二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 第四章 61話 ( No.89 )
- 日時: 2012/05/18 17:16
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「あぁぁああぁー!!」
「い……いやぁぁ!!」
まどかは顔を両手でふさぎ、その場に膝をついた。
「次は右……」
「やめて!!契約でも何でもするから……」
まどかは嗚咽混じりにそう言った。
「ダメよ……まどかぁ」
まどかは顔を上げ、首を横に振った。
「いいの。これ以上ほむらちゃんの傷つく姿を見たくないから」
「まどか……」
ほむらの抜けていた身体に力が戻っていくのを彰は感じた。
そこには先ほどまで泣きながら痛みに耐えていた少女ではなく、戦う意思を宿した魔法少女がいた。
「大切なものを失う辛さは痛いほど知ってる。だからそれを失いたくないって足掻(あが)きたくなる気持ちもわかる。私もずっとそうしてきたから!」
「何を言ってる……」
「逃げないで!今のあなたは昔の私と同じよ。自分を偽って……そして孤立していった私と同じ。このままじゃあなたは一人ぼっちになってしまうわ!」
ほむらの言葉を聞いていると頭がクラクラとしてきた。
心臓が高鳴るのを感じた。
「お、俺は別に1人になったって構わない。明奈さえ戻ってくれば……」
ほむらは首を振った。
「それじゃダメなのよ。例え目的を果たせたとしても、それまで失ってきたものを思い返して後悔するわ。自分が自分じゃなくなってしまうの」
「そんなことわかって……」
何をわかっているというのだろうか?
一歩も踏み出せずに迷っている自分が、ほむらから視線を背けている自分が何をわかっているというのか。
自分のしていることにすら目を背け、明奈のためだと言って正当化しようとしているずるい自分が———。
(え?)
彰は今、自分自身で思ったことに恐怖を感じた。
- Re: 第四章 62話 ( No.90 )
- 日時: 2012/05/18 17:17
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
(俺は明奈のためにここまでやってきたんじゃなかったのか?)
彰は気付いてしまったのだ。
『明奈のため』
それは目的ではなく、ただの理由であったことに。
彰が今までしてきたことを正当化するための都合のいい理由であったことに。
(俺が本当にしたかったこと———それは)
ゴゴゴゴゴ……。
彰たちの周りで地響きが鳴った。
「ま、まさか!」
彰はほむらを降ろし、左手に埋め込まれたソウルジェムを見た。
ソウルジェムは魔女の反応を感じ取っていた。
「あき……!!」
さらに大きな地響きが起こり、三人を包み込んだ。
そして———。
「ぐっ!地面が!!」
三人の居る屋上の地面が崩れ落ちた。
先ほどまでの彰とほむらの戦闘による衝撃で地面に亀裂が入っていたのだ。
「きゃあぁあ!!」
「まど……きゃあ!」
魔法少女でないまどかはもちろんのこと、怪我で身体の動かないほむらも何の抵抗すらできずに崩壊に飲み込まれた。
「くそ!」
彰はその崩壊に自ら飛び込んでいった。
- Re: 第四章 63話 ( No.91 )
- 日時: 2012/05/21 13:42
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
鹿目(かなめ)まどかは身体が揺さぶられるのを感じ、目を覚ました。
「大丈夫?」
「あきら……さん?」
そこには兜をはずし、安堵の表情を浮かべた蒼井彰(あおいあきら)の姿があった。
そしてまどかの横には未だ気絶している暁美(あけみ)ほむらもいた。
「ほむらちゃん!」
「大丈夫だよ。気絶しているだけさ」
彰は体勢を正して座り直した。
まどかは地面が崩れる瞬間を思い出した。
(あの時、彰さんが私とほむらちゃんを抱えて助けてくれた……)
彰のその行為を思うと、なんだか嬉しくなった。
もう分かり合えないかもしれないと思っていたからだ。
「彰さん、ありがとう」
「ん……ああ。礼なんていいよ。元々俺のせいでこうなったんだ」
彰は周囲を見回した。
今、彰たちは瓦礫の中に偶然できた空間にいるようだった。
空間はぎりぎり人が立てるくらいの高さはあった。
「さっきのはきっと明奈(あきな)が魔女化した際に起きた衝撃波だと思う。ここを出たら魔女空間の中だろうな」
「明奈ちゃんが……?」
「明奈は魔女と魔法少女の間のような存在になっていた。ソウルジェムから魔法エネルギーを摂取している時は魔法少女として自我を保てるけど、そのバランスが魔女寄りになると魔女化してしまうんだ。まぁそれでもどうやら俺のことだけは認識しているみたいだけど」
