二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 第5話 真実 part1 ( No.116 )
- 日時: 2013/01/27 23:09
- 名前: のあ (ID: DYDcOtQz)
「う、わぁぁぁ…。綺麗……」
リーザスの塔の最上階は、まさに『聖域』といった感じだった。
弱々しく差し込む星明り、滝のように流れる澄んだ水…教会の重々しいぐらいの神聖さとは全く違う、何と言うか…優しくて暖かいような。
中央には優しげな表情の女神像があって、その目は紅く輝いていた。
「あれが、クラン・スピネル…?」
「きっとそうだろうね。ってことは、やっぱりサーベルトさんは……」
カツン。
「「「!!!」」」
軽い靴音に一斉に振り返る。
そこにいたのは赤い髪をツーテールにまとめた気の強そうな少女だった。手には花束を抱えていて、ひと目でサーベルとさんの供養に来たのだと分かった。
……もしかして、この人が——
「やっと…姿を現したわね、賊!!」
綺麗な顔を一瞬にして歪め、両手を横に伸ばす。すると彼女の周囲に小さな火の玉がいくつもできた。
「!?メラを…」
「スペルも詠唱も無しで!?」
この人…相当な魔法の使い手だ!!
驚く私たちをよそに、火の玉——メラはどんどんその数を増やしていく。
「行きなさい!!」
その言葉を皮切りに、次々とメラが私たちの方へと向かって来た。大きさが小さいからなんとか守れるけど…結構キツイ、かも。
「盗賊だけあってさすがにすばしっこいわね!!だけど今度は逃さないわよ」
「ま、待ってください!!僕たちはただの旅人で——」
「黙りなさいっ」
エイトの説得にも耳を貸さず、少女—おそらくゼシカさん—は両手を上に上げ、何かつぶやきはじめた。
…まさか、正式詠唱?
私の考えを裏付けるように、火の玉は先ほどとは比べものにならないほど大きくなっていく。っておいぃぃぃ!!もうこれ、メラミレベルだよね!?
「あわわわやばいよエイトっ!?」
「くっ…レーナ!!ヒャドを正式詠唱で!!」
「は!?なんでっ」
「いいから黙ってやって!!」
「こ、氷の精霊・『フラウ』!!我の願いを聞き届けたまえ!!」
エイトにいわれるがまま、ヒャドの正式詠唱を唱え始める。そうしている間にもゼシカさんのメラは信じられないスピードで大きくなっていき、やがて——スペルが途切れた。
…ダメだ、モロに喰らうっ!!
「…これで終わりよ。覚悟しなさい、サーベルト兄さんのカタ」
——ま、待て……
「っ!?」
当然響いた声に、ゼシカさんが怯む。声の出所は……あの像?
——私だ、ゼシカ…。私の声が分からないか…?
「嘘…まさかそんな……。
…サーベルト……兄さん…なの……?」
——あぁ。
呪文を止めろ、ゼシカ。
私を殺したのは、この方たちではない。
「と、止めろって言ったって……無理よっ!!止まらない…きゃあっ!?」
気が緩んだせいか、ゼシカさんの呪文が暴走した。
それを見たエイトが叫ぶ。
「今だ、レーナ!!」
「…我が身に纏いし氷の眷属、氷結せよ!!ヒャド!!」
カキィィィィン!!
私の全力の魔法がゼシカさんのメラに当たり、炎が凍る小気味良い音がした。それに全身全霊をかけたからなのか、とても疲れた。ゼシカさんも同じようで、手を突き肩で息をしていた。
しかしそんな弱気の顔を一瞬見せた後、きっと上を向き、像に向かってエイトを付き飛ばして走っていった。…スゴイ勢いだ。
「サーベルト兄さん!?本当にそうなの!?」
——あぁ、本当だとも。
聞いてくれ、ゼシカ。そしてそこにいる旅の方よ……
死の間際、女神像は私の魂の欠片を預かってくださった。
この声も…その魂の力で放っている……
だからもう、時間が…無い。
像の眼を…クラン・スピネルを見つめてくれ…
そこに真実が刻まれている……
さぁ……急ぐんだ……!!
ゼシカさんはこくりとうなずくと、美しい赤い目を見つめた。私たちもそれにならう。
それを見届けてか、再び女神像—サーベルトさんは口を開いた。
——あの日…塔の扉が開いていたことを不振に思った私は……
一人で、様子を見にきた。
そして……
突然、視界が反転しセピア色に染まった。