二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 【イナイレ】短編集【リク受付中】神丙様リク更新 ( No.17 )
- 日時: 2012/06/07 19:16
- 名前: 棋理 ◆U9Gr/x.8rg (ID: SGJxjeZv)
- 参照: 執筆BGM:CHERRYBLOSSOM「CYCLE」
『狼と羊』
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
校庭から部活動をしている生徒の声がする。
放課後。日直の仕事をしている豪炎寺君と、委員長の仕事をしている私の間に会話はない。かれこれ30分ほどこんな調子。
「……おい」
「っ——は、はい」
なんて思ってたら、いきなり声をかけられてた。思わずびくりと震える。
しまった。拒絶と思われちゃうかな。
ふりむくと、案の定。少し困ったような顔をした豪炎寺君と目が合った。
「な、なんですか?」
「さっきから同じところばかり拭いてるぞ」
「へ?」
手元をみると、たしかに。クリーナーをつけたぞうきんが通ったところ。すなわち、窓ガラスの一部だけが周りと比べものにならないくらいぴかぴかしていた。
……シュールだな。
「何か悩みでもあるのか」
「あ、ちがっ……。えと……」
強く否定すると、ぎろりと睨まれた。……ような気がした。思わずふいっと目をそらす。
豪炎寺君は苦手だ。まとっているオーラというか、視線とか周りの男子とは少し違くて。少なくとも、私の周りに今まで居なかったタイプ。それに人見知りと臆病で気弱な性格も手伝い、なかなか近づけない。
うぅ、委員長なのに……。
「……悪い。変なことを聞いたな」
「い、いえ……。こちらこそ、すみません」
再び気まずい沈黙が流れる。
どうしよう……。せっかく豪炎寺君から話しかけてくれたのに、台無しにしちゃった。
少し心苦しい。
「……はぁ」
思わず溜息が出てしまう。本当、自分の性格がイヤになる。ちゃんとしなくちゃいけないのに。
気持ちが段々とネガティブになっていく中で、豪炎寺君が椅子から立ち上がる音が聞こえた。
あ、チャンスかな?
「お、終わったんですか?」
「あぁ、思ったより日誌が片付かなくてな」
「そうですか……。お疲れ様で——」
「美空は、俺のこと嫌いか?」
「……へ?」
お疲れ様ですと言おうとしたら、先に豪炎寺君に言葉をかけられた。
思わず目を丸くしてしまう。それと同時に、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
けど、訂正しなくてはいけない。
「あの、嫌いじゃないです」
「……は?」
「……どちらかと言えば、苦手というか」
そう、決して豪炎寺君のことが嫌いなわけではない。あくまで“苦手”なんだ。
今まで周りにいなかったタイプだし、あまり話したこともないし。けれど、それで嫌いにはなれない。豪炎寺君がサッカーを頑張っている姿は格好いいなぁと思うし、そんな姿を好ましく思う。
だから、嫌いではない。
それを伝えると、豪炎寺くんはあからさまにほっとした様子を見せた。
「そうか。それは良かった」
「すみません。イヤな態度を取ってしまって」
「俺こそ、すまないな」
そう言って時計をちらりと見ると鞄を掴んだ。どうやら部活に行くらしい。私は文化部だから、特に急がなくても良いか。
「じゃあな、美空」
「あ、はい。豪炎寺君」
手を振って見送ると、豪炎寺君はふと何かを思い出したように振り返った。
「俺は、美空のことすきだぞ」
「……へ?」
聞き返すまもなく、豪炎寺君はじゃった行ってしまった。
一人残された私は、右手を自分の頬に持って行く。
「……熱っ」
言い逃げなんてずるい。
けれど、豪炎寺君の言葉で苦手じゃなくなってしまう自分は、もっとずるいと思った。
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豪炎寺君の短編でした^^
主人公の設定は、クラス委員長で修也が苦手な女の子というものです。
やっぱり、修也は言い逃げかなぁ、なんてw