二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 深海シティアンダーグラウンド ( No.1 )
- 日時: 2012/07/29 09:59
- 名前: 月森和葉 (ID: ngsPdkiD)
- 参照: http://www.youtube.com/watch?v=qh6Sy67s6zM
まずは「深海シティアンダーグラウンド」田中Bfeat鏡音リンです。
どうぞ。
深海シティアンダーグラウンド
VOCALOID『深海シティアンダーグラウンド』より
此処は深海シティアンダーグラウンド。
海の下に創られた、謎の都市。
季節は仇花が舞い散る頃。
分からない?そうよね。
貴方達の暮らす画面の向こう側には、存在しない植物。
でも分かって。
あたしには貴方達に伝える術が分からないの。
しいて言うなら、すんごく赤い。それだけの花。
踏切の向こう側で散る悲しみを嘆くから、五月蠅くてかなわない。
だから此処では雑草として扱われている。雑草と言うより害草かな。
あたしの日常は、此処でテキトーに暮らすこと。
「ハロー、プラスチックベルゼブブ」
「ハロー」
「元気?」
「元気」
彼は、いつの間にか此処へやって来た少年だ。
此処に住めるわけでも無しに、大きなボンベを背負い、大きなゴーグルとマスクを着けていて顔が見えない。
ボンベからブーンという音が常に響き、常にマスクから大きな泡を吐き、常に膝を抱えてずっと同じ場所に座っている。
それでもときたま声を掛けると、返事を返してくれる。
此の薄汚れた街には、様々な人が住んでいる。
あたし、プラスチックベルゼブブ、そして街の果てに住むおじさん。
おじさんは埴輪症候群だ。
自分の近くに毎日たくさんの埴輪を並べてはじっと眺めている。
深海にはこんな人達ばっかりだ。含、あたし。
でも、そんな人達に迷惑している人もいる。
汽車を運転している駅員さんだ。
駅はどこにあるのか知らないけど、汽車は走っている。
埴輪の影響で、汽笛の音がおかしくなるらしいのだ。
埴輪の影響って何よ?
バスも走ってる。でも、バスについては追い追い。
あたしは汽笛の音を聞きながらガムを噛んで通り過ぎた。
気が付けば、足下に四つ葉のクローバーが生えていた。
時刻は真夜中の四時。
でも、此処には時間なんて意味がないから、これは無視してもなんの影響もない。
誰かの零した煙草の(此処にも煙草はあるの。どうやって水の中で火をつけるのかって?細かいこと気にしてるとハゲるわよ)灰で、幸せのクローバーはあっという間に焼き付いてしまった。
それを見ていたのはあたしと、深海名物三足の烏。
突然変異で足がもう一本増えた、奇妙な鳥。奇妙っていうか、珍妙よ、あれは。
真っ黒な眼で、あたしと焼けたクローバーを不気味に見つめていた。
地下から沸き上がる茶色い石油は、双子が常に遊んでいる。
そのお陰で、深海はいつもほのかに香っていた。
石油の臭いって、あんまり良いもんじゃないわよ。
有機モノソミーの中で、あたしはいつもひとりきり。
此処は深海シティアンダーグラウンド。
地球上の位置的には、最果て。
人間が一回も来たことないくらい、果て。
その上に島があって、そこには蝦の楽園が広がってるらしいけど、此処の上に島なんて見えないし、第一蝦は海の中で暮らすものじゃない?
誰が作ったのよ、そんな馬鹿げた噂。
作った奴は正真正銘の馬鹿ね。
深海シティアンダーグラウンドの王朝のお姫様は、今は偏執狂。
父親の王様は焦って「政治に手を掛けている暇はない」とかテレビの向こう側で言うけど、政治なんかなくたって、此処の住人は好き勝手やって暮らしてる。
政治なんてあったって気にしない。
「今の政治についてどう思いますか」って聞いたら、きっと「政治?なにそれおいしいの?」って答えると思う。
要するに此処の人々は政治なんか気にしちゃいないし、政治がなんなのかも知らないの。
あたしは一般常識的に知ってるけど、どうでもいい。
此処には一般常識が無いヒトの方が多いかも。
不思議な深海シティアンダーグラウンド。
夜はないけど星はある。
星と言っても、いつでも何処でも光ってる、不思議な深海シティアンダーグラウンドの不思議な名物。
鉱物じゃない。色は全部青。馬鹿みたいにずっと青く光ってる。発光ダイオードみたい。
あたしは試しにひとつを摘んでみたけれど、その感触を確かめる前に、それは海中に霧散した。
そんなにあたしに触られるの嫌だった?
嘘吐きのスキゾフレニア。