二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 【イナイレ】ずっと、隣にいますから【第二話更新中】 ( No.15 )
- 日時: 2012/06/01 15:34
- 名前: 棋理 ◆U9Gr/x.8rg (ID: SGJxjeZv)
- 参照: 第二章執筆BGM:星井美希(CV長谷川明子)「マリオネットの心」
02
赤い夕日が教室を包むようにして広がっている。その色に染まる中で、一人の少女が窓際に立っていた。
つややかな黒髪はあかね色に染まり、顔はうつむきがちに伏せられている。
その視線の先にいるのは、少年だった。ボールを追いかけ、時折仲間の部員と話を交えながら楽しそうにコートを駆けるその様を見て、少女はふいに口元に笑みを見せた。
——“良かった”
その口の端が緩められ、言葉の形に口元が動く。声に出されることのなかった言葉は、吐息ととなった宙に浮かんだ。
今、悠々とコートを駆けるその姿は、自分が見つめていたときの少年と全く変わらない。サッカーに対して一途で、同じくらい、自分に対しても一途に接してくれた。
——“大好きだった”
怖いくらい、好きだった。
どうすればこの気持ちを抑えきれるのか不安になって、彼のことを思うだけで口元が緩んじゃうような。
けど、彼はどうだったろうか?
彼の中で、自分とサッカーと妹さんは、常に同等の存在だった。それで良かった。彼にとってサッカーと妹はずっと共にいる。そこに他人の自分が入ったのに、同じ位置にいさせてくれるという事実が、ただただ嬉しかった。
なのに。
——“もう、違うのね”
“あの”後、彼の中には妹さんしか居なかった。
自分が居ないのは問題じゃない。問題は、彼の中からサッカーが消えたことだ。
——『私だって修の力になりたいよ。修の近くにいたい。修を、支えたいのに……』
その考えは、今も変わっていない。誰よりも近くで、誰よりも強く支えたい。
けれど、
「もう、その必要はないわね。修」
視線の先で、仲間達に肩を叩かれながら談笑している思い人がいる。その顔は本当に楽しそうで、あの頃に戻ったみたいな錯覚を覚える。
今自分が彼の中に入ってしまったら、きっと何もかも台無しにしてしまう。
“誰よりも強く支えたい”とは思うけれど、“誰よりも強く支えられる”確証はない。いや、きっと無理だろう。
願望と事実は違うから。
——“今の私は、お荷物でしかない”
先の帝国と雷門との戦いで、彼を見た瞬間から感じたことだ。もう、大丈夫。自分が居なくても、大丈夫。
だから、
「……嬉しいよ、私」
つぶやいたと同時に、つと顔を上げた。何かを見るわけでもない。
ただ、
何も映していない瞳の端から、小さな雫が一つだけこぼれた。
「嘘つき。……上を向いても涙がこぼれないって、嘘つき」