二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 第四章 51話 ( No.79 )
- 日時: 2012/05/17 14:57
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
ほむらは両手に持った拳銃を弾が無くなるまで一気に撃った。
そして後方に大きくジャンプして間合いをとった。
彰は弾丸を大剣と鎧で受けとめ、なんなく凌ぐ。
(この程度ではやっぱり傷1つつけられないわね)
ほむらは彰の力に衰えが無いことを確認すると、今度は盾からマシンガンを出現させた。
「あなたの鎧は相当硬いみたいだけど、これならどうかしら?」
マシンガンから放たれた弾がものすごい速さで彰を攻めた。
さすがの彰もこれを受けることはせず、走りながら避けていく。
ほむらはそれを弾を撃ちながら追った。
次第に弾丸が打ち抜いた壁や地面のせいで砂煙が上がり、ほむらの視界を塞いでいく。
そして弾を撃ちつくした時には辺りは煙で見えなくなっていた。
(あなたが狙っているのはこの瞬間でしょう?いつでも来ればいいわ)
ほむらは背後に気配を感じた。
「!!」
ほむらは隠し持っていた手榴弾のピンを抜いて後方に投げた。
そして時を止めて爆発の範囲外に逃げると、時間停止を解除した。
先ほどほむらが居た場所で爆発が起きた。
(これでどう?さすがのあなたでも時間停止と爆発を同時には対処できないでしょ?)
ほむらは爆発の起こったほうを見つめた。
煙が晴れるよりも前に、ほむらは背筋が凍るような悪寒を感じた。
「っ!!」
咄嗟にほむらは横にとんだ。
ほむらがいた場所に巨大な大剣が突き刺さった。
「勘がいいな。それに戦いなれてる」
「どうやって抜けたの!?」
ほむらは拳銃を盾から取り出し、しゃがんだ状態で彰に向かって構えた。
「そうだな。このまま戦っていては不公平だな」
彰はほむらに向けて手を伸ばし、左手の平を広げて見せた。
「俺はこの手に触れたものを『無かったこと』にできる。爆発だろうとね」
「そんな……」
前回の戦闘では停止した時間の中を動ける能力だと思っていた。
だから停止した瞬間に避け切れないような攻撃をすればダメージを与えられると思った。
(でも実際はそんなやわな物では無かった。砂時計が戻っていたのは時間停止が『無かったこと』、つまり停止する前に戻っていたのね)
ほむらは唇をかみ締めた。
- Re: 第四章 52話 ( No.80 )
- 日時: 2012/05/17 14:57
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
彰の能力とほむらの能力は最悪に相性が悪かった。
(他のみんなと違って、私にはこの能力しかない。戦闘能力は無いに等しい……。このままじゃ……)
彰が大剣を消すのが見えた。
「今、君は自分では勝てないかもしれない———そう考えただろ?」
「え?」
武器を手放す理由も、彰の問いかけの意味も理解できなかった。
そうして一瞬思考が停止した瞬間だった。
目の前から彰が消えていた。
「ど、どこ!?」
ほむらが慌てて立ち上がろうとした時、突然激しい衝撃がほむらを襲った。
「うああ!!?」
ほむら思いっきり吹っ飛ばされ、地面を転がった。
その時ようやく自分が蹴り飛ばされたことを悟った。
「くっ……」
揺れる頭を振りながら立ち上がろうとする。
しかしまたしてもそれを彰が拒んだ。
「うっ!」
胸を足で押さえつけられ、立ち上がることを封じられた。
「絶望するのは早いよ。もっと苦しんでもらわないと、決め手にかけるだろう?」
乾いた音がした。
それが銃声であると、ほむらはすぐに理解できた。
そしてその銃弾がほむらの腹部を射抜いたことも———。
「っ!!」
「痛覚を消しているから痛みが伝わらないか?ふふ……ならこれから第二ラウンドと行こうか。一方的だけどね」
ほむらは兜の向こうから覗く目を見て戦慄した。
そして予感する。
これから自分は嬲(なぶ)り殺しにされるのだと。
- Re: 第四章 53話 ( No.81 )
- 日時: 2012/05/18 10:02
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
三人の魔法少女が屋根伝いに空を駆けていた。
「大事に至らなければいいけど……」