「それで彰さんはソウルジェムを……」
彰はため息混じりに力なく笑った。
「明奈のため……か。そう思っていたのは間違いだったのかもしれない」
彰からはもう敵意は感じられなかった。
先ほどまでまどかを契約させようと狂気じみていた彰はもうそこには居なかった。
「思い出したんだ。明奈が明奈であった時、最後に言われたことを」
「最後の言葉?」
「うん。でも俺は魔女化してしまった明奈を受け止められず、どうにかしようと躍起(やっき)になってしまった。そのせいでその言葉すら俺の中から無くなってしまっていた」
彰は首にかけていた鳥のガラス細工を手に取った。
それはかつてまどかと一緒に選んだクリスマスプレゼントのキーホルダーをネックレス状にしたものだった。
- Re: 第四章 64話 ( No.92 )
- 日時: 2012/05/21 13:42
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「俺は現実を受け止められず、自分の殻にこもっていたんだな。そんな自分を正当化したくて……何かしていないと明奈に申し訳が立たないと思い込んで、俺は明奈を理由にして戦ってた。羽ばたけない鳥だったのは俺だったんだ」
彰はほむらの前に移動した。
「さてと……終わりにしなくちゃな」
「彰さん、どうするんですか?」
「約束したんだ。だからその約束を果たしに行く。ほむらちゃんが目覚めたら、2人でこの空間から逃げるんだ」
彰はほむらに触れると、傷を『無かったこと』にした。
「記憶までは無かったことに出来ないんだ。さっきのことがほむらちゃんのトラウマにならなければいいけど……。本当に彼女には取り返しの無いことをしてしまったな」
彰はそういうと立ち上がった。
「彰さん!行っちゃダメだよ……。だって彰さん、ソウルジェムが……」
まどかは彰がほむらの傷を治すとき、彰のソウルジェムを見た。
そしてそれがかなり濁っていることも。
「それ以上魔法を使ったら、彰さんまで魔女化しちゃうよ」
「そうだね。もう魔法は使えないな。ここから出るくらいの力は使えるから大丈夫だけどね」
彰は自虐的な笑みを浮かべた。
対照的にまどかは瞳に涙を浮かべて顔を横に振った。
「だからダメだよ!それじゃあ彰さん、やられに行くようなものだよ!」
「大丈夫だって。ただ単に妹に会いに行くだけなんだから」
「全然大丈夫に見えないよ。彰さん、嘘言ってる!」
「しょーがないなぁ」
彰はまどかの頭に手を置いた。
「じゃあ約束するよ。生きて戻って、またまどかちゃんに会いにいく」
「本当……ですか?」
彰は頷くと鳥のガラス細工をまどかの手渡した。
「俺が取りに行くまで大事に持ってて。こいつは本当に大事なものだからさ。絶対に取りに行くよ」
「彰さん……」
「そんな悲しそうな顔しないで。俺は太陽みたいに笑っているまどかちゃんが好きだよ」
彰は微笑むとまどかから離れた。
そして脱出に無難そうな位置に見当をつけると魔法でそこに出口を作った。
「たぶんもうじきほむらちゃんが目覚める。そうしたら魔女結界が崩壊する前に脱出するんだよ」
「彰さん!私……待ってます!だから絶対に取りに来てくださいね!」
彰はまどかの言葉にただ微笑みを返した。
そして彰は魔女結界の奥、明奈のいる所目指して駆けて行った。
- Re: 第四章 65話 ( No.93 )
- 日時: 2012/05/21 13:44
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
それは蒼井明奈(あおいあきな)が一番最初の魔女化を迎えた時のことだった。
「ううう!あああぁぁ!!」
「明奈!いったい何がどうなって……」
明奈のソウルジェムは真っ黒に濁り割れ目が入っていた。
そしてその割れ目から瘴気が流れ出ていた。
「お兄ちゃん……」
明奈は薄っすらと目を開けて、彰(あきら)を見た。
「私……もうダメみたい」
「何言ってんだよ!そんなこと言うな!」
何が起きているか理解できない彰にもこのまま行けば明奈が死を迎えるであろうことは予想できた。
「お兄ちゃんはさ……まだ私のこと一番に思ってくれてる?」
「当たり前だろ!」
明奈は力なく笑った。
「私のこと二番目で良いって話覚えてる?」
「ああ……覚えてるよ」
「ああは言ったけど、ほんとのところお兄ちゃんは私のことを二番目にするなんて無理だろうなって思ってた。それぐらいおにいちゃんが私を思ってくれてるのを知ってたから」
照れてるような、嬉しいようなそんな感情を含めた表情をした。
「だからね、私考えたの。お兄ちゃん、私のお願い聞いてくれる?」
「ああ、何でも聞くよ」
「みんなのこと……幸せにしてあげて欲しいな」
「みんな?」
