二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 【ドラゴンクエストⅨ】スライムと元天使の冒険! ( No.21 )
- 日時: 2012/06/22 07:31
- 名前: 野花 ◆i0yxwOSY66 (ID: v.OxdoyZ)
- 参照: テ ス ト 終 わ っ た !!
「リッカ」
自分を呼ぶ声に、リッカはその主を確かめようと振り返る。
「ナイン……あ、えっとこれはその」
ごしごし、と目をこする。
何か、言い訳を考えなくては。心配をかけてはいけない。
[大丈夫か]と問われるだろうから、万遍の笑みで[大丈夫]と答えなくては。
だが、ナインの言葉は彼女の予想に反した。
「……僕の故郷では一人の師匠に何人もの弟子がついて、大切なものを守る勉強とか、訓練とか、いろいろな事を学ぶ風習があった」
言わずもがな、天使界の慣わし——1師多弟制——である。
「故郷の子供たちは一定の年齢になると、ある程度の教育を受ける。
そして、師匠となる者に選ばれる。そうして弟子となる」
それが何だと言うのだろう。
不思議に思ったものの、今まで語られることのなかったナインの過去に興味を覚えリッカは無言で話の続きを促した。
「だけど僕は——自分で言うのもおかしいけれど——剣の腕が、周りよりも格段に上だった。
師となる者にも勝ってしまうほどに」
「すごい」
「そうやって、純粋に思ってくれる幼馴染が一人いたよ。
でも、その子以外は僕を異端視していた。
もちろん、そんな目で見られるのだからとても辛かった。
だけど僕はその悩みを幼馴染には相談しなかった。打ち明けなかった。
心配をかける訳にはいかないと、“大丈夫”って笑ってたんだ」
「……」
リッカは何も言わなかった。いや、何も言えなかった。
さっきまで自分が思っていたことと似ている。
「それでも、ある日、“お前はここに住まう者ではない、魔の者だ”と謂れ無い事を言われて、暴力を振るわれた。
その時に、それを幼馴染に見られちゃったんだ。
僕はついうっかり、口を滑らせて悩みを打ちあけた。
——それを聞いて、幼馴染は何をしたと思う?」
わからない、とリッカは首を振った。
「ひっぱたかれたんだ」
ナインは笑いながら、そう言った。
きっと、彼の脳内には懐かしい記憶が再生されているのだろう。
「幼馴染に言われたんだ。
“どうしてあたしに何も言ってくれなかったの”
“あたしのナインへの信頼は一方通行なの”って。
……ねぇ、リッカ。
悲しい事や辛い事を打ち明けるのって凄い勇気が必要で、きっと心苦しい事だと思う。
だけど、誰かに自分の気持ちを告げたら、喜びは2倍、悲しみは2分の1になる。
誰かに自分の気持ちを理解してもらうのはとても難しい事だし、実際にそれを迷惑だと思う人もいるかもしれない。
でもね、君の周りにそう思う人なんている?
……いないよね。
むしろ、信頼されている証拠だ、って言って喜ぶんじゃないかな」
特にニードとか、とナインは笑って。
手を差し出した。
「ある人に聞いたんだけどね、リベルトさんはこの村のどこかに宿王のトロフィーを隠したらしいんだ。
探しにいこう?」
リッカは、俯かせていた顔をあげる。
頬には涙の痕があったが、そこにあったのは紛れもない笑顔で。
「うんっ!」
<作者>
久しぶりの更新。
そして天使界の習わしとか主人公の過去とか捏造しほうだい。
天使界の習わしってゲームだと一人の師匠につき一人の弟子がつくんだけど、
たった一人の弟子ってかっこよくね?……という作者のどーでもいい願望です。