……」
明奈のふてくされた顔を見て彰は笑った。
- Re: 第四章 32話 ( No.60 )
- 日時: 2012/05/11 09:59
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
それから2時間ほどで2人はジェットコースターに乗った。
そして昼食を適当な店でとった。
「次どこ行こうか?」
彰が明奈にそう聞くと、明菜はある一点を指差した。
「お兄ちゃん、知ってる?ここの遊園地はさっき乗ったジェットコースターと、あと観覧車も有名なの」
「観覧車が?」
入園する時に見たがどこにでもあるような普通の観覧車だった。
どこか特別というようには見えなかった。
「観覧車自体は普通なんだけど、観覧車から見える景色が凄いんだって!」
「あぁ……なるほど」
この遊園地は建築する際にあった『大人の事情』というやつで、少し高い位置に作られていた。
そのため交通の便が少し悪いのだが、逆手をとって景色の良い遊園地と宣伝していた。
「特に日没の時間が凄いらしいんだよね。でもちょっと問題があるんだ」
「問題?」
「ここに来る人は大体みんなそのことを知っているから、日没の時間帯の観覧車は凄い混むんだって」
日没の時間帯に観覧車に乗れるチャンスはせいぜい数回だろう。
そう考えれば混むのも頷ける。
「それでね、遊園地側が整理券を配るの。それがどうにか欲しいんだよね〜」
「ふむ」
彰はパンフレットを手にとって見てみた。
確かにパンフレットには午後2時に整理券を配布する旨が書かれていた。
「あと30分くらいで2時だな。早く行って並ばないとまずいんじゃないか?」
「そ、そうだよね!行こうよ、お兄ちゃん!」
2人は会計を済ませて店を出ると、足早に配布場所に向かった。
- Re: 第四章 33話 ( No.61 )
- 日時: 2012/05/11 10:00
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「はぁー」
明奈は何度目かわからないため息をついた。
「気を落とすなよ。ありゃあ無理だって」
彰たちが配布場所に着いたときには既に長蛇の列が出来ていた。
それこそ午前中に並んだジェットコースター並みだった。
一応並びはしたが、配布開始10分で配布は終了してしまった。
「せっかくだから乗ってみたかったなぁ」
「次があるよ。また来ればいいさ」
「うん……うん?」
明奈は顔を上げた先にいる子供の姿が目に入った。
子供は1人でずっと木の上を見ていた。
明奈も子供と同じように気を見上げてみた。
「あっ」
木の枝にキャラクター物の風船が引っかかっていた。
明奈は駆け足で子供のもとに向かった。
「風船、飛んでちゃったの?」
「うん……」
明奈は子供と一緒に上を見上げた。
真下に来てみると結構な高さの枝に引っかかっているのがわかった。
「あー、こりゃちょっと取れないなぁ」
後から駆けつけた彰も同じように上を見上げてつぶやいた。
「君、お母さんかお父さんは?」
彰は子供の視線の高さに合わせてしゃがむとそう聞いた。
「今日はママと2人できたの。それでね、ママがおトイレ行くからここで待っててって……」
「そっかー」
トイレの場所はさっきまで大混雑していた配布場の先だった。
未だに込み合ってるこの状況では行くのも帰ってくるのも一苦労だろう。
- Re: 第四章 34話 ( No.62 )
- 日時: 2012/05/11 10:01
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「せっかく買って貰ったのに……うぅ」
子供は瞳に涙を溜めながら再び木を見上げた。
「まいったなぁ」
彰も見上げてみるが、何度そうしても何か変わるわけでもなく、ただ立ち尽くすほかなかった。
「よし!任せて!」
「あ、明奈?」
明奈はソウルジェムを取り出し、そして魔法少女に変身した。
魔法少女に変身した明奈は羽根を出現させ、風船の高さまで飛び上がると、風船を取って下に降りた。
そしてすぐに変身を解くと、風船を子供に手渡した。
子供は風船を受け取ると目を輝かせながら明奈を見た。
「うわぁーお姉ちゃん、天使さん!?」
「私は天使じゃなくって魔法使いなんだよ」
「すっごーい!お姉ちゃん、魔法使えるんだ!見せて、見せて!」
子供が明奈の手を取ってはしゃいだ。
「こらこら!お姉ちゃんのこと困らせちゃダメでしょ!」
人ごみのほうから足早に女性が1人近づいてきた。
