二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 囚人と紙飛行機 ( No.39 )
- 日時: 2012/07/01 16:41
- 名前: 月森和葉 (ID: Lx/gxvCx)
参照200ありがとうございます!
神さん、お待たせいたしました。
囚人P『囚人と紙飛行機』です。
自分はこれを書き上げた直後、ちょっとセンチになりました。
囚人と紙飛行機
『囚人』『紙飛行機』囚人P feat 鏡音リン・レン より
1,囚人の少年
ある時代、ある場所で、一人の囚人の少年が、柵越しに恋をした。
少年にとっての初めての恋で、初めての生きる希望だった。
あのこにあいたい。
あって、いちどでいいからはなしをしたい。
セツナイ想いが少年の胸を締め付ける。
でも、自由を奪われ、迫害され、罪に責め続けられて真っ黒になった僕と、あのことじゃ、天と地ほどの差があるんだ。
少年は、考えに考え抜いて、手紙を書いた。
渡せるはずもないその手紙を、紙飛行機にして飛ばした。
トンデケ。僕と彼女との溝を埋めておくれよ。
紙飛行機の手紙は、鉄柵の上を越え、彼女の目の前にぽとりと落ちた。
彼女は驚いて、鍔の広い帽子を少し持ち上げてこちらを見つめた。
それを、拾って。
僕と話をしようよ。
あのこは手紙の紙飛行機を拾って、丁寧に広げてそれを読んだ。
暫くして、彼女は微笑みながらこっちを見た。
嬉しい。
明日もまた会えるかな。
その日、また少年は牢の中で手紙を書いた。
- 囚人と紙飛行機 ( No.40 )
- 日時: 2012/07/01 19:39
- 名前: 月森和葉 (ID: Lx/gxvCx)
次の日、また少女は訪れた。
白い、鍔の広い帽子。
真っ白いワンピース。
光に反射して輝くショール。
その懐から、少女は手紙を取り出して、それを折って紙飛行機にした。
それからこっちを見て、自分と少年を交互に指差した。
分かった。
この紙飛行機を、交換しようと言っているんだ。
僕らは一斉に紙飛行機を相手に向かって飛ばした。
彼女は上手に僕の紙飛行機を受け取ったけど、彼女の紙飛行機は風に乗って建物の壁に向かって真っ直ぐに飛んでいった。
僕はそれを追いかけていったら、紙飛行機しか見ていなかったから建物の赤煉瓦の壁に正面から激突した。
一瞬訳が分からなくなって、その場にばたりと倒れ込んでしまった。
次の瞬間には起き上がって紙飛行機を拾うと、彼女が心配そうな顔でこっちを見つめていた。
ぼくはだいじょうぶだよ。
少女の優しい心に、日々の蟠りがゆるゆると融けていくような気がした。
まるで銀色の雪が、春の暖かい日差しに溶かされてゆくように。
嗚呼。
いつか、自由になれるというのも、嘘だって、知っているんだ。
彼女がいれば、どんな嘘だって、どんな罪だって、全て無くしてしまえるような気がした。
「僕とこっちにきて話そうよ」
そう言いたい。
でも、決してこの想いは伝わらない。
伝える事なんて出来ない。
言ってしまえば彼女に迷惑が掛かる。
だから、いつも、僕の居る刑務所の前を通る君を見ていることが、僕のささやかな幸せなんだ。
- 囚人と紙飛行機 ( No.41 )
- 日時: 2012/07/08 08:22
- 名前: 月森和葉 (ID: Lx/gxvCx)
幾日、幾月と経った。
あれから毎日君から送られてくる紙飛行機が、僕の心の支え。
毎晩それを眺めることが、僕のヨロコビ。
でも、その日は唐突にやって来た。
ある日、彼女が僕に向かって飛ばした紙飛行機。
そこに書かれていた言葉は、僕にとって信じられないことだった。
『遠くに行くことになったの。だから—』
Byebye
彼女の口が、そう告げた。
Byebye
彼女は笑っていた。
僕も笑った。
眼の端に滲んだ涙を悟られないように。
彼女が去っていくのを、最後までじっと見つめていた。
- 囚人と紙飛行機 ( No.42 )
- 日時: 2012/07/05 19:23
- 名前: 月森和葉 (ID: Lx/gxvCx)
嗚呼。
苦しい思いをしながら、やっと今日まで生きてきて、こんなに涙が止まらないなんて。
僕にもまだ涙なんて出るんだな……。
君が居てくれるだけで、どんなに辛く哀しい運命だって、笑顔が溢れる明日に変えることだって出来たのに。
君と出会って、僕の未来は初めて輝いた。
なのに。
呼んではいけない。
追ってはいけない。
此処から出てはいけない—。
僕には、どうすることも出来ないんだ—。