「そーだよ。今もきっとたくさんの人が苦しんでる。私はそういう人たちの力になりたくて魔法少女になったから……。どんな形でもいい。目の届く範囲でいい。私の変わりにみんなを幸せにして欲しいな」
以前、自分達のように不幸になる人が増えないようにしたいと語っていた。
それも魔法少女になった理由のひとつだと。
「でもそれじゃあ明奈が幸せになれないじゃないか……」
「そんなことないよ。お兄ちゃんが私の約束を果たしてくれれば、とても嬉しいことで……私の幸せにもなるから」
明奈は今まで明奈のことしか見てこなかった彰に他の誰かにも目を向けて欲しいと言っているのだ。
恐らくそうすればいずれはもっと大切な人も見つけられる———そう願って。
(お前はどこまで優しいんだよ……)
彰は涙を流して明奈を抱きしめた。
「約束するから……死ぬな!」
自分に明奈の願いが果たせるかわからない。
それでもそれが明奈の幸せに繋がるなら頑張ってみようと思えた。
- Re: 第四章 66話 ( No.94 )
- 日時: 2012/05/21 13:45
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
(でもその後、俺は自分が契約することで明奈を救えるという希望に囚われ、大事な約束を頭の隅に追いやってしまった)
彰は大きな扉の前に立ち、明奈とした約束を頭の中で思い浮かべた。
(約束を果たしにいこう)
彰は扉を開け、中に足を踏み入れた。
『おおおおおお……』
低い雄たけびのようなものが鳴り響いていた。
空の世界だった今までと違い、この部屋はあたり一面ガラス張りだった。
ガラスの向こうには明奈の記憶が映像で流れており、それはどれも彰が知るものだった。
「こんな形じゃなければいい思い出話ができたのに……」
彰は部屋の中央で羽ばたく鳥と人を合わさったような姿をした巨大な魔女を見た。
魔女は彰の姿を捉えると、翼を羽ばたかせて雄たけびをあげた。
(俺を認識出てない?そこまで魔女化が進行しているのか……)
ソウルジェムを与え、魔女化を抑えてきた。
だがそれも段々と抑えられる時間も短くなっていた。
魔女は彰目掛けて急降下してきた。
そして鉤爪を彰に対して振り下ろした。
だが彰はそれを事前に予測し、すでに魔女の背後に回りこんでいた。
「俺たち、家族になってちょうど10年くらいだよな。お互い初対面だったのになんだか初めて会った気がしなかったって、前に2人で話したことがあったよな」
彰は魔女の攻撃を避けながら届くかもわからない言葉を語りかけた。
「運命って言うのかな?俺たちの出会いも、魔法少女になることも、魔女になってしまうことも……」
「神様がいて、俺たちの運命の結末をこんな風にしたとしても、俺は別に神様を恨んだりはしない。むしろ感謝してるよ……お前と一緒に過ごす時間をくれたことにさ」
「なぁ……お前はどう思ってる?神様を恨むか?それとも良かったって思ってるか?」
- Re: 第四章 67話 ( No.95 )
- 日時: 2012/05/21 13:46
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
彰は大剣を出現させた。
「運命とか愛とか……そういう話が好きだったよな?他愛のない話をたくさんしたな……」
「もっとたくさん話をしたかった。笑って、泣いて……たまに喧嘩して。学校行ったり、いろんなところ行ったり。当たり前のことをもっと明奈としたかったよ」
『おぉぉぉおぉ!!』
魔女が凄まじい雄たけびをあげた。
彰は剣を構え魔女に向かってとんだ。
魔女の顔の前まで飛んで魔女の顔を見た瞬間、彰は言葉を失った。
「お前、泣いてるのか……?」
ただ悪意を振りまくだけの存在だと、ゴンべぇは言っていた。
魔女にそれ以上はないと。
明奈は特殊な環境に置かれた魔女だからか。
それとも魔女にも感情が存在するのか。
それはわからない。
でも確かにこの魔女は泣いていた。
この思わぬことに彰は動揺し、鉤爪が自分に向かって振り下ろされていることに気がつかなかった。
「ぐあっ!!」
彰は攻撃をもろに食らい、地面に叩きつけられた。
なんとか立ち上がり体勢を立て直そうとした瞬間、身体に感じたことの無い衝撃が走った。
「あ……」
剣のように鋭い巨大な魔女の羽根が、彰の上半身を貫通していた。
痛覚は消しているし、ソウルジェムが破壊されていないため死ぬことは無い。
だが今の彰は傷を治せるほどの魔力が残っていなかった。
(詰みか……。だからってここじゃ終われないよな)
彰は口元に笑みを浮かべ、大剣を構え直した。
魔女が再び鉤爪を彰に向けて降下してきた。
彰も魔女に向かって飛んだ。
- Re: 第四章 68話 ( No.96 )
- 日時: 2012/05/21 13:46
