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『俺の姉は酔わなければ可愛い（かもしれない）』

「修〜、おつまみまだぁ?」

　リビングからふにゃけた声がキッチンにまで届く。姉さんの声だ。素手によいが回っているのか、ろれつが妖しい。
　稲妻総合病院で女医として働いている姉さん。忙しくて家に帰らず、病院の宿直室で寝泊まりしている。夕香の主治医みたいなものしているために、姉さん自身がそれを望んでいるのかもしれないが。
　そんな姉さんが久しぶりに帰ってきたというのに、本人は溜に溜めた洗濯物を全て俺に押しつけた。そして当の本人は真っ先に酒を飲んでいるというのだから、本当に女なのか、あの人。

「姉さん。そろそろ飲むのもやめ……に、しろ……」
「んにゃ?」

酔い冷ましの水とピーナッツ炒めをリビングに持って行くと、俺はあり得ない光景を見た。

「なんだその格好!?」

　Yシャツ一枚の姉がビールを片手にソファに横になっている。何が悲しくて姉のスプラッタを見なくちゃならないんだ。発育の良い体つきがYシャツ一枚で……って、なんてことを考えている、俺。

「姉さん、頼むからそんな格好をしないでくれ。目のやり場に困る」
「やだなぁ修は。このスケベ」

　どっちがだ。
　姉さんは、どちらかと言えば美人という分類だ。そして、容姿も良い。そんな人が白衣姿でメガネをかけていたらどうなるか。間違いなく犯罪者が数名出る。

「大丈夫よ。病院ではこんな格好してないから」

　むしろしてたら大問題だ。
　姉さんは俺が持ってきたピーナッツ炒めに手を伸ばすと、手づかみで食べた。それに、と続ける。

「修は妹萌えだから大丈夫でしょ」
「違う。そういう問題じゃない」

　誰が妹萌えだ。

「えっ、違うの?　てっきりそうだと……」
「まぁ、夕香と姉さんどちらが可愛いかと聞かれたら、迷わず夕香と答えるが」
「ひっど。あれか!?　俺の姉は可愛くないってか!?」
「むしろ俺の妹が可愛くないわけがないだな」
「やっぱり妹萌えなんじゃん!!」
「だから違う。妹が好きなんじゃない。夕香が好きなだけだ」

　むーっとふくれる姉さん。正直、2ピー歳の姉がそんなことをやっても全然可愛くない。
　酒を飲むペースが速くなったので、俺はやれやれと周りに散乱したビールの空き缶を片付けていく。
　そして、ふと言い忘れたことがあったのを思いだし、姉さんの顔を見ずに言う。

「あと、俺は別に姉さんのこと嫌いじゃないぞ」

　ごくりと酒を飲む音がやけに大きく聞こえた。
　さらに、カン!　と軽快な音を当てて缶が落ちる。不審に思って姉さんを見ると、目をうるうるさせて俺を見ていた。

「……姉さん?」
「修ぅぅ〜〜〜〜〜!!　姉さんは嬉しい!!　嬉しいよぉ!!」
「ちょっ!?」

　そう言ってがば!　と勢いよく抱きついてくる。
　なんというか、この格好はダメだろ。夕香が入院して良かったと俺は初めて思った。こんな教育的によろしくない状態を妹に見せるわけにはいかない。

「姉さん、どいてくれ!」
「やだぁ!!　修ぅ〜、今日は酔いつぶれるまで飲むよ!」
「もう酔いつぶれてるだろ!?」

　その夜、俺はもう絶対に姉さんに酒はやるかと心に誓った。

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　豪炎寺君のお姉さんと修くんでした。
　ちょっとお姉さんに困る修くんを書いてみたかったのでｗ
　それと、裸Yシャツって萌えません?