二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: 【ドラゴンクエストⅨ】スライムと元天使の冒険! ( No.16 )
日時: 2012/06/03 12:12
名前: 怡執 ◆i0yxwOSY66 (ID: 7z3IIjJJ)

キサゴナ遺跡、最深部と思われる場所——
複雑な構造のこの遺跡にしては珍しく拓けたそこの中央に、瓦礫があった。
その下に、青い髪の女性が倒れていた。

リッカにそれとなく聞いておいた、“ルイーダ”という女性の特徴からして、
おそらく彼女がルイーダだろう。

「ルイーダさん、大丈夫ですか」

声をかけ、駆け寄る。 返事は無いが、顔色からして心配は無さそうだ。
瓦礫をどかそうとすると遺跡の奥から、ずしん、ずしん、という足音が聞こえる。
「ぴき!?」

頭上のスラリンの驚きの声に反応して、足音が聞こえる方角を向く。
「……あなた、誰?」
ルイーダの問いにナインが答えるよりも前に、
彼女は、あれは、と奥からやってくる魔獣に目を向ける。
「ブルドーガ……」
ルイーダは魔獣をそう呼び、「まずいわ」と呟いた。
不思議そうな表情をしているナインを見て、ルイーダは
「ここを住処とする魔物たちを従える魔獣よ」と説明する。

「怒ってるみたいね……ねぇ、少しお願いがあるんだけど」
「何ですか?」
「ブルドーガは縄張り意識が高いから、立ち入っただけで怒り、
もう手がつけられない程暴れる。 
だから、あなたにブルドーガを気絶させてほしいの」

ナインは剣を鞘から引き抜き、構える。
「気絶させるだけで、いいんですよね?」
ルイーダが巻き添えをくらわないように彼女から十分離れ、問う。
ええ、と頷くルイーダを見て、突進してくるブルドーガを見据える。

魔獣がナインの間合いに入る。
ナインは剣を横に振ろうとする———

が。

「ぴきぃ」
スラリンがナインの前に立ちはだかった。

ブルドーガの動きがとまる。

ナインの何かを問おうとした声が聞こえたが、スラリンは聞こえない事にした。
『ねぇブルドーガさん、少し話を聞いて欲しいんだ』

『話など、聞くものか! そこを退け、あの不埒な奴らを成敗してやる!!』
それとも、とブルドーガはスラリンに目を向ける。
『お前も我の縄張りを荒らすのか』
『違う! 違うよ、ぼくたちはあの女の人を助けにきただけだよ!!』
『助け……?』
『そうだよ、君の縄張りを荒らしたりなんてしない』
『そうか……それは失礼をした。主の名は何という』
『ぼく? ぼくはスラリン』


『…………!!』


ブルドーガは目を見開く。
が、それも一瞬の事で『どうかしたの?』というスラリンの問いに、
低い声で『なんでもない』とだけ言った。















ルイーダ、ナイン、スラリンの二人と一匹がウォルロ村に帰った、その後。
キサゴナ遺跡——

ぱたぱたと飛ぶドラキーが言う。
『珍しいね、ボスが縄張りに立ち入るのを許すなんて』
それに答えるのは、
鋼鉄製の翼をギシギシと軋ませながら飛ぶガチャコッコ。
『ああ、地上の魔物——確か、スライムだっけ——がいたからじゃないか?』
『人間と一緒にいたんでしょ?』
変わり者だねぇ、とドラキーは笑った。

『そういえば、さっき、ボスが独り言で言っていたのを聞いたな』
『何?』

『“まさか[あれ]がここにいるとは”って』

『[あれ]? なにそれ』
『さあな。 
ただ、確かなのは、魔物でさえも縄張りに立ち入るのを許さないボスが珍しく許したって事』
『へぇー……あのスライム、意外と高貴な魔物かも? 
それとも実は強い魔物だけど黒い組織に薬を飲まされて気づいたらスライムに、みたいな展開とか』
『厨二かお前は』