先頭を走る巴(ともえ)マミは心配げな表情を浮かべた。
「ほんと水くさいよ、ほむらは……」
その後方、美樹(みき)さやかは唇をかみ締めて言った。
「まどかのことになると後先見えなくなるからな、アイツ」
そしてその隣、佐倉杏子(さくらきょうこ)はため息混じりにそう言った。
三人はキュゥべぇに暁美(あけみ)ほむらが単身で蒼井彰(あおいあきら)のところに向かったことを聞いて飛び出してきたのだ。
場所は良く知る場所。
そう時間はかからないはずだった。
「2人とも止まって!」
マミが突如さやかと杏子を制止した。
「どうし……!?」
杏子がマミの後ろから視線の先を覗き見ると、そこには一人の魔法少女が立っていた。
「やぁやぁ、皆さん。そんなに先急いでどうしたんだい?」
少女はまるで緊張感のない調子で言った。
対してマミたちはそんな少女を訝しげな目で見た。
少女の姿はちょっと変わっていた。
丈の短い、いわゆるミニスカ風の着物を纏い、髪の毛を束ねている。
その様は魔法少女というよりも、お祭りに行く子供のようだ。
「そんなに急いだって良いことないぜ。人生は楽しんでいかなきゃ」
「そんなにのんびりしてる暇はないんでね。通して貰うよ」
杏子は槍を少女に向けた。
少女はやれやれと首を振った。
「そんなに暁美ほむらのことが心配かい?佐倉杏子」
「なっ?なんでほむらにアタシの名前まで……」
少女は鼻で笑うと、マミとさやかをそれぞれ指差した。
「そっちが巴マミ。んでこっちが美樹さやか……だよな?」
三人は絶句した。
「くく……驚くなよ。世の中、人の知らないところで嫌と言うほど陰謀が渦巻いてるんだぜ?」
- Re: 第四章 54話 ( No.82 )
- 日時: 2012/05/18 10:03
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「あなた、何者なの?」
マミの問いに少女はワザとらしく考える素振りをした。
「そーだなぁ。まぁ……どちらかと言えば、お前らの敵だな」
まるで当たり前のことを言うかのように口調で、あっけらかんと言った。
「お前らが蒼井彰のところに行くとさ、色々面倒なんだよね。アイツには鹿目(かなめ)まどかを契約させる事に集中させてやりたいんだわ」
「あんたもまどかのこと狙ってんの!」
さやかも杏子同様に臨戦態勢に入った。
「あなた達が何を考えているかは聞かないであげる。でも今は本当に急いでいるの。だから道を開けてくれないかしら?」
マミの声色は普段どおりだった。
しかし表情は既に敵を見るものへと変わっていた。
「怖いねぇ。まぁでも、そう簡単にここを通すわけには行かないんだよな」
少女はため息をついた。
「なら仕方ないわね」
マミの言葉と共にさやかと杏子は少女に向かって飛び掛った。
「くらえぇー!!」
「一気に決めてやるよ!」
さやかは右から、杏子は左から一気に詰め寄った。
「いいねぇ。その殺気!!」
少女の背後から100本近い黒い手が現れ、杏子とさやかを襲った。
「ちっ!なんだこれ!」
杏子は纏わり付こうとする黒い手を回転しながら切り裂いた。
「ウジャウジャとうざったいわね!」
さやかも両手に持った剣で黒い手を捌いていく。
「2人とも下がって!」
マミは大量出現させたマスケット銃を少女に合わせて一斉発射させた。
- Re: 第四章 55話 ( No.83 )
- 日時: 2012/05/18 10:04
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「容赦ねーなぁ」
杏子は苦笑いでマミを見た。
マミは満面の笑顔で返した。
「悪い子にはちょっとお灸を据えないとね」
「やっぱりマミさん……怒らすと怖いわ」
あははーとさやかは力なく笑った。
「その思いっきりの良さ。オレは好きだぜ!」
瓦礫の中から巨大な黒い手が二本伸びてきた。
一本は杏子をはたき倒し、もう一本はさやか掴んだ。
「ちょっ!離しなさいよ、あんた!」
瓦礫を黒い手が押しのけ、その中から少女が姿を現した。
「あんた、あんたってなぁ。オレにも天音(あまね)リンって可愛らしい名前があるんだぜ?」
天音リンと名乗った少女は服についた埃を落としながら言った。
「あれだけの一斉発射を受けて無傷なの?」
マミは平然と立っているリンの姿に驚きを隠せなかった。
「くそっ。さやかを離しやがれ!」
