二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 第1話 閑話休題〜記憶の狭間にて〜 ( No.149 )
- 日時: 2013/09/17 23:05
- 名前: のあ (ID: 49hs5bxt)
気がつくと、なんだか真っ白なところにいた。
「あれ……ここどこ?」
私はキョロキョロとあたりを見渡す。が、いくら周りを見ていても、そこにあるのは色とりどりのフレームだけで、ここがどこなのか理解することはできなかった。
……けれど、現実では絶対に空間はない。ってかあってたまるか。
「だったら……えいっ」
それを確かめるために、私は自分の頬を思いっきりつねる。跡が残るぐらいに強く、伸ばしたり引っかいてみたり。しかし、そこに痛みはなかった。ということは、やはりここは自分自身の夢の中なのだろう。お、こんなこと言ってると自分が頭良いみた……こほん。
とにかく、自分のいる場所について理解したとことで、もう一度じっくりとあたりを見渡す。すると、さっきまですべて同じフレームに見えていたものは2種類あり、映像が再生されているものと真っ暗なものがあるのが分かった。おもむろに再生されているものにふよふよと近づいて見てみると、それはエイトとの旅の映像だった。
「これ……私の記憶?」
そうなると、この真っ暗なフレームにも説明が付く。おそらくこれらは、私のまだ思い出していない記憶なのだろう。つまりここにあるフレーム全てが私の記憶であって‥…って。あれ?私もしかして今、すごい状況じゃね?夢とかで思い出した記憶のフレームを見つけて、もっとじっくり見れば……それが引き金となってもっと多くの記憶を思い出すかもしれない。
期待に胸が高鳴って、その場で何回もグルグルと回ってしまう。しかし、これが夢というのなら、時間は限られている。私はパンと頬を叩くと、急いでアインスとの記憶を探し始めた。
「にしても……なんなのよこの量……探すのが大変じゃない……」
まだエイトたちとの記憶が少ないだけあって、映像が映り込んでいるフレームもそれほどの数ではない。しかしそれを抜きにしても、やたらとフレームの量が多くて、なかなかアインスとの記憶が見つけ出せない。
「あーもうっ!!このままじゃ私なんの手がかりも見つけずに終わっちゃうじゃん!!」
しばらくたっても一向にその記憶が見つからず、苛立ちから頭をポカポカと殴る。大分時間も経ってしまったみたいだし、おそらく残りの時間はわずかだろう。
……結局、また成果なしか……。
半ばあきらめかけていたその時、ふと小さな箱が目に入った。
近づくと、それは鍵が頑丈に付いていて、今までのフレームとは違うような気がした。
「なんだろ。これも記憶……?」
そっと触れてみる。
さあああっ
「っ!?」
驚いて、思わず手を離してしまう。その手を見つめ、ゆっくりと握ったりしてみたが、特別な異常はないようだった。
……何だったんだろう、今の……。
ただ箱に触れた瞬間、なぜか暖かくて……とても懐かしいような感情が流れ込んできた。まるで、とても大切で愛おしいものに触れたような…。
きっと、これは私にとって大事な記憶に違いない。そう思うと、どうしても開けたいという衝動が抑えらえなくなった。
この箱を開けてみたい。
自分のことを……もっと知りたい。
『叶えてあげましょう』
「!!?」
ばっと周りを見渡すが、あたりには誰もいない。
今の声……一体誰だったんだろう。でも、なんだかとっても優しい声だったな……。
そんなことを考えていると、手のなかに光が集まり始め、小さな鍵の形になった。
「これ……もしかしてこの箱の…?」
さっきの女の人は、私の願いを叶えてくれたようだ。やっぱり、嫌な感じはしなかったし…味方なのかもしれない。
心の中で誰かはわからない人にありがとう、とつぶやく。そして、彼女から貰った、小さな鍵を見つめる。
これで、私のことについて何か知れるなら。
少し怖い気もしたが、ほぼ迷いなく鍵穴に鍵を差し込む。これで…これで私のことが——!!
『ダメよ』
ふわりと。
《それ》は突然私の後ろに現れた。
「え……」
急いで振り向くが、《それ》に目をゆっくりと隠されてしまう。
抗うことは簡単にできるはずなのに、私はできなかった。まるで、私の身体が《それ》に抗ってはいけないと命令をしているように、全く動かすことができなかった。
自然と、《それ》に覆いかぶされるような体制になる。そのままで、《それ》はポツリと呟いた。
『まだ、これを見てはダメ。貴方が壊れてしまう…』
「それは、どういうこと…?」
『……時が来れば、いずれ分かる。嫌でも貴方が、自分の《使命》を思い出さなくてはいけない日が…。
けれど、それは今ではない。だから、この記憶は見てはいけない』
「使命…!?なにそれ、そんなの私分からないよ!!私は一体……なんなの!?」
動揺して、思わず叫んでしまう。
使命…!?そんなこと、知らない。……覚えてない?嫌だ、怖い。私は何なの!?私は、わたしは、ワタシハ………。
あぁ、私は一体、誰なのだろう。
ぐるぐると思考が回って、ひどく落ち着かない。だんだんと熱を出しているみたいに頭がぼうっとしてきて、考えることができなくなっていく。
『落ち着きなさい。貴方はレーナ。今は、それだけでいいの。怖がらなくてもいい、私が《レーナ》を守るから。
……そろそろ、時間みたいね。エイトたちが起こしに来る。貴方は、ここでの出来事をすべて忘れなさい。大丈夫。貴方は普段通りに生活できるから。』
私の考えを見透かしたようにそういうと、その声の主は私から手を外して、光の方へと送り出す。顔を見ようと振り返ってみるが、《それ》の顔は闇に埋もれてみることはできなかった。
「待って!!最後に……あなたは誰なの!?」
『私は……そうね。レイナと呼んでちょうだい。まぁ、どうせすぐに忘れてしまうのだけれど。
頑張りなさい、レーナ。自分自身を、見失ってはダメよ。』
だんだんと《それ》が遠ざかっていく。それを見ながらはたと気づいた。
(彼女の声……私と同じだった……?)
手を伸ばしてみる。が、その手は暗い闇をつかむばかりで、彼女のもとへは届かない。
待って。まだ、聞きたいことがたくさんあるのに。
そう思いながらも、私の意識は次第に薄れてゆき………やがてぷっつりと切れた。