「あ、ママ!すっごいんだよ!このお姉ちゃん、魔法使いさんなんだよ!魔法で風船とってくれたんだよ!」
「はいはい。すみません、うちの子が迷惑かけたみたいで……」
母親は子供を抱き上げ、軽く頭を下げた。
「いえいえ、別に大したことしてませんから」
明奈が笑顔でそう返すと母親の顔も綻んだ。
「それなら良かったです。でもこの子のために色々やって頂いたみたいだし……あぁ、そうだ」
母親はカバンからチケットを1枚取り出し、明奈に手渡した。
「えぇ!これって観覧車の整理券じゃないですか!?いいんですか?」
「どうぞ、貰ってください。さっきあの人ごみに巻き込まれてたまたま貰ったものですから」
「そうなんですか?えへへ、ならお言葉に甘えて♪」
明奈は母親からチケットを受け取った。
そしてその後ちょっとした世間話をして親子と別れた。
- Re: 第四章 35話 ( No.63 )
- 日時: 2012/05/11 10:02
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「良いことをすれば良いことで帰ってくるんだねぇ〜」
明奈はチケットを手にしてだらしなく顔を綻ばせた。
「でもいいのか?あんな人前で魔法少女になんかなって」
「大丈夫だよ。人に見えないように結界はってたから。あんまり大きな範囲ははれないから、あの子には見られちゃったけどね」
明奈には少し警戒心が足りないなと、彰は思っていた。
この場に他の魔法少女が居ないとも限らないのだから。
(魔法少女は素質があれば無限に生まれる。でも魔女には限りがある。そうなれば必然的にグリーフシードは取り合いになる)
グリーフシードの取り合いとなれば起きるのは魔法少女同士に殺し合いなのだ。
そういうやる気になった人間がいつどこにいるのかわからない以上、自分の正体を明かすのは好ましくない。
(とは言え……こんなに喜ぶ明奈に説教なんてしずらいわ……)
彰は内心で言葉を噛み殺した。
何かあれば自分が明奈の身代わりになればいい。その覚悟で今ここにいるのだから。
彰は明奈の手を取った。
「お兄ちゃん?」
「次、どこいこうか?」
「そうだね……じゃあ次はあそこ行こう!」
「りょーかい」
2人は手をつないだまま目的の遊戯に向かって歩いていった。
(今掴んだ幸せも、この手も離しはしない)
彰は明奈の小さな手を握り締め、そう思った。
[chapter:第十羽]
「それじゃあ、乗車中は危険ですから暴れたりドアを開けたりしないでくださいね」
観覧車の係員は彰(あきら)と明奈(あきな)にそう言い残すと扉を閉めた。
観覧車はゆっくりと動き出した。
一周20分ほどで、一番高いところには10分ほどで到達する。
「すごい綺麗だね、お兄ちゃん」
明奈は窓から見える夕空を見て言った。
「でもてっぺんが一番綺麗だと思うよ」
「だよねー」
2人はしばらく無言で空を眺めた。
- Re: 第四章 36話 ( No.64 )
- 日時: 2012/05/11 10:03
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「なぁ、明奈」
彰はずっと気にかけていたことを今聞いてみようと思い立った。
「明奈はなんで契約したんだ?」
「え?」
明らかに動揺していた。
彰はそれを見て確信した。
「病気を治したい……それだけが理由じゃないんだろ?」
明奈は少し困った顔をして目を左右させたが、真面目な彰の表情に観念した。
「お兄ちゃんは、ママとパパがなんで死んじゃったかもちろん覚えてるよね?」
「ああ、原因の不明の爆発事故で……」
明奈は首を振った。
「違うの。あれは魔女の仕業なんだって。ゴンちゃんに教えて貰ったの」
「なんだって……」
「ワルプルギスの夜っていう凄く強い魔女がこの街に来て、その魔女と魔法少女たちが戦った結果起きた爆発だったんだよ」
「お前、まさか復讐のために?魔女や……その魔法少女たちに……」
彰がそう口にすると明奈はすっぱりとそれを否定した。
「そんなんじゃないよ。仕方の無いことだったんだから。ただね……この話を聞いて思ったの。私たちみたいに、魔女が原因で大事な人を失った人が他にもたくさん居るんだろうなって。もし私に素質があるのなら、これから先私たちのような人が増えないように出来たらいいなって」
「そっか……それが明奈の望みなんだな……」
「うん……でもね、本当はもう一つ。こっちが本当の願いかな?」
