二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: 【イナイレ】短編集【リク受付中】風丸短編更新 ( No.21 )
日時: 2012/06/10 17:49
名前: 棋理 ◆U9Gr/x.8rg (ID: SGJxjeZv)
参照: リボーンに再ハマり中

『放課後は紅茶より甘いスウィートタイム』

「んで? 練習試合が近いから、今から練習すると」
『あ、あぁ……。ほんとごめん!!』
「別に怒ってないわよ……。仕方ないじゃない」
「…………」

 電話の向こうで、悩ましげな溜息が聞こえた。しまった、言い方がきつかったか。
 怒っていないのは本当だ。ただ、ちょっと残念なだけで。本来ドライな性格が手伝ってか、私が言うと少しきつい言い方になってしまう。こっちが溜息をつきたくなる。

「とにかく、私は怒ってないから。ちゃんと練習に集中しなさいよ、風丸君」
『……分かった。あとでちゃんと埋め合わせするから!』
「別に良いわよ」

 なるべく柔らかくなるように声色を変え、電話を切る。
 ……はぁ。
 現在、雷門中の校門前。携帯越しに話していた彼は、今校庭で走り込みをしている。自分が居る場所を告げなくて良かったと思う。告げたらきっと、彼は此処まで来て平謝りするだろうから。それだけは避けたい。

「……せめて、着替えてきたら良かったかな」

 雷門中の生徒が居る中で、只一人。別の中学の制服を着た女生徒が校門前にいる。もちろん私。見慣れない制服を着ているのを、生徒達は好奇の目で見つめている。
 私は風丸君とは別の中学に通っていて、陸上部に所属している。彼とは一年の時に、陸上大会で出会ってからのつきあいだ。
 一目惚れだった。出会ったそのときに連絡先を聞き、それから次の大会の時に告白した。正直、部活中になにやってんだということは置いといて。
 それなのに、彼はサッカー部に入ったという。
 私と彼を引き合わせたのは陸上だったのに。

「……はぁ」

 今度こそ溜息をついて、私は商店街の中にある小さなカフェに入った。
 ゆったりとした音楽が流れる中で、逆立っていた気持ちが落ち着くのを感じる。

 ——放課後、デートしよっか。

 そう誘ったのは彼からだった。久しぶりの彼からのお誘いに、私は二つ返事でOKした。せっかくだから制服デートでも良くない? なんて言った私に、風丸君は照れ笑いをしながらも承諾してくれた。相変わらず初な反応をする。

「お待たせしました、ピーチティーでございます」

 商店街の中だと侮っていたが、意外にも洒落た飲み物があった。思わずそれを頼み、綺麗に磨かれた窓ガラスから商店街を見つめる。
 ……この道を、いつも通っているのかな。
 道を視線でたどる。そうすると、彼がそこを走っている錯覚に陥った。

「……ふふっ」

 風丸君と付き合ってから、彼のことをいつも考えている。
 最近友達に言われたけれど、角が丸くなったらしい。それは風丸君のおかげだと思っている。
 何よりも、嫌いだった自分の性格を、彼は全て受け止めてくれる。そんな彼の優しさが好きだった。
 そうやってぼーっとしていたからだろうか。ふいに頭上に降りかかった言葉に、私は我に返った。

「何笑ってるんだよ、奏」
「……風丸君」

 驚いた。まさか本人が現れるとは。
 幻術かと思って目をぱちくりさせると、風丸君は苦笑して私の向かい側に座った。

「驚いた?」
「当たり前でしょ。練習は?」
「サボった」
「はぁ!?」
「あー、怒んなよ。むしろ、俺が抜けた方がチームのためだったしな」

 はぁ? と再びあんぐり口を開けると、風丸君は苦笑した。

「なんか、力入んなくてさ。それをマネージャーに指摘されて、訳を話したら鬼の行商で言われてな? 『奏さんが可愛そうでしょ!!』って」
「あぁ……」

 一度だけ誘われて練習を見に行ったとき、ショートカットで優しそうなマネージャーさんが居た。確か名前は……木野さん、だったかな。
 あのときはとても可愛らしい人だと思ったんだけど……そうか、怒ったのか。

「だから、来てくれたの?」
「いや、違う」
「……あのさ、話が見えないんだけど」
「だから、俺は来たかったから来たの」

 ……つまり、この人は練習よりこっちに来たかったのか。
 
「……ふぅん。そっか。うんうん」
「おい、何一人で納得してるんだよ?」
「良いの。こっちの話。それじゃ、遅れたお詫びに一杯奢れ」
「わーったよ。一杯だけな」

 そんなぶっきらぼうに答える彼に、可笑しくて笑う私。
 今日の放課後は、どんな紅茶よりも甘くて、胸焼けしそうなくらいだった。

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甘が難しいorz

もっとイチャこらさせたかった……。
ちなみに、本当は「ピーチティー」のところを「抹茶ラテ」にしようかと思ったのですが、題名が紅茶なので、少し洒落た紅茶とは……。
と考えた結果、ピーチティーになりました。どうでもいいですな、これ。

次こそはもっと甘くさせたいな^^