二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 【イナイレ】ずっと、隣にいますから【第2話更新中】 ( No.62 )
- 日時: 2012/08/03 19:22
- 名前: 棋理 ◆U9Gr/x.8rg (ID: SGJxjeZv)
- 参照: http://www.kaki-kaki.com/bbs_test/view.html?586212
04
灯りのついていない暗い部屋。月も今はその形を潜め、代わりにどんよりとした雲が空を占めている。
その風景を窓の内側から見ている少年は、窓の下に椅子を置いて座っていた。ただ、何をすることもなく空を見上げる。
思いをはせているのは、たった一人の少女だった。家同士がもともと親しい関係と言うことで、それなりに女子の中では仲が良かったと思う。
そんな彼女が、突然転校すると言った。それも、今度決勝で戦う雷門中に。
最初はなんの冗談かと思った。彼女の家柄的に見れば帝国の方が良いというのに、何故に雷門なんかに。
転校直前の日、彼女は自分に言った。
『決勝戦、見に行くわ。——帝国の人間として、ちゃんと見届けるために』
彼女の目は澄んでいて、何かの覚悟をしているような瞳だった。
「……決勝、か」
ゴーグルの中で瞳が揺らいだ。
自分は帝国学園サッカー部のキャプテンという立場だ。他人の前で泣き言を言うほど弱くはないし、そうありたいとはこれっぽっちも思っていない。
——例外を除いては。
『————』
ベッドの上に放置していた携帯が音を立てる。面倒と思いながら拾い上げると、その例外からの着信だったので思わず頬が緩んだ。
「……もしもし」
『もしもし。私だけど』
「知っている。ディスプレイに表示されるのだから、分かるに決まっているだろう」
『……それだけ減らず口たたけるなら、心配は要らなかったかな』
「あぁ、不要だ」
『まったく……。転校する直前、泣きそうな顔で“本当に行くのか?”って聞いてきたのは、何処の誰だったっけ』
「さぁ、誰だろうな」
『ほんっと、可愛くない』
「お互い様だろ」
普通の子供より精神が少し大人びている少年に、一番近しい存在だった彼女。いつのまにかこんなにも口が達者になっていた。それに負けじと応戦してしまうのは精神が子供なのだろうか。考えたくはない。
「それで? 何の用だ」
『幼なじみにその言い方はひどいと思わないの?』
「切るぞ」
『冗談だって。……そうだな。あえて言うのならば、神のお告げかな』
「……正気か」
『もちろん。どんよりとしている雲をふと見上げたら、突然あなたの顔が映ったの。——泣きそうな顔のあなたが、ね』
含みのある声で言われて、思わず押し黙る。
もともと、彼女には二面性があった。だからといって二重人格というわけではないし、小悪魔というわけではない。ただ、大人っぽいところに妙な子供らしさを秘めている。そんな感じ。
……さて、今はどっちだ。
楽しそうな口ぶりからすれば子供っぽいが、その声に含みがあるのならば大人っぽい。
少年は彼女にも伝わるような大きさで、溜息をついた。
「お前はどうなんだ。あいつとよりを戻せたか」
『なッ……。よ、よりっていうか、その……』
「その様子だと、キスも出来たみたいだな」
『どんな様子なのよ私! あなたのそれ、もう読心術としか思えないよ』
再びごにょごにょ言い出した彼女に、少年はふっと笑った。
……良かった。帝国以前のあいつに戻れたようだ。
帝国に来てから、彼女は時折辛い顔をするようになった。それも、自分たちのサッカーを見て。総帥からの支持を受ければなにやら痛そうな顔をして、けれど何も言わない。言いたいことがあれば言えば良いのに。けれど、いつも笑顔で『お疲れ様』と言う。
……よく言ってお人好しだな。
「……すまない。気を遣わせたようだな」
『……ねぇ。私ね、こっちに来てから分かったの。あなたたちは間違ってるって』
「…………」
『けど、それに私は関わった。だから私は、今度の決勝でちゃんと決着をつける。あなたのサッカーを、見届ける』
だから、
『——私に、あなたたちのサッカーを見せて?』
