二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 第四章 71話 ( No.99 )
- 日時: 2012/05/23 10:09
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
ソウルジェムは魂の入れ物だ。
魂はその人の内面的なもので、精神的な要素が強いのだと思う。
精神は感情に大きく左右される。
だとすれば感情の動きによってソウルジェムの濁り方も変わってくるのではないか。
もちろん魔法を使えば魂の力を使うのだから消費した分濁ってしまうのもあるのだろう。
だが幸せであると感じればその濁り方は緩やかで、逆に不幸であると感じれば濁り方も早くなる。
魔女になってしまった魔法少女たちはきっと何かしらの『痛み』に苛まされ、それに耐えられなくなっていったのだと彰は考えた。
「だから俺は出来る限り魔法少女たちの『痛み』を知って、その『痛み』を共有することでその子達の救いになれればいいと思ったんだ。魔法少女たちを救い、魔女化を防げば不幸な人も減る。明奈の約束を果たすことにならないかな?」
「でもそれはきっと……とっても大変なことだよ?その『痛み』にお兄ちゃんが押し潰されてしまうかもしれない」
負の感情をその身に宿すと言うことは自身の魔女化を進行させることにもなってしまう。
強靭な精神力を持っていなければやり遂げることは不可能だろう。
「大丈夫さ。俺はすでにお前を背負ってるんだから」
彰にとって明奈はもっとも大切なものだ。
同時に明奈という存在は彰の最大の『痛み』でもあった。
明奈を失うという『痛み』を受け入れられなかった彰は、一度は落ちるとこまで落ちた。
しかしそれでも様々な人たちの言葉や気持ちが彰を立ち直らせ、『痛み』を受け入れることに成功した。
その『痛み』は今では彰の力となっていた。
「だから俺の願いは、魔法少女たちの『痛み』を受け入れて救いたい……かな」
彰がそう願うと、明奈は優しく微笑んだ。
それはまるで女神を見ているかのようだった。
- Re: 第四章 72話 ( No.100 )
- 日時: 2012/05/23 10:10
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「それじゃあこんなところで夢を見てる場合じゃないね」
「そうだな……まどかちゃんとの約束も守らなくちゃな」
明奈は彰の手をとった。
明奈の身体が淡い光に包まれていく。
「ちゃんと一番大切な人を見つけられたんだね。えへへ、ちょっとまどかさんに嫉妬しちゃうな」
「ばーか。言っただろ?一番大切なものが1つである必要はないって。明奈も俺の一番だよ」
明奈は呆れた顔をして大げさに肩を落として見せた。
「欲張りだなぁー。浮気者は痛い目みるぞ!」
彰は神様に感謝した。
こうやって明奈と話をさせてくれた事に。
「そうだ、明奈……。お前は神様を恨んでるのか?それとも感謝してるのか?」
「感謝してる。お兄ちゃんとめぐり合わせてくれたんだもん」
「そうか……俺もだよ。本当に幸せだった。最後に明奈と話せてよかった」
彰の瞳から涙がこぼれた。
「泣かないでよ。我慢してたのに……」
明奈も涙を流した。
このとき明奈の身体は光の粒子となって既に半分以上が無くなっていた。
「私もね、お兄ちゃんとお話できてよかった。でもね、これでお別れじゃないんだよ?」
「え?」
「私という存在は無くなっても、ずっとお兄ちゃんと一緒にいるから。お話できなくても、触れることが出来なくても……」
「明奈……」
「私がお兄ちゃんの翼になってあげる。だからお兄ちゃんも頑張って羽ばたいてね」
明奈の姿が消えた。
彰の手には明奈の手のぬくもりと、明奈にあげた鳥のガラス細工が置かれていた。
「俺、頑張るよ。お前の分まで……」
突如、白い世界が彰を包み込んだ。
彰の意識は再び途絶えた。
- Re: 第四章 エピローグ① ( No.101 )
- 日時: 2012/05/23 10:12
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
天音(あまね)リンは消えていく魔女結界を遠くから眺めていた。
「やっぱ失敗したか……」
そう言いつつもリンの表情に落胆は見られず、むしろ納得という感じだった。
「おしかったんすけどねぇ。契約するっていうところまでは言わせたんすけど……」
リンの背後からゴンべぇが突然姿を現した。
「あいつは結局のところ『人』だったんだよ。だから捨てられないものもある」
崩壊した結界から少し離れたところに、まどかたちの姿があった。
鹿目(かなめ)まどかは暁美(あけみ)ほむらに抱かれて泣いているようで、後から到着した巴(ともえ)マミ、美樹(みき)さやか、佐倉杏子(さくらきょうこ)の三人はいまいち自体が把握できないという感じだった。
「鹿目まどか……か。ただ単に力があるだけじゃないってことなんだろうな。人を変える何かを持っているのか……」
「リンちゃんはこれからどうするんすか?」
ゴンべぇがそう問うと、リンは鼻で笑った。
「当然、こんなとこで諦めたりしないぜ。次の作戦で行くさ」
リンはそう言って立ち上がった。
「そういやさ、蒼井明奈(あおいあきな)は何を願ったんだ?」
鹿目まどかを契約させるという利害の一致で協力していた蒼井彰(あおいあきら)のことは大体知っていた。
だが明奈に関しては興味が無かったため、ほとんど何も知らなかった。
「明奈ちゃんの願いは『彰くんのお願いを何でも叶えること』っすよ」
「はぁ?」
あまりにもあいまいでピンとこない願いにリンは思わず間の抜けた声を出してしまった。
- Re: 第四章 エピローグ② ( No.102 )
- 日時: 2012/05/23 10:12
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「明奈ちゃんは彰くんにもしものことがあった時、彰くんの力になれるようにして欲しいと望んだんすよ」
「それでその願いか……。何というか……すごい兄妹だな」
彰は明奈を。
明奈は彰を。
お互いが魂を賭けてお互いの未来を願っていたのだ。
「まぁ……だとしたら一枚上手だったのは蒼井明奈のほうかもな」
「どういうことっすか?」
「蒼井彰は自分を犠牲にして蒼井明奈の幸せを望んだ。でも蒼井明奈は自分を犠牲にする蒼井彰に希望を与え、そして自身も納得の行く形で最後を遂げた」
明奈はゴールから迷子の彰を人知れず導いていたのだ。
彰は明奈を失い、明奈も彰と二度と会うことは叶わなくなった。
他人から見ればバッドエンドなのだろうが、当人たちはきっとそうは思っていない。
お互いが選んだ道を進み、その結果未来に向かう道を作れたのだとすれば、それはハッピーエンドなのだろう。
「目の前に居なくても、思い出があればそばにいるのと変わらない……だったよな、縁(ゆかり)」
リンはかつての親友の言葉を思い出し、同時にその親友との記憶も思い出した。
「それはそれでいいかもな。ハッピーエンドかどうかを決めるのは他人じゃない」
リンは笑みを浮かべてその場を後にした。
まどかたちやリンにとってはこの出来事は旅の途中で起きたこと。
しかし蒼井彰にとっては始まりで、蒼井明奈にとっては終わりの出来事だったのだ。
彼らにどのような結末をもたらしたにせよ、この物語は終わる。
終わりがあれば始まりもある。
次の物語にも出会いがあり、終わりがあるのかもしれない。
せめて次の物語が始まるまで、彼女らにしばしの休息と幸せを———。