二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: 【イナイレ】ずっと、隣にいますから【参照200突破記念SS】 ( No.51 )
日時: 2012/06/16 19:49
名前: 棋理 ◆U9Gr/x.8rg (ID: SGJxjeZv)

02

「……はぁ」

 誰も居なくなった教室で、愛香は溜息をついた。先ほど側にあった温もりも、今はもう失せている。ただ、自分の中ではまだ熱が収まらない。
 ——は、恥ずかしい。
 本当に久しぶりだった。なにぶん、未だ鼓動が早い。
 触れられたい、抱きしめてもらいたい、口づけてもらいたいと感じても、いざそれが実際に行われるとなるとなんと恥ずかしい。おまけにここが学校だと先ほど気づいたばかりだ。

「な、なんて破廉恥な……!」

 かっと頬に熱が集まる。愛香は自覚していないが、大変初な性格をしている。
 以前も修也と付き合っていた頃は、それはそれは恋愛初心者の代名詞とでも言うような反応を示した。それこそ、手を繋げば指先が震え、頬に手を添えられれば思わず顔をそらしたい衝動に駆られる。
 
「今回は大丈夫だったわよね……!」

 ちゃんとキスをするときは目を閉じたし、逃げなかった。抱きしめられても驚かなかった。一年前はこうはいかなかったのに。やはり人間成長するんだわ。
 ……や、別に他の人と付き合うとかしてないわよ!?
 むしろ他の人と付き合うなんて考えられない。最初の人は修也だし、最後の人も修也であって欲しい。そう考えるほど彼に執着しているのかと思う。

「……ぁ」

 ふと校庭に視線を移すと、先ほど近くにいた少年が仲間達と談笑している。自然と顔に熱が集まってきているのを感じた。思わず窓から視線をそらす。
 それにしても、と思考を切り替えた。決勝戦を見に行くことを彼に約束した。彼には話していないが、前々から試合を見に行こうとは考えていた。それも、帝国側の人間として。元帝国サッカー部のマネージャーである身としては、雷門と帝国どちらがなじみの深いと言えば帝国と言える。
 なによりも、自分は見届けなくてはいけない。

「……復讐によってサッカーに執着する者と、純粋な気持ちでサッカーに執着する者たちの戦いを、ね」

 影山のやり方は間違っている、と考えている。だが、その間違っているやり方の中チームのマネージャーを務めていたのは事実だ。その考えに囚われている気持ちはないが、一度足を踏み入れたのならば何らかの形で終止符を打たないと行けない、と考えている。

「それが、決勝だったらいいのだけど」

 もし決勝で雷門が勝ったら、彼らのサッカーは間違っていると彼ら自身に教え込むことが出来る。反対に、雷門が負けてしまったら……? 
 
「苦しむわよね、きっと」

 帝国でキャプテンを務めている顔なじみのことを思い出す。彼は先の雷門戦で、気持ちが揺らいでいる。表には出さないが、きっと内面では苦しんでいるはずだ。直接打ち明けられては居ない。が、マネージャーという立ち位置なら分かること。
 帝国が勝ったのなら、影山は復讐をなしえたということになる。そして、その復讐に彼らは利用された。それを知ったら、彼はどうなるのだろう……?

「————」

 きゅっと胸が締め付けられた気がした。この痛みは、彼に対する同情か。それとも謝罪か。
 もう一度校庭を見やる。そこには、先ほどと同じように生き生きとした少年達がボールを蹴り合っていた。
 この光景を、彼らに取り戻させることは出来ないのだろうか。
 フットボール・フロンティア決勝戦。それは、今週に控えている。