二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: 【ドラゴンクエストⅨ】スライムと元天使の冒険! ( No.13 )
日時: 2012/06/05 21:57
名前: 怡執 ◆i0yxwOSY66 (ID: OewqiabW)

「無理だ……」
巨大な土砂の山を前に、がくり、と膝をつきうなだれるニード。
くそっ、と悪態をつく事も忘れない。

「うまくすりゃ親父の鼻を明かしてやって村のヒーローになれたのに!!」

その言葉に、ナインは眉をしかめる、が、すぐにそれをやめ微笑む。


村のヒーローになれたら、リッカもきっと振り向いてくれるのではないか——


言葉の裏に隠された、ニードの淡い想いを知ったからであった。

「誰かいるのかー?」
土砂の向こうから、声が聞こえてきた。

「ウォルロ村の者だー」
とニードが対応し、会話が続けられていく。

どうやら、土砂を片付ける為にセントシュタイン城下町から兵士が派遣されたらしい。
ルイーダ、という女性がウォルロ村に行ったきり戻ってきていない、
気の強い女性の事だから、もしかしたら“キサゴナ遺跡”に向かったかもしれない、と
兵士は言っていた。

キサゴナ遺跡——ナインは、頭のどこかにある筈のその知識を探した。
確か、大昔はセントシュタイン城下町とウォルロ村を繋ぐものだった。
魔物がすみつき旅人が通らなくなった為、王国の管理も行き届かなくなり、
今では崩壊の危機がある為、通行禁止になった。

一言で片づけるのであれば“危険”。



その後、ウォルロ村に戻った二人は村長にこってり絞られ、
更にニードはリッカに殴られもした。

村長宅からの帰り道。
「ルイーダさん、だよね」
「キサゴナ遺跡に向かったかもしれない、って人?」
うん、とリッカは話し出す。
「あの人、お父さんの知り合いなの。
最後に会ったのは、わたしのお父さんが亡くなる3年前かしら…………あ、」
ナインは軽く頷き、「それで?」と続きを促した。リッカは「ありがとう」と言い、

「もし、魔物に襲われていたらどうしよう、って思って……ねぇ、ナイン。
キサゴナ遺跡にルイーダさんがいないか、探——」
ううん、と首を横に振る。
「やっぱり、なんでもない……」


リッカの宿屋の2階の一室、ナインにあてがわれた部屋。
天使界から落ち地上で目覚めてからは宿屋に泊る事にした。
いくらリッカの家に祖父がいるとはいえ、リッカにもナインにもその気がないとはいえ、
血の繋がりが無い男女が一つ屋根の下……というのはどうだろうか、と生真面目にナインは考えたのであった。

ナインはある程度、所持金があった。今はそれで宿代を払っている。
もっとも、リッカはお金なんていらない、と言っていたが。

柔らかい布団がしかれているベッドに倒れこみ、決意する。

翼と光輪が無くても、ウォルロ村の守護天使であることにかわりはない。
守護天使として、住民の願いは叶えなくては。


——明日は、キサゴナ遺跡に行こう。


そして、ナインの意識はあっと言う間に夢の中に引きこまれていった。