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
彰に向かってくる鉤爪の猛攻を何とかすり抜ける。
「明奈、ごめんな。俺はやっぱりダメな兄貴だったよ。結局お前を二番目に考えるなんて出来なかった。でも思ったんだ……」
降下する勢いは急には止められない。
彰は大剣を魔女の胸を目掛けて突き出した。
魔女が降下する勢いも合わさり、彰の大剣は意図も簡単に魔女の胸を貫いた。
「別に一番大切なものが1人じゃなきゃいけないなんて決まりはないだろう?って……はは、ちょっとずるいか」
魔女は雄たけびをあげながら暴れまわった。
その動きに耐える力の無い彰は振り落とされてしまった。
「先にあの世で待っててくれな。あっちに行ったら、また兄妹仲良くやろう……」
魔女の身体は粒子となって徐々に消えていった。
その様子を見て彰は安堵の表情を浮かべた。
「不幸な人を増やさないために……か。明奈、お前の意思を受け継ぐってなると、魔女退治しなくちゃいけなくなるじゃないか。まったく……酷なことやらせやがって———」
彰は笑った。涙を流しながら。
視界がぼやけ始める。
ソウルジェムと肉体の関係が希薄になっているのか。
それとも魔女化が始まったのか。
(くそ……こんなところで倒れるわけには行かないのに。明菜とまどかちゃんとの約束を———)
彰の意識は途絶えた。
魔女が倒されたことで空間が崩壊し始めた。
崩壊は容赦なくすべてを飲み込んだ。
映し出された明奈の記憶も、眠る彰の身体も———すべて。
- Re: 第四章 69話 ( No.97 )
- 日時: 2012/05/23 09:56
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
『———ちゃん』
「ん……」
蒼井彰(あおいあきら)は重たい瞼をゆっくりと開いた。
「お兄ちゃん、やっと起きた〜」
「明奈(あきな)?ここは……?」
彰は公園のベンチに座っていた。
明奈とよく来た馴染みの場所だった。
「どうしたの?まだ寝ぼけてるの〜?」
明奈は隣で頬を膨らませてふてくされていた。
(確かにさっきまで魔女になった明奈と戦ってて……。あれ?)
ソウルジェムが無かった。
もちろん変身することも出来なかった。
「嫌な夢でも見た?」
明奈が心配そうな表情で彰の顔を覗き見た。
「いや……そうだな。嫌なこともあったけど、良いこともあったかな」
「どんな夢だったの?」
「夢の中の明奈はとても病弱なんだ。そんな明奈がある日突然魔法少女になるんだよ」
明奈はクスクスと笑った。
「何それ。お兄ちゃん、いつからファンタジックな世界に浸るようになったの?」
彰も「そんなんじゃないよ」と笑って言った。
「でも魔法少女には色々危ないこともあってね。魔女と戦ったり、時には魔法少女同士で争ったり……。でも一番怖かったのは、魔法少女が魔女になるって事実だった」
「もしかして私も……?」
「うん……。明奈が魔女になってしまって……どうにか救いたいって思った俺も魔法少女の力を得るんだ。でもそのせいで大事なものを失っていった」
彰は語りながらそのことを思い出し、命を奪ってしまった人たちのことを思った。
夢のはずなのにそれはとても鮮明で、彰の心を揺らがした。
- Re: 第四章 70話 ( No.98 )
- 日時: 2012/05/23 09:57
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「とても辛いね……。希望はあったの?」
「約束が俺の希望になったんだ」
「約束?」
「そう。大事な人との約束———」
明奈の表情にフッと影がさした。
「その約束は果たせたの?」
「いや……それが果たせなかったんだ。明奈、お前と……」
「まどかさんとの……約束だよね?」
明奈が彰の言葉を遮って言った。
彰は驚きの表情で明奈を見た。
今の明奈には無邪気さはなく、真剣でどこか儚いものが感じられた。
「なんで……わかったんだ?」
彰はそう言いながらもなんとなく感じ取っていた。
これが夢なんだと。
「もう理解したよね。これはお兄ちゃんの見ている夢なんだよ」
明奈はベンチから立ち上がり、彰の前に立った。
「ねぇ、お兄ちゃんはさ……もし何でも願いが叶うとしたら何をお願いする?」
突然明奈はそんなことを口走った。
だが彰は動揺することなく、ゆっくりと口を開いた。
「明奈は俺に皆を救って欲しいってお願いしたよな?俺なりにそのことを考えてみたんだ」
明奈は笑顔で、しかし何を語ることもなく真剣な眼差しで彰を見つめた。
「魔女を倒して人を救うのは必要なことだと思う。でも魔女はもともとは魔法少女なんだ。魔女になってしまった魔法少女たちにもそうなってしまった原因となる『痛み』があったと思うんだ」