二次創作小説(映像)※倉庫ログ

カゲロウデイズ ( No.10 )
日時: 2012/06/13 22:34
名前: 月森和葉 (ID: Lx/gxvCx)

玲於奈さんいつも有り難うございます!
どーしても私の絵が見たいというのなら(んなわけねーだろと毎回思うのは私だけですか)秋田書店「プリンセスGOLD」(毎月16日発売)という漫画雑誌のイラストコーナーに時々投稿してます。
名前は和葉でやってます。
ボカロとはまったく関係在りませんが、興味を持たれたのならば見て下さい。
ですが、もうすぐ発売の今月号は、投稿はしておりませんので、ご了承下さい。








 次に眼を覚ましたのは、自分の部屋の、自分のベッドの上だった。
 時計の針が少しずつ時を刻んでゆく音が、静かな部屋に響く。
 枕の隣に置かれた携帯電話を取り上げると、今は8月14日の12時過ぎだった。
 蝉の声がやけに耳に響いていた。
「少し不思議だな……。」
 昨日と同じ公園で、昨日と同じ夢を思い出していた。
 隣では、昨日と同じように彼女が膝の上で黒い猫を撫でている。
 考え事をする僕の頭に、近くのビルの上での工事の音が鳴り響いている。
「もう、今日は帰ろうか。」
「そう?」
 彼女の手を引いて公園から出る。
 少し広い道に抜けたとき、周りの人が皆、口をぽかんと開けて上を見上げていた。
 不思議に思って僕も上を見上げると、丁度、巨大な物体が落ちてきているところだった。
 工事現場から彼女を目指して—。
 落下してきたたくさんの鉄柱のうちの一本が、彼女の胸の中心に突き刺さる。
 僕は工事現場を恨めしく思った。
 耳を裂くような悲鳴も、近所の家の庭先に吊された風鈴の音も、どこか遠くに聞こえた。
 目線を上げると、また黒いパーカーの少年が居た。
 誰かに似ている気がする。
 やっぱりそいつの口元が動く。
『夢じゃないよ。』
 恨めしいのは工事現場だけじゃなかった。
 それでもってやっぱろその後どうなったのか、僕は覚えていない。
 知らないのかもしれなかった。

カゲロウデイズ ( No.11 )
日時: 2012/06/14 17:51
名前: 月森和葉 (ID: Lx/gxvCx)

 何度僕があがいても、黒いパーカーの少年が現れて、全てをさらっていってしまう。
 それを何回繰り返しても、やっぱり結果は変わらない。
 僕はもう何十年、陽炎と遊んできたのだろう?
 大丈夫、こんなよくある話なら、結末はきっと1つだけさ。
 もう、とっくに気がついているんだろう?
 そして、僕は彼女の手を引いて駆け出した。

 赤に変わった横断歩道に飛び出しかけた彼女を、遊歩道に押し戻す。
 かわりに僕は、横断歩道に飛び出していた。
 目の前には、猛スピードでやってくるトラック—。
 次の瞬間、僕の身体はトラックにぶち当たった。
 ぎしぎしと軋む身体と、彼女の怯えた瞳が乱反射する。
 少し辺りを見回すと、やっぱり黒いパーカーの少年が居て、文句ありげな顔でこっちを睨んでいた。
 僕はそいつに向かって笑いかける。
『ざまあみろよ。』
 黒い陽炎少年は、手をポケットに突っ込んだまま、仏頂面でこっちを睨み、宙に薄れていった。
 ああ、そうか。
 あいつは僕に似てたんだ。
 自嘲気味に笑ったとき、陽炎少年の向こう側に見えた人影があった。
 それは、黒いタンクトップを着た、よく見慣れた少女の顔だった。
 驚いて眼を見張ろうとしたが、もう遅い。
 僕の意識は遠くへ逃げていった。
 実によくある夏の日の、僕と陽炎の鬼ごっこと、僕の命と、何かが終わった。

 8月14日。
 病気になりそうなほど眩しい日差し。
 そんな中、少女はベッドの上に座っていた。
「また…、駄目だったよ…。」
 膝の上で、真っ白な猫が悲しそうに小さく鳴いた。
 その少女の脚の上に、熱い液体が零れた。


                           〈〈 終 〉〉