二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- からくり卍ばーすと ( No.3 )
- 日時: 2012/06/02 10:31
- 名前: 月森和葉 (ID: CwXyXkbt)
続きです。
岬の神社は崖の上に立つ、この街唯一の神社だった。
波が岩を打ち、冷たい潮風が頬を撫でる。いつの間にか空は重く垂れ込め、厚い雲が覆い被さっていた。
蓮は腕を組み、荒れ狂う海を見つめて立っていた。
眼は開き、海を見ていたが、心は別の場所にあった。
幼い頃の記憶。
楽しげに日の光溢れる公園で遊ぶ自分と姉。
途端、笑い声が悲鳴に変わった。
顔を切られたときの、熱く、冷たい感触。
真っ白いシャツは緋色に染まり、黄色い髪も所々赤く、染まる。
「……っは!」
我に返って両手を見た。
いつの間にか手には大量の汗が滲んでいる。
「……。」
拳を握りしめ、顔を埋める。
「くそ……!」
あの時、大切なたった一人の身内を見殺しにしたのは自分だ。そんな不甲斐ない自分を矯正するために組織に入ったのに、自分は……。
不意に顔を上げると、いささか派手でちょっと古風な服装の女性が立っていた。
基本的に赤なのに、髪だけが輝くような金、いや、黄色と言ってもいい。
黙ってその女性が彼の横を通り過ぎようとしたとき、嗅いだことのある、ただとても苦い思い出の匂いが鼻を突いた。
火薬だ。
「—失礼。少々お話を聞かせて頂けませんか?」
女性は赤い目だけを少しだけ動かして言った。
「…何故?」
「貴方から、とても危険な物の匂いがしたのでね」
「そう…」
女は蓮からゆっくりと離れると、羽織の下からとても物騒な得物を取り出した。
慣れた手付きで安全装置を外し、サイレンサーのついた銃口を蓮に向けた。
「蓮って……あなた?」
何故犯罪者が自分の名前を知っているのか甚だ疑問だが、素直に答えた。
「そうだ」
すると女は口元に笑みを浮かべた。
「魅玖琉様が、あなたをあたしの相手にしたの。でも…あなたじゃ相手にはならなそうね」
「何!?」
蓮は愛刀に手を掛け、柄を少し持ち上げた。いつでも抜けるようにだ。
「だって…あなた、弱そうなのだもの」
女は蓮と同じくらいの歳で、黄色い髪を白い布で纏め、紅い花の髪飾りを差している。
「お前……名は?」
女は少し考えてから言った。
「…稟。」
「お前の目的は何だ」
大きく息を吸い込み、蓮は極めて冷静を装って言った。
「あたしの…目的?あたしの目的は…、破壊。」
愛刀を抜かりなく構える。
「壊すの。何もかも。それでも物足りない。もっと壊したいの。あたしの可愛い弟を奪ったこの世界を、あたしは許さないの。」
どくん、と心臓が唸った。
「ぜんぶ、ぜんぶ、真っ赤にそめるの。あたし…昔はこの街に住んでいたのよ。この街はあたしを排除してしまったけれど…。あたし、これでもこの街を愛していたの。弟もね。でも、弟はもうどこにいるか分からないわ。そう…もう、この世には居ないかも知れない」
稟と名乗った女は紅い花の髪飾りを抜くと、それを息で吹いた。
途端に辺りは紅い花弁で埋め尽くされ、眼を覆った次の瞬間、稟はもうどこにも居なかった。
蓮も、一般人の気配が近づいてきたので慌てて刀を鞘に戻した。
組織の存在は国家には申請されているが、公にはされていないので、一般人の目に触れるのはあまり良い行為ではない。
だから稟もこの場を去ったのだ。
蓮も組織の事務所に戻った。
