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第十三章 間奏 Ⅱ〜漆黒の死神、紡がれる記憶 第十二話 ( No.591 )
日時: 2014/03/04 14:26
名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)

■第十二話③

「例えばさ、明奈ちゃんは欲しい物とかないの?」

「欲しいもの……」

そう聞かれたとき、ふと浮かんだものがあった。

「お兄ちゃん、かな」

「お兄ちゃん?」

意外な答えに、まどかは目を丸くした。

欲しいものというにはあまりにも非現実的だ。

「昔からお兄ちゃんが居てくれれば、私を護ってくれるんじゃないかなって思ってた。どんなにひどい目に遭っても、味方で居てくれて、助けてくれる……そんなお兄ちゃん」

過酷な現実の中で、いつも夢に見ていたことだった。

ある程度大きくなってからは思わなくなっていた事だが、小さい頃は自分を助けてくれるヒーロー像として架空の『兄』を想像していた。

恥ずかしい話だが、小さい頃はサンタさんや流れ星に願っていたほどだ。

だからまどかの質問に、自然と出てきたのかもしれない。

「明奈ちゃん、大丈夫?なんだか今日は様子が変だし……。何か嫌なことでもあったの?」

暗い顔をして暗い事を言ってしまったことに、明奈は後悔した。

「大丈夫、なんでもない。なんでも……」

明奈は作り笑顔でそう返したが、まどかの表情は曇ったままだった。

「もし私に出来ることだったら協力するよ!大事な友達だもん」

「とも、だち?」

聞き慣れないというか、久方ぶりに言われたその言葉に明奈は動揺した。

何度も何度も自分を殺してきた相手に友達などと、頭がおかしいのではないか。

(いや……この子は何も知らないんだから当たり前か。何動揺しちゃってるんだか)

明奈は昼食後、やはり体調が悪いということにし、早退した。

その後も明奈の心に出来たわだかまりが消えることは無かった。