杏子が再びリンに向かって行く。
しかし先ほどより本数の多くなった黒い手に阻まれて中々先に進めなかった。
「美樹さやか、佐倉杏子、巴マミ。みんな中々だけど、やっぱりオレは美樹さやかが一番タイプだな」
さやかに向かってニコニコと笑顔を浮かべるリン。
その姿を見てさやかは身震いした。
「な、何いってんのよ!」
顔を青くして慌てるさやかに、リンは大声で笑った。
「勘違いするなよ。あくまで……喰ったら誰が一番ウマイかって話だ」
「え?」
影が徐々に大きくなっていき、それは次第に三つ目を持つ巨大な球体となった。
球体の化け物は大きな口を開け、涎のような黒い液体を垂れ流した。
- Re: 第四章 56話 ( No.84 )
- 日時: 2012/05/18 10:05
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「喰うって……まさか」
全員が事態を把握した。
「さやかぁぁ!!」
杏子はなんとか周りの黒い手を蹴散らし、さやかのほうに飛んだ。
マミは杏子を追おうとしている黒い手を狙撃し、杏子に向かわせないように阻止した。
「佐倉さんは美樹さんを!!」
「わかってる!」
杏子はリンに向かって槍を向けた。
「操ってるお前を倒せばいいんだろ!!」
さらに数え切れないほどの黒い手がリンを囲むように出現した。
とても杏子一人で受けきれる数ではなかった。
「1人じゃどうしようも出来ないぜ?数の暴力ってのはさぁ!」
黒い手が杏子に飛び掛っていく。
その様を見て、杏子はニヤリと笑った。
「そうだな……1人じゃ無理かもしれないけど、5人ならやれる!」
リンは杏子の姿がなぜかぶれて見えた。
(まるで複数いるような……)
ぶれが次第に大きくなり、まるで杏子が五人居るように見えた。
いや、それは居るようではなく確かに五人いた。
「!!」
五人の杏子が一斉に槍をリンに向けた。
「出たわ!佐倉さんのロッソ・ファンタズマ!!」
マミがなぜか嬉しそうに杏子の変わりに叫んだ。
五人の杏子はリンを四方から囲み、嵐のような連激を繰り出した。
黒い手は次々と消滅し、そしてついにリンに攻撃を与える隙を作り出した。
『くらいやがれ!!』
五人の杏子の槍がリンを貫いた。
- Re: 第四章 57話 ( No.85 )
- 日時: 2012/05/18 10:05
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「ぐああああ!!」
リンは悲痛な叫びを上げ、そしてどういうわけか黒い霧と化して消えた。
『なっ!?』
黒い手はすべて消滅し、さやかも無事解放された。
「いやぁーまさかやられるとは思わなかったぜ」
三人は声のしたほうに一斉に身体を向けた。
隣のビルの貯水塔の上にリンが座っていた。
「てめぇ……どういうことだ!」
「どうもこうも今まであんた等が戦ってたのはオレの分身ってわけ」
自慢げにそう語ると大声で笑った。
「必死こいてる姿は見ものだったぜ」
「あんた人をバカにして!」
さやかは剣を構えリンに飛び掛ろうとした。
だがそれをマミが止めた。
「やめたほうがいいわ。周りを見て」
さやかはマミに言われ周りを見回した。
「ひぃっ!」
いつのまにさやかたちの周りは切れ長の目で覆われていた。
四方八方、上下左右、すべて。
「食べようと思ったら食べれる———そういうことなのよ」
「くくく。物分りがよくて良いぜ。まぁ……充分に時間は稼いだ。そろそろ解放してやるぜ」
さやかたちの後方に人が通れるくらいの穴が開いた。
「さっさと行ってやりなよ。まぁ、手遅れだと思うけどね」
三人はリンに警戒しつつ外へと出て行った。
三人が居なくなるとリンは穴をふさぎ、貯水塔から飛び降りた。
「趣味わりーぜ。覗き見とはよ」
ふと一点を見てリンはそういった。
- Re: 第四章 58話 ( No.86 )
- 日時: 2012/05/18 10:06
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
『そう言うな。私はどこにでも居て、どこにも居ない存在。そう———【概念】なのだ』
「概念ねぇ。概念って人に話しかけられるもんなのか?」
あきれた調子でリンが言うと、その何者かは小刻みに笑った。
「ところで目的は達成できたのか?」
『ああ。【女神】は我が手中に落ちた。あとは作戦通り遂行するのみだ』
