二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: 「 僕が、守らなきゃ 」 - カガリビト ( No.1 )
日時: 2012/08/03 14:33
名前: 蟻 ◆v9jt8.IUtE (ID: hTgX0rwQ)
参照: 大体あらすじを引用。

( 序章 )


 ——彼女は、ふと感じた。


 彼女が創り出した世界。それと共に生きていく人々、活性化していく街。進化し続ける平凡で平穏な世界を、時に制御しながら、彼女は自らが創り出した世界を見守り続けた。
 ときに涙し、ときに笑い、ときに争うその世界の姿を。海が血になろうとも、道が光輝いても、彼女はその世界の人々にほとんどを委ね、世界を回した。

 そんな彼女が、或る時感じ取った異変。
 
 数世紀経った世界の技術は急成長し、人は急速に変化した。その進化に比例して、世界の輪郭はあやふやに、曖昧になり始めた。危険な思想を持つ者が増え、純粋であってもその穢れに取り込まれて、黒くなってしまう。そんな世界の姿を見た彼女は、深刻に考えた。

「このままでは、遠からず世界は霧散してしまう……」

 彼女は、創造した世界の中では絶対の神だが、彼女の世界ではそれは大した事のない、平凡な存在であった。彼女自身も、自らが永遠でない事はとうに気付いている。
 そこで、彼女はひらめく。彼女が居なくなった世界でも、世界がそこに存在できるように——自らの意思を持ち、解れかけた世界の境界を修繕する存在を創り出せば。と。
 早速彼女は、世界を直す者を創りあげ、それを「カガリビト」と名付けた。布の端が解れないように縫い合わせる、かがり縫いになぞらえて。
 生まれたカガリビトは十二人。彼女の試算では十人のカガリビト居れば世界は十分に維持できたが、念のためと彼女は言い、二人のバックアップを付けた。
 生まれたばかりのカガリビトに、彼女は金色に輝く両手を差し出し、凛として言い放つ。

「あなた方には、光の糸と折れぬ心を与えましょう。それを使って、この素晴らしい世界を修繕するのです」

 一人ひとり、光の糸を手に取った。
 世界の中に降りようと、一番目のカガリビトが足を踏み入れた時。彼女は、こう投げかける。

「どんな時も『希望』が我らの道を照らしてくれるでしょう。たとえ私という存在が消えたとしても」

 こうして十二人のカガリビトは世界の中に降り、溶け込み、そして世界を修繕して、世界を存在させたのだ。



 ————ほんの暫くの、永遠だけだとしても。