二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 【イナイレ】短編集【リク受付中】豪炎寺短編更新 ( No.18 )
- 日時: 2012/06/08 22:03
- 名前: 棋理 ◆U9Gr/x.8rg (ID: SGJxjeZv)
- 参照: 執筆BGM:葵・喜美(CV斉藤千和)「通し道歌(ダンスバージョン)」
——“カシャッ”
誰も居ない校庭の隅っこに、カメラの乾いたシャッター音が木霊す。その音の発生源は、もちろん私のカメラだ。今時珍しい、フィルムカメラ。現像しなければ、どんな写真を撮ったのか分からない。でも、そこが良い。
先ほどの被写体は花だ。誰にも気づかれることなく、ひっそりと咲いている小さな花。名前は知らない。おそらく、道に咲いてても「雑草」としか思われない花だ。
「お前は、私と一緒だね」
ふと手を伸ばし、花びらを撫でる。なるべくそっと。
きっと、私もこの花と同じだ。他人にとって私はそこにあるのが自然で、誰の目もくれず、名前を気にしたことのない存在。
いや、私だけじゃない。他人からすれば、人間なんてみんなそういう存在だ。
「おまえは、私に気づいてもらって良かったね」
おまえが人間だったら、私にとってお前は名を知りたい存在なんだよ。
腰を上げ、次なる被写体を探す。
と、何かが草を踏む音が聞こえた。それと同時に、ころころとサッカーボールが足下に転がってきた。思わず拾い上げる。
振り返ると、このボールの持ち主と思わしき人物が居た。
「豪炎寺君」
「美空? こんなところで何をしてるんだ」
「写真部の活動中」
はい、とボールを私ながら答えると、豪炎寺君の目が私の首にぶら下がっているカメラをみた。
「フィルムか? 今時珍しいな」
「そ。母さんの形見」
さりげなく呟いたけど、豪炎寺君は気まずそうに顔をゆがめた。
けれど、それを済まないとは思わないし、思いたくはない。私としてはただ事実を述べただけに過ぎないし、ましてやその事実に向こうが勝手に同情してくるだけだ。
同情なんていらない。
「何を撮ってたんだ?」
話題を変えるためか、それとも純粋に疑問したのか。どちらにせよ、練習戻らなくて良いのかなと思いながら答える。
「この小さい花」
「……名前は?」
「知らない」
「……知らない?」
「うん、知らない。けど、調べないよ」
その言葉に、は? と怪訝そうな顔をされた。ま、それもそうか。
私は苦笑気味に言う。
「私にはテーマがあってさ。『人』なんだ」
「人?」
「何気なく歩いている道ばたに咲く花なんて、名前も気にもとめない存在。けどさ、それって人間も一緒だと思うんだ」
一度言葉を句切り、豪炎寺君をちらりと見る。すると、続きを促すように頷いた。
さらに言葉を続ける。
「他人にとって、人の人生なんてそんなもん。道ばたに咲いている小さな花という程度の存在。だから、もし他の人に知って欲しいのなら、その人にとっての高嶺の存在になるしかないんだよ」
以上、と少しおどけた様子で締めくくる。対する豪炎寺君は感心したように微笑んでいた。
普段彼の笑みなんてみないから、不覚にもどきっとしてしまった。
「じゃあ、お前は高嶺の花だな」
「はぁ?」
何を言うんだ。
「俺はお前を知りたいと思う。だから、高嶺の花だな。対するお前にとって俺は、道ばたの雑草か?」
言われたことを数秒間替え、理解する。頬に熱が集まるのを感じた。
ふいっと顔をそらす。
「詩人だね」
「お前もな」
そう言うと、豪炎寺君はサッカーボールを手に持って戻っていった。
「高嶺の花か、雑草か……」
豪炎寺君の後ろ姿をみながら呟く。
彼は……。
『高嶺の花』
————————————————————————————————
ちょっと不思議ちゃんを目指してみましたが、意外とそうでもない……?
詩人系というか、ちょっと遠回しに告白とか憧れるんですよねぇ。
ま、現実でやったら「はぁ? 何言ってんの?」的な目で見られますが←
ちなみにBGMは、「境界線上のホライゾン」というアニメのキャラに、葵・喜美ちゃんというのがいるのですが……。
その子のキャッチコピー(?)が高嶺の花なんですよねぇ。
そんなこんなで、ちょっと聞きながらw