二次創作小説(映像)※倉庫ログ

第6話 お嬢様の旅立ち part2 ( No.121 )
日時: 2013/03/24 23:00
名前: のあ (ID: DYDcOtQz)

「もう一度聞きます、ゼシカ。貴方には兄であるサーベルトの死を悼む気持ちはないのですか?」

 アルバート家の屋敷に入って、まず聞こえてきたのがそんな声だった。ゼシカさんとよく似た赤髪の女性が、バカでかい声を張り上げてゼシカさんの前に立っている。きっと彼女がアルバート家の現当主、アローザ・アルバートさんなんだろう。
 …う〜ん。親が親なら子も子だな……。どっちも気が強そう……。
 そう思いながらぼうっと見ていると、いきなり後ろから袖を引っ張られた。

「おいおい、君ィ〜!!
 取り込み中だ、話ならあとにしなよ。」
「え?あ……キノk……じゃなくて、ラグサットさん。こんにちは」
「おや〜?君たちはいつぞやの……」

 そこにいたのは金髪キノコ、もといラグサットさんだった。この前からこの屋敷にいるけど…暇人なのかな?ていうか、空気読めるんだこの人。
 ラグサットさんはこほんと咳払いをすると、改まって言い始めた。

「大方、ゼシカに用があったんだろう〜?ただ、今はやめておいたほうがいいさぁ〜。あんなに怒ったアローザ義母さんを見るのは、僕も初めてだから」

「ゼシカ!!バカを言うのもいい加減にしなさい!!あなたは女でしょ!?」

 突然、屋敷を震わすほどの声がして思わず息を止める。隣ではラグサットさんが「あちゃー」という顔をしてみている程だから、これはアローザさん……本気で切れたっぽいな。
 その声量のまま、母娘げんかは白熱していく。

「サーベルトだってそんなことは望んでいないはずよ!!
 今は静かに先祖の教えに従って、兄の死を悼みなさい!!」
「もういいかげんにしてほしいのはこっちよ!!
 先祖の教えだの家訓だのって、それが一体なんだっての!?
 どうせ信じやしないだろうけど、兄さんは私に言ったわ、『自分の信じる道を進め』ってね!
 だから私はどんなことがあっても絶対に兄さんの仇をうつわ。それが自分の信じた道だもの。」

 言い切った。あのこわそうなお母さん相手に、ゼシカさんは想いを全部ぶつけた。
 ごちゃごちゃした感情も一切なく——自分が『正しい』って思ったことをそのまま言ったんだ。
 まるでどこまでもまっすぐな——剣みたいな人。
 私とは……真逆の人。

「私も、あんな風になっていれば……」

 ポツリとこぼしたその言葉は、まるで自分のものじゃないようで。
 気がつくと私の瞳は、ゼシカさんに吸い込まれていた。
 ゼシカさんは、髪と同じ緋色の瞳をアローザさんにまっすぐ向けていた。それは、絶対に覆せない意思の大きさを表しているように見えた。アローザさんはそんなゼシカさんの様子を見て、ため息を一つ付いた。

「………分かったわ、それほど言うなら好きにすればいいでしょう。ただし」

 アローザさんはきっとにらみつけた。

「私は今からあなたをアルバート家の一族とは認めません。この家から出て行きなさい」

 ……え?
 『出て行け』って…。それって、いわゆる『勘当』ってことですか?本気で言ってるの、この人!?

「えぇ出て行きますとも。お母さんはここで気が済むまで引きこもっていればいいわよ!!」

 うわぁぁぁぁっ!?ゼシカさんも、そんなあっさり認めちゃっていいの!?よく考えて返事しようよ!!よーく考えよー♪でしょ、これは!!

「ゼ、ゼシカねえちゃ…」
「どいて、ポルクマルク!!荷物を取って来るから通してっ!!」
「は、はいいいいぃっ!!」

 怯えるポルマル(完璧に八つ当たりだ)を尻目に、ゼシカさんは部屋に入ると音を立てて勢いよく戸を閉めた。アローザさんはそれを確認すると、ふんっと鼻を鳴らして下の方へと降りていった。

「…………」

 痛いほどの沈黙。皆あまりの急展開ぶりに声が出ない。(もちろん私も)
 しばらくすると、ガチャリと扉が開いて旅人の服を着たゼシカさんが出てきた。

「!!!!?」

 男性陣(主にヤンガス)の眼が釘付けになる。だって、ゼシカさんの着ていた服は胸元が大きく開いていて…何と言うか……その、目のやり場に困る、というか……。

「エロイでやんすなぁ〜…」
「そう、それ!!…って言ったらアカーーーーン!!」
「宮●大輔!?」

 ヤンガス、私がなんとか言わないようにしていたことをペラペラと……。後でシメテヤル。
 そうこうしているうちに、ゼシカさんはポルマルに二言三言呟くと、玄関の前にいたアローザさんの前に仁王立ちになった。

「それでは言われた通り出ていくわ!お世話になりました、ごきげんよう!!」

 そう怒鳴りつけると、アローザさんの鼻先でドアを閉め、勢い良く外へ飛び出して行った。

「…………」

 再び沈黙。こっちとしては、台風が過ぎ去ったぐらいの感覚よ。
 一番先に口を開いたのはラグサットさんだった。

「……あぁ、縁を切ったんなら、婚約の話は無しになるのかなぁ〜?
 僕は一体これから……はは、アローザ義母さ…いや、アローザ婦人と話すことがいっぱいさぁ…」

 そういうと、半分涙目になりながらふらふらと下の方に降りて行った。
 あー…今の状態のアローザさんに話しかけ辛いだろうなぁ……ちょっと気の毒に思えてきた。
 その時、エイトがポツリとつぶやいた。

「あ……お礼。」
「え?」
「お礼、まだもらってない」
「あ、うん。そういえばそうだね」

 もらいに来たはずなんですけどね。
 ……アレ?なんか嫌な予感……。

「レーナ、ヤンガス!急いでゼシカさんの後を追うんだ!!
 多分ポルトリンクの方に行ったはずだろうから、死ぬ気で準備すれば間に合う!!」
「え、えぇぇぇえええ!?ちょっとエイト!!今それどころじゃないでしょ!?今の見てたの!?」
「これはこれ、それはそれだよ!!もらえるもんはもらっておかなきゃ!!」

 こ、こンの生真面目男はぁぁぁぁっ!!
 今となってはどうでもいいじゃんそんなことっ!!

 …そうは考えるものの、リーダーの決定に逆らえる人がいるはずもなく。
 結局はその五分後にはリーザス村を出発することになった。