二次創作小説(映像)※倉庫ログ

第5話 真実 part2 ( No.117 )
日時: 2013/02/03 23:32
名前: のあ (ID: DYDcOtQz)

  ——暗い、暗い闇の中を、一人の若者…サーベルトさんが歩いている。違和感を感じているせいか、しきりに首をかしげているのはきっと……あまりに塔が静か過ぎるからなんだろう。
 やがて最上階へとたどり着いた彼は…人影を見る。
 派手な装飾が付いた衣装、夜目にもはっきりとわかるメイク、後へなでつけた長髪…それは道化師の格好をしていた。

——『だ、誰だ貴様ッ!!』

 そういって剣を抜くサーベルトさん。それを見て道化師はポツリとつぶやく。

——『悲しいなぁ……』

——『なんだとっ…!?質問に答えろ、貴様は誰だ。ここで何をしている!!』

——『…くっくっく……。
   我が名は《ドルマゲス》ここで人生の儚さについて考えていた』

——『ふざけるなっ!』

 サーベルトさんは道化師に飛びかかろうとする。しかし、何かに縫いつけられたように体が動かない。
 道化師はニタリと口を歪めて笑うと、ゆっくりと…ゆっくりとサーベルトさんの方へと歩み寄った。

——『おのれ…ドルマゲスと言ったな。
   その名前、決して忘れんぞ!!』

——『ほぅ?私の名前を覚えていてくれるというのか。
   なんと喜ばしいことだろう。
   私こそ忘れはしない。君の名前は永遠に私の魂に焼きつくことになる』

——『き、さまぁぁぁぁぁ!!』

——『さぁ、もうこれ以上私を悲しませないでおくれ……』

 どこかふざけたように言うと、道化師は持っていた杖を振りかざし…

 サーベルトさんを、一気に貫いた。

——『…ぁ…』

 そのまま杖を引き抜くと、サーベルトさんは力無く倒れ、動かなくなった。道化師—ドルマゲスは彼が死にゆく様を見届け…やがて狂ったように笑いだした。

——『……クハッ。ヒャーハッハッハ!』

 その耳障りな笑い声は、ドルマゲスの姿が透け、消えてなくなっても搭の中に響きわたった……。


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 サーベルトさんの最期の記憶が終わると、視界が元通りになり、水が流れる音も耳に飛び込んできた。いつの間にか私たちはゼシカさんの隣にいた。きっと、サーベルトさん…もしくはリーザス像がここまで移動させてくれたんだろう。
 惚けていると、再びサーベルトさんの声が頭のなかに直接響き渡った。

  ——旅の方よ
    リーザス像の記憶……見届けてくれたか……
  
  ——私にも…なぜかはわからぬが……
    リーザス像はそなたらが来ることを待っていたようだ。
    
  ——願わくば…このリーザス像の記憶が…そなたの助けになれば…
    私も……報われる………


 話を聴いていると、どうやらリーザス像は私たちがドルマゲスを追っていることを知っていたらしい。…短い時間しか映像が見れなかったから良くは分からないけど、これだけはハッキリと言える。

 ドルマゲスを、このまま野放しにしちゃダメだ。

 あいつは『悲しいなぁ』と言いながらどこか人を殺す事を楽しんでいたように見えた。…多分、このまま放っておくと再び人殺しをする。その目的は、何故かは分からないけど……。
 おそらく、リーザス像も私たちに『ドルマゲスを倒してほしい』って意味でサーベルトさんの魂を預かり、私たちに彼の最期の映像を見せたんだろう。

「ありがとうございます。奴は、ドルマゲスは、絶対に私たちが倒してみせます。
 あなたの死は……無駄にはしません。」

 私がそういうと、女神像——もしかしたらサーベルトさんかもしれない——はにっこりと笑ったように見えた。


  ——ゼシカよ……これで我が魂も役目を終えた。
    お別れだ………。


 サーベルトさんがそういうと、ゼシカさんははっとした顔になり、勢い良く首を横に振った。
 そのままキッと女神像の瞳…クラン・スピネルを見つめる。その意思の強そうな瞳は少し潤んでいて、今にも泣きだしそうなのを必死でこらえているようでもあった。

「嫌ぁっ!!…どうすばいいの!?
 お願い…行かないでよ、兄さん……」

  ——ゼシカ……最後に、これだけは伝えたかった…。
    この先も母さんはお前に手を焼くことだろう…だが、それでいい…。

「…?どういう…こと……?」

  ——お前は自分の信じた道を進め……
    さよならだ……ゼシカ……。

 その言葉を最後にし、石像の全身がが淡く輝き始める。
 ゼシカさんが駆け寄って手を伸ばしたけれど、その手は光をつかむことなく空を切り……やがて何事も無かったように石像は輝きを失った。

「サーベルト……兄さぁん!!」

 そのまま、彼女は泣き崩れた……。