明奈は急にモジモジしだした。
そして彰の身体に自分の身体を寄せて密着させた。
「あ、明奈?」
彰が明奈のほうに顔を向けると、少し頬を赤らめた明奈と視線があった。
「お兄ちゃんはさ……私のことどう思ってる?」
「どうって……そりゃあ一番大切な存在だと思ってるよ」
「えへへ、そうなんだ。すごい嬉しいな」
明奈は満面の笑顔で返した。
しかしその笑顔はすぐにどこか寂しげなものへと変わった。
- Re: 第四章 37話 ( No.65 )
- 日時: 2012/05/11 10:03
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「私もね、お兄ちゃんのこと一番大切だし、大好き。でも……」
明奈はスカートの裾をぎゅっと握り締めた。
「私はお兄ちゃんの二番でいいよ」
「な、なんだよ……どういう意味だよ」
「私は今までほとんど寝たきりで、お兄ちゃんと出会うまでは一人ぼっちだった。お兄ちゃんと出会ってからは、お兄ちゃんがすべてだった」
「……」
「私はお兄ちゃんがそばに居てくれるだけで幸せだったし、他に欲しいものなんてなかった。私は充分に満たされてるの」
明奈は彰の手を両手で握り締めた。
「でもお兄ちゃんは私のためにやりたいことも投げ捨てて、ずっと1人で頑張ってくれた」
「俺は明奈が一番大切だから、そのためだったらどんな犠牲だって……」
「それじゃダメだよ。それじゃあ、お兄ちゃんが幸せになれっこない。私がお兄ちゃんの一番じゃ、お兄ちゃんは幸せになれないんだよ」
彰は自分の幸せなど求めたことが無かった。
自分がどんなに辛かろうと、明奈が幸せならそれでいいと思っていた。
「お兄ちゃん、クリスマスのときに鳥のガラス細工をくれたよね。羽ばたけずにいる鳥は私で、お兄ちゃんはそんな羽ばたけない私をずっと見守ってるからって」
明奈はソウルジェムを取り出した。
夕焼けの中でも、綺麗な空色をソウルジェムは保っていた。
「私は羽ばたいたよ。もう1人でも大丈夫!だから今度はお兄ちゃんが羽ばたく番だよ」
「俺は……」
彰が口にしようとした言葉は明奈の唇によって塞がれてしまった。
ほんの一瞬の出来事だったはずが、時が止まってしまったかのようにそれは長く感じた。
「はい!今までの私と、お兄ちゃんとのお別れのキス。蒼井彰のことが大好きだった私の……お別れのキスだよ」
明奈は視線を彰からはずして外に向けた。
隠すつもりの涙は、全然隠すことが出来ずに頬を伝ってスカートに落ちた。
「これから私はお兄ちゃんが羽ばたくためのサポーターなの。いつまでも妹に心配されてないで、お兄ちゃんもさっさと一番大切な人を探してね!」
窓の外を見たまま、震える声で明奈はそう言った。
彰はその言葉に答えることが出来なかった。
明奈がどんなに言っても、彰はやはり明奈以上に大切な存在など見つけられるはずがない———そう思った。
失いたくない。
その願いばかりが彰の中で堂々巡りをした。
その反面、明奈の言葉も彰の心を揺るがした。
(俺はどうすればいいんだよ……)
彰は窓の外を見た。
いつの間にか観覧車は頂上を過ぎ、折り返しを迎えたところだった。
- Re: 第四章 38話 ( No.66 )
- 日時: 2012/05/14 10:26
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「どういう……ことなんだよ」
蒼井彰(あおいあきら)は目の前で起きていることが信じられず、ただ呆然と立ち尽くしていた。
彰の目の前には鳥と人が合わさったような姿をした魔女が苦痛にも悲鳴にも聞こえる雄たけびをあげていた。
「おい!ゴンべぇ!なんで……なんで明奈(あきな)が魔女になるんだよっ!」
目の前で魔女へと変貌した明奈の姿を思い出し、彰は表情を苦痛にゆがめた。
「ソウルジェムは穢(けが)れを溜めすぎるとグリーフシードに変化するっす。そうしたらあとは魔女になるほか道はないっすね」
ゴンべぇは淡々と語る。
その淡々さが彰の怒りを爆発させた。
「お前!!なんで言わなかったあぁ!!」
ゴンべぇの首を掴み、地面にたたきつけた。
「言えば魔法少女としての活動に支障が出ると思ったっす。一応気にかけてのことだったんすけどねぇ」
「屁理屈(へりくつ)を!!」
彰はこぶしを振り上げた。
「契約……すればいいんじゃないんすか?」
振り下ろそうとしたこぶしが止まった。
彰の思考は一瞬停止した。
(契約……。俺が願えば、もしかしたら!)
