二次創作小説(映像)※倉庫ログ

茨まみれのシンデレラ  第4章 ( No.14 )
日時: 2012/06/30 20:06
名前: 緋賀アリス (ID: 35AN48Qe)
参照: http://www.madoka-magica.com/tv/special/dic/card2.html

——藤宮悠人——さっきから彼の顔が脳内に写真を貼ったように頭から離れない。私は彼が好きになったんだろうか?いやでも「好き」はもっと違うはず、小学一年生の時の初恋
の亮君……告白後3秒で撃沈したけど……とにかく「好き」はもっと違う感覚だ。ならいったいこの感情は何なんだろう?相変わらずの一人での帰り道に考える。彼にあげる筈の
花束も持って帰ってきてしまった、家の花瓶に生けよう、そして、ふとうつむきながら考えていた、頭をあげると


———そこは異世界だった。

「何……これ?」
『辛い時には誰かに話そう』
『見えないSOSの声に気づいて!』
そんな感じのポスターでコラージュしたような道があたりから何本も浮いている。
怖くて走りだしても、一向に出口は見えない、それどころか浮いている道が増えていく。どうしようかと辺りを見回すと、
「ひぃい……!」
変わった色のスーツを着たマネキンがどこから現れたのか、自分の数メートル先にいる、そして体を揺らしながらこっちに向かってくる。よく見れば後ろに似たようなのが何体も
いる。
「何、何かのドッキリ?」
足がすくんで動けない、頭は恐怖で一杯だ。しかしイタズラにマネキンは徐々に近付いてくる。もう先頭のマネキンは数歩先にいる。呼吸が荒くなる、鼓動も弾む、心臓は今にも
爆発しそうだ。

「レガーレ・ヴァスタアリア!」

その時、自分と同い年位の少女の声が聞こえた。すると何処からか、鮮やかな黄色いリボンが溢れだし、マネキン達をぐるぐる巻きにして動きを止める。

「伏せて!」

足がすくんでいたので、半ば転ぶかのようになってしまった。

次の瞬間大量の銃声と共に何体ものマネキンが砕け散る。目の前にいたのは、私と同じ女子学生だ。

「怖かったでしょう?でももう大丈夫、ちょっと待っててくれるかしら?」
「は…はい」
彼女が私に触れると、私の周りが黄色い光に包まれる。
「今日は一気にいくわよ!」
彼女がステップを踏むと、銃が生み出され軽快にも聞こえる銃声で、輝く……まるで宝石のような銃弾を放つ。そしてリボンで縛られたマネキンが砕け散っていく。それはまるで
彼女が行う、舞踏会のよう、

「あ、危ない!」
頭を縛られていないマネキン達の頭が体から外れ、幾つも集まり彼女に襲いかかる。
「人の武器が銃だけだと思わないでよね!」
彼女の手から、さっきとは違った質のリボンが靡き、マネキンの頭達を一刀両断する。しかしマネキンの頭の一つがこちらに向かってくるではないか。
「キャアぁぁ!」
「!……ちょっと退いていてもらえる?」
もとに戻った足で、後ろに下がると、瞬時に戻ってきた彼女が何とマネキンに豪快に蹴りを入れて潰す。普通の女子がやったのならはしたなく思えるこの蹴りも、今は優雅な彼女
の舞踏会の一部なのだった。
「説明不足だったわね、貴女の周りの光は、結界みたいなものだからあのマネキン達の攻撃は受けないわ」
「あの……これって??」
「詳しい事情は後、後そろそろね、着いてきてくれるかしら?」
彼女が私の手をとり、マネキン達が消えた道を小走りする。
「いよいよね、そこから離れないでね?」
「はい」
突然、私達がいない道がまるで吸い込まれるように一つに集まり始める。そしてその一ヶ所から、マネキンのパーツがチグハグに幾つも付いた怪物のようなものが這い出てくる。
「これなら、いけそうね!」
彼女が手を前に翳すと、大量の古びた長い銃が現れ一斉に射撃する。放たれた銃弾が怪物を蜂の巣にし、グロさが10倍程上がる。
「さてと、お待たせしたわね、お嬢さん」
今度は光るリボンを螺旋状に回すると、リボンが大きな大砲に形を変える。
「ティロ・フィナーレ!!」
大砲から打ち出される光線がマネキンを灰にした途端に辺りが歪み始め、夢が覚めるようにもといた通学路に戻る。

「あ、あの」
「……キュウベェがいないって事は、ただ単に襲われただけなのかしら?魔法少女候補かと思ったのだけれど」
彼女が何か独り言を言っているが、内容まではわからない。
「あ、あのさっきは有難うございます!!」
「いえいえ、怪我はない?」
振り向いた彼女は、先ほどのコスプレ衣装のような服と違い制服姿だった。たしかあの制服は見滝原……隣町の中学のはず。
「あの、何かお礼を!」
「お礼なんて要らないわ、困っている人を助けるのが仕事なんだもの、強いて言えば今日見たり聞いたことを誰にも話さない事かしら」
「で、でも」
「……そんなに言うんなら、お言葉に甘えちゃおうかしら、その素敵なバラの花束……一輪頂いてもいい?」
「え、あ、どうぞ!!何なら全部でも!!」
彼女にバラの花束を差し出す。彼女が選んだのは、彼女と同じ、黄色いバラ。
「本当に綺麗ね……ありがとう。じゃあね」
「あ、あのお名前聞いてもいいですか?」
「巴マミ、三つ巴の巴にカタカナでマミ。マミでいいわよ」
それだけ言うと、マミは歩いていってしまう。
「マミさんか……格好いい!」
よく考えてみると、物凄く恐ろしい体験をしたのだが、それよりも彼女の優雅さの方が目に焼き付いている。美しく靡くリボンに、オーケストラの銃達。広がる紅茶の香りに、マ
ミさん。

「灰原つぼみ」
「のわっ!」
不意に後ろから声を掛けられる。振り変えるも誰もいない。
「もっと下だよ下」
そのまま下を向くと、白いマスコットが喋っている。
「何かのおもちゃ?」
「酷いな、つぼみ僕はキュウベェ。君に用があってきたんだよ」
キュウベェ……確かマミさんがさっきそんなこと言ってた気がする。
「君は何か叶えたい夢はあるかい?」
「え?」
急に、そんな事言われても困る。何しろ叶えたい夢なんて山ほどあるのだから。
「あったらどうなるの?」
「一つだけ、僕は君の願いを一つだけなら叶えられる」
「嘘……本当?」
「だから僕と……」
キュウベェが一回ジャンプするとクルリと一回転してまた座る。かしこまっているつもりなのか。


「僕と契約して、魔法少女になってほしいんだ。」