二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: 【イナイレ】ずっと、隣にいますから【コメ待ってます】 ( No.6 )
日時: 2012/05/29 20:00
名前: 棋理 ◆U9Gr/x.8rg (ID: SGJxjeZv)

03

「んっと……。あら?」

 河川敷沿いの道を、地図を広げながら歩く少女が居る。
 白いワンピースに黒いレギンス。水色のパンプスを履いた少女は、風に遊ばれている長い黒髪を鬱陶しく払った。
 一見質素に見える服装だが、所々にあしらわれたレースやビーズなど、分かるものが見ればそれなりに豪奢な物だ。
 高貴さを漂わせる白いつば広の帽子の下に隠れた顔は、大人びた美しさを持っていた。

「うーん……。やっぱり夏未の言うとおり、車で送ってもらえば良かったかしら」

 とは思うものの、やはり少しは自分の足で動かねばならない。
 いくら体が弱いからと言って、たった数キロの道のりでさえ車に頼るようではさすがに自分でもどうかと思う。それだから余計に体が弱いのだ。

「けれど……。初めて来る町なんだから、さすがに頼った方が良かったわね」

 その辺りの区別が出来ない自分の低脳さに哀れみを贈る。
 まったく、本当にまったく。
 ここに来て自分が方向音痴だと知った少女は、ふと河川敷で集まる少年達に目を向けた。同い年ぐらいの少年達が、サッカーボールを片手になにやら一つの画面を見ている。

「サッカー部、かしら……」

 雷門中の近くの河川敷にいると言うことは、彼らは雷門中の生徒かもしれない。

「ちょっと聞いてみよう」

 好奇心にも押され、少女は足を進めた。
 


「すみません」
「はい?」

 急にかけられた声に、秋は振り向いた。
 そんな秋につられ、部員の視線がその声の主に集まる。
 ……うわぁ。
 同姓である自分が思うほど、綺麗な人だ。風に靡いている黒髪は触れてみたいと思うほど艶がある。おまけにスタイルが良い。そして顔も整っている。
 絶対に美人と言われる人だ。

「あの……」
「あ、はい」

 思わず見とれてしまった。秋は居住まいをただすと、その少女に顔を向けた。

「雷門中の場所を聞きたいんですけど。良いですか?」
「雷門中なら、俺たちが通ってるところだぜ?」

 後ろから聞こえた守の声に、秋は頷く。すると、目の前の少女はそうでしたか、と顔をほころばせた。
 ……うわ、可愛い。
 つられてこちらも笑みになる。

「良ければ教えていただけませんか?」

 その言葉に、秋は快く承諾した。



「……なるほど。あ、すみません。練習の邪魔しちゃって」
「い、いえ。気にしないでください」
「ありがとうございます。おかげで助かりました」

 深々とお辞儀をすると、少女は元来た道を戻っていった。
 方向音痴の人の典型例、地図をあらゆる角度にくるくると回してしまうというだけで、だいたいの方向は覚えているらしかった。

「あ、それじゃあビデオの続き、見ようか」

 少女が去った方向を確認すると、秋はビデオを再生した。ちょうど修也がファイアトルネードを決めた直後が映される。
 ……あれ?
 ふと、違和感を感じた。
 ……気のせいかな。
 知っている誰かが映った気がする。。

「ごめん、もう一回戻して良い?」
「先輩?」

 隣で春奈が訝しげな顔をする。他の部員も同じ顔だ。
 秋はそれを尻目にもう一度画面を戻した。
 そして、

「あっ!」
 
 小さな声を上げた。
 秋が見つめる一点は、帝国学園が乗ってきたキャラバンだ。
 そのキャラバンの近くに、帝国学園の制服に身を包んだ、美しい少女が映っていた。

「さっきの人……?」