二次創作小説(映像)※倉庫ログ

空も海も大地もないただのダンジョン攻略 part12 ( No.81 )
日時: 2012/11/19 00:12
名前: のあ (ID: hxRY1n6u)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode


第12話 それぞれの『軌跡』へと



sideレーナ

「バイバイ!!」

 そういってサフィラたちと別れた私とエイトは、シュンっというルーラ特有の音を立てて大地に降り立った。バカ作者は先に現実の世界へと帰ったらしく、どこにも姿が見えなかった。
 目の前には涙を大量に流しているヤンガス(キモイ)とゼシカ、それとククールとトロデさんたちがポカーンとした顔をしてこちらを向いている。皆突然現れた私たちに驚いているみたい。……正直言って沈黙がめっちゃキツイ。しばらくの沈黙のあと、エイトがポツリと呟いた。

「えぇっと……ただいま……?」
「あ、兄貴ぃぃぃっ!!?」
「うぎゃぁぁぁぁっ!?ヤンガス、鼻、鼻水が服にっ!!?」

 その言葉を聞くやいなやいきなり飛びついて行くヤンガス。
 ……えぇ、分かってましたとも。私は絶対スルーされるってことがねっ(泣)
 なぜかゼシカたちも「心配したのよっ!?」と飛びついて行ってるし。あーー私の人望薄……

「あ、レーナ。いたの。」
「やめてーー!?私のライフはとっくに0だよ!?」

 一応主人公ですよ!?エイトと一緒に迷子になったってのになんなのこの差はぁぁぁぁっ。
 ……あぁ、でも。

「帰ってきたんだなぁ……」

 いつものたわいも無い日常風景。さっきまで異世界にいて死にそうになってたなんて信じられないくらい、穏やかな時間。…まるでサフィラたちと戦ったのが全部夢だったみたいで——

 チクリ

「……ん?」

 手に何か違和感を感じて、開いてみる。そこにあったのは綺麗な涙のかたちをしたルビー。

「……サフィラ」

 別れる間際に「自分の涙だ」って言ってこっちに投げ込んだ宝石が、太陽の光を浴びてキラキラと輝いている。それを見ていると「夢じゃないぞ」って言うサフィラの声が聞こえた気がした。
 
「なんでも一人で背負い込みすぎないで、ねぇ……。そのセリフ、どっちがふさわしいんだか。
 ……あなたも頑張ってね。私もこっちの世界で精一杯やるからさ」

 はっきりとつぶやく。あっちの世界にも届くように。
 私は気持ちを切り替えるために目を閉じてパッと開けると、モザイクがかかりそうなくらいひどい状況になってるエイトを救出し始めた。






side サフィラ

 しゅんっと風を切り降り立ったサフィラは、大きく深呼吸をした。胸いっぱいに広がる草の香りが、不思議と懐かしい感覚を蘇らせる。

「戻って…きたんだな」

 ポツリとつぶやいてあたりを見渡すと、それは他の人も同じだったようで皆同じ様に深呼吸をしたり草の上に寝転んだりしていた。
 フレア(様)は先に現実へ帰ったらしく、『お疲れ様でした』というメモが近くに残されていた。サフィラはそれを見ると、他の人と同じ様に草の上にコロンと寝転びレーナからもらった『ミサンガ』を眺めた。

(切れたら願いが叶う……か)

 そんな非現実的なことが起こらないことを彼女は知っている。もしこんな紐切れで願いがかなうんだったら、彼女の兄はとっくに——
 不意に浮かび上がった感情を押し殺し、首を振る。今、それを考えていても仕方がない。そう割り切ると、剣を取り出しその塚にミサンガをくくり付けた。

「……ま、ちょっとぐらいなら信じてもいいかもね」
「…サフィラ?それって確かレーナにもらった…」

 急にエイトに声を掛けられ驚くサフィラ。いつの間にか彼が隣に来て一緒に寝転んでいたのだ。慌てて飛び起きると、ゼシカがニヤニヤとした顔つきでこちらを見ていた。

「な…何見てんのゼシカ!!」
「いやぁ、別にぃ?それより、何をお願いしたのかしら?」
「……別になんだっていいでしょ。」
「そう言わずに!!あっしも気になるでガス〜」
「まさか恋愛とかじゃねぇだろうなぁ!?そういうのはこの恋のエキスパート・ククール様に——」
「なんにもかけてない!!ただ邪魔だったから結んだだけだし」
「おいぃい!?無視すんなよっ」

 (主に)ククールのせいで騒がしくなっている4人を見つめて、サフィラは内心ほくそ笑んだ。
 ——ホントは、願い事してるんだけど。
 ただ、それを口にだすのは……いささか恥ずかしい。
 サフィラがかけた願いは『皆の笑顔』
 できることならこんな風に…種族も何も関係なく、皆が一つになって笑いあって欲しい。そんな実際にはありえない願い事。しかし彼女は、そんな世界を目指していた。

「君の言うとおり、気休めにしかならないけどね」

 そんな言葉を別の世界にいるもう一人の『主人公』に向けて発し、サフィラは目を細めた。







 ——記憶をなくした少女は、自分と世界の謎を知るために旅に出る。

 ——時空の守護者の少女は、世界を救う為に旅に出る。

 ——二人が出会ったのは本来ならありえない『奇跡』

 ——それすらも『軌跡』へと変え、二人の少女の冒険は続く。


         ——fin——