「そうかい。そいつは良かった」
リンは両手を広げた。
すると黒い空間は霧のようになり、リンに吸い込まれていった。
『君はあの蒼井彰は成功すると思うかね?』
「……たぶん失敗するだろうな」
『なぜそう思う』
「誰かのためにどうこうしようとするヤツは、必ず最後で失敗するのさ」
『それは君もそうだろう?』
「……そうだな。オレもダメかもなぁ〜」
リンはその場に座り込んだ。
見滝原中学校の方向から魔女の気配がした。
戦いは最終局番だ———リンはそう思った。
- Re: 第四章 59話 ( No.87 )
- 日時: 2012/05/18 17:15
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「あああぁぁ!!」
暁美(あけみ)ほむらは今まで味わったことの無い痛みに思わず悲鳴をあげた。
「君のソウルジェムと肉体の関係を一部『無かったこと』にした。これで痛覚遮断は使えない」
蒼井彰(あおいあきら)はほむらの腕を掴むと視線の高さまで持ち上げた。
「あと1つ、嘘を言っていたよ。俺の魔法は触れたものだけじゃなくて範囲展開もできるんだ。だから今君がここで何かしようとしても無駄だよ」
彰は拳をほむらの腹部、傷口めがけて振り下ろした。
「———!!」
今度のは悲鳴にすらならなかった。
痛みの余りほむらの瞳からは涙が流れていた。
「これが普通の人間なら気絶しているんだろうね。でも魔法少女にとって肉体は意味をなさない。制御しているのはソウルジェムであって、脳ではない。痛みを感じても気絶することは出来ない」
そう言いながら彰は無抵抗なほむらに拳を振り下ろし続けた。
彰の目には確かに苦痛に歪み、苦しむほむらの姿が映っていた。
しかしそれはどこか遠くから見ているような、言うならば第三者の視点のように見えていた。
その理由を彰は自分自身でしっかり理解していた。
(俺は、こうやって彼女を嬲(なぶ)っている自分を認めたくないんだ)
その気持ちが無意識に、ほむらを傷つけているのは自分ではない———そう思い込ませていた。
(俺は何をやっているんだ?)
この期に及んでこのようなことを考えている自分がとことん情けなかった。
明奈のためにすべてを敵に回すと誓ったはずが、まだ内心ではいい人でありたいと願っているのだから。
こんなになぜ悩んでいるのか、踏ん切りがつけられずにいるのか。
その理由はわからなかった。
何が最後の一歩を踏み留めているのかまったくわからないのだ。
明奈のため。
そう考えているのに、なぜか明奈のことを思うのと同じくらい、鹿目(かなめ)まどかという少女のことを考えてしまう。
まどかのソウルジェムが欲しいから、まどかのことを考えているのか。
それとも———。
- Re: 第四章 60話 ( No.88 )
- 日時: 2012/05/18 17:16
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「……めて」
虫のさえずりのような儚い声が、彰を現実に戻した。
「お願い……もうやめて……」
ほむらの口からそう漏れていた。
傷だらけになった身体と、涙と苦痛で顔を歪めるその姿は、今までのクールなほむらとは遠くかけ離れていた。
当然だろう。
魔法少女とは言え、元を糺(ただ)せばただの中学生なのだから。
普通の中学生がこのような拷問を受けて平気で居られるはずがない。
むしろここまで耐えたほむらの精神力の強さは尊敬に値する。
彰自身が同じことをやられて耐えられるかと聞かれれば、無理だと答えるだろう。
「最初に言っただろう?君は生贄だと……もっと相手に絶望を与えてくれないと困る」
「うぅ……」
ほむらの身体から完全に力が抜けた。
それは諦めのためか、絶望のためか。
「ほむらちゃん!!」
「ま、まどか!?」
屋上の出入り口に息を切らしたまどかの姿があった。
「ようやくこれで役者がそろったわけだね」
まどかはひどく傷ついたほむらの姿を見て言葉を失っていた。
「こんなのひどすぎるよ……」
「言っただろ?君を契約させるためなら何でもやるって。それともまだ物足りないかい?」
彰は短剣を出現させた。
「ねぇ……お願い。やめて……」
まどかはこれから彰が何をするのか悟ったようだった。
「お願いだからやめてぇ!!」
彰はまどかの制止も気に留めず、短剣をほむらの左ふともも目掛けて振り下ろした。