二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: 【イナイレ】ずっと、隣にいますから【短編リク受付中】 ( No.26 )
日時: 2012/06/02 16:40
名前: 棋理 ◆U9Gr/x.8rg (ID: SGJxjeZv)
参照: 第二話執筆BGM:星井美希(CV長谷川明子)「マリオネットの心」

03

「ふぅ……」

 誰も居ない自室で、修也はベッドに仰向けに倒れ込んだ。
 もうじきに決勝戦が始まる。気持ちが高鳴ると同時に、ふと嫌な予感がよぎるときがある。
 帝国の戦い方はとっくに知っている。40年間無敗を誇り、「帝国に敗れた学校は破壊される」という噂さえあるなど、他校から恐れられているところだ。
 そんなチームと決勝で戦う。その意味は、彼らの戦い方を知れば自ずと分かる。つまり、

「どんな手を使ってでも、勝ちに来る」

 帝国学園のトップに君臨する男、影山はそういう男だ。
 
「…………」

 そんな様々な問題のうえ、修也にはまだ抱える問題があった。
 それは、

「……愛香が、帝国のマネージャー……」

 放課後の練習の時、マネージャーの木野から聞いたことだ。



『転校生が帝国のマネージャー!?』

 練習時、休憩で木野の元に集まった彼らに木野が告げた。
 手には昨日見ていたDVDレコーダーを持っている。
 とにかくこれを見て、と言われセットすると、帝国戦で映した帝国陣地を映した。

『——っ!?』

 思わず持っていた水筒を落としそうになった。
 ——何故!?
 そこには、たしかに修也の元恋人であり、転校生の少女が映っていた。
 帝国の制服を着ているが、その姿は何度見ても間違いない。横の音無がアップにして画像を鮮明化にすると、少女の表情がより分かる。
 少女は両手を胸の前で合わせ、まるで祈るように顔を前に向けていた。その視線の先には、帝国の選手達が居る。時折苦しそうに目を細めたり、慈愛に満ちた顔で選手を見つめていた。

『——くっ』

 無自覚にうめきが漏れる。
 ——そうやって見つめられていたのは、自分だったはず。
 
『ご、豪炎寺君、大丈夫?』
『っ——。あ、あぁ、すまない』

 労ってくれた木野に感謝しつつ、肩の力を抜く。
 握られた拳を開くと、手のひらに爪の後がくっきりと残っていた。



「…………」

 ベッドに放り出した携帯を拾う。開くと同時に、楽しそうに笑う3人の姿が映し出された。優勝カップを重そうに掲げ、無邪気に笑う妹。それを隣で微笑みながら見守る少女と自分だ。
 まぶしすぎるその光景に、ぱたんと携帯を閉じた。
 が、その直後。

「————」
「っ!?」

 着信を告げるメロディが鳴った。慌てて携帯を開く。
 送信者を見て、思わず目を見開いた。



『愛香』



 その名前だけで心が躍るが、今はそれを抑えてメールボックスを開いた。
 そしてその文を読んだ瞬間、また心が込み上がってきた。

『久しぶり。元気そうで良かった。
 サッカー、また始めたのね。嬉しい。
 今度、決勝戦があるらしいわね。頑張って。応援してる』

 以前交わしていたメールより素っ気ないが、紛れもなく彼女からのメール。

「——愛香」
  
 携帯を閉じ、額に当てる。吐息混じりに呼んだ名前は、自分が思っている以上に愛しさが込められていた。