彰はゴンべぇから手を離した。
「なんでも叶えられるのか?」
「もちろんっすよ。その素質があれば」
魔女になった明奈を彰は見上げた。
産まれたばかりだからか、魔女はただ不気味な声をあげるだけで何かする様子は無かった。
「明奈が魔女になったこの事実を無かったことにしてくれ」
「それが彰くんの願い。それでいいんすね?」
「ああ、叶えてくれ!俺の命などいくらでもくれてやる!」
ゴンべぇは彰の胸元に触角を伸ばした。
「ぐっ!!」
一瞬、何か身体から大事なものが引き抜かれるような感覚に陥り、意識を失いかけた。
だが何とか持ちこたえ、彰は空に浮かぶ半透明な黒色をしたソウルジェムを見た。
「さぁ、受け取るっすよ。それが新しい彰くんの始まりを告げる証だ」
彰はソウルジェムを手に取り、そして握り締めた。
- Re: 第四章 39話 ( No.67 )
- 日時: 2012/05/14 10:28
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「今日もお出かけ?」
彰が玄関で靴を履いていると、明奈はそう話しかけてきた。
「あ、ああ。ちょっとな。すぐ帰ってくるから待っててくれな」
「うん、あんまり危ないことしないでね」
彰は明奈の笑顔に見送られて家を出た。
「明奈……」
彰の願いによって魔女であった事実は無かったことになった。
だがどういうわけか、魔法少女であった記憶も無くなってしまい、その力を行使出来なくなった所為か、明菜は立つことが出来なくなっていた。
(魔女になるよりかはマシだよな……)
彰はソウルジェムを取り出した。
彰も定期的にグリーフシードを入手しなくては穢れを浄化できない。
だからこうしてたまに魔女狩りをしに行く必要があった。
「見つかればいいけどな」
ソウルジェムで魔女の気配を探る。
するとすぐさまソウルジェムに反応があった。
「近いな。ほんとすぐそこ———」
「あああぁぁぁ!!」
明奈の悲鳴だった。
彰は考えるよりも先に行動していた。
「明奈!!」
彰は明奈の部屋へと駆けていった。
部屋には胸をおさえて苦しむ明奈の姿があった。
「どうした!?痛むのか!?」
「苦しい……苦しいよ」
「くそ……そうだ!」
魔法の力である程度傷を癒したり出来ると聞いた。
専門では無いため、限界はあるだろうがやらないよりかはマシだろう。
そう思い立ち、彰はソウルジェムを取り出した。
「こ、これは!?」
ソウルジェムが魔女の気配を探知していた。
しかも明らかに明奈に対して反応している。
- Re: 第四章 40話 ( No.68 )
- 日時: 2012/05/14 10:29
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「なんでだ?もう魔女ではないのに……」
「あのときは無かったことに出来たけど、魔法少女である限り魔女化の運命は逃れられないんすよ」
「ゴンべぇ!!」
ゴンべぇはいつの間にか部屋の机の上に座り込んでいた。
「どういうことだ!確かに明奈は魔女じゃなくなったじゃないか!」
「だから『あの時』はっす。また穢れがたまれば魔女になるっす」
「なんだよ、それ……」
「彰くん。君は願いを間違えたんす。願うなら魔女であった事実ではなく、魔法少女であった事実を無かったことにすべきだったんすよ」
明奈から魔法少女という事実を奪うのは明奈の希望を奪うことだと思った。
だから魔法少女である事実を無かったことにすることを願うことは出来なかった。
自身のエゴが逆に明奈から希望を奪ってしまったのだ。
「くっそぉぉぉ!!ああああ!!」
彰は床を殴った。
しかしいくら殴ろうとも自分の愚かさをぬぐう事はできなかった。
「お兄ちゃん……」
「明奈!」
彰は明奈を抱きかかえた。
(このまま行けば明奈は……)
せめて痛みでも和らげられればと、彰は自分のソウルジェムを明奈にあてた。
「!!?」
ソウルジェムの中にある魔力が吸い出され、明奈に吸収されいた。
「な、何が!」
「彰くん!早く明奈ちゃんからソウルジェムを離すっす。このままじゃ全部吸われて死んでしまうっす!!」
彰はゴンべぇの言葉にハッとなり、すぐさま明奈からソウルジェムを離した。