二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: 「 僕が、守らなきゃ 」 - カガリビト ( No.3 )
日時: 2012/10/13 13:17
名前: 蟻 ◆v9jt8.IUtE (ID: yWjGmkI2)
参照: 1〜10号のカガリビトは容姿も何もかも創作。

 開かれたままの扉。イレンはよく物事を忘れる。と言うか、細かいことを気にしないのだ。たまに大変なことも忘れるんだけど。非常に大雑把というか、とにかくさばさばとした性格だと思う。
 イレンが閉めなかった扉の向こうから、朝ごはんのいい匂いが漂ってきて、食欲をかきたてられる。
 ベッドの上から飛び出して、駆け足で下へと向かう。朝の食卓によく出てくる、甘ったるいフレンチトーストの匂い。ああ、美味しそうだ。
 僕らには空腹という感覚も満腹という感覚もないのだけれど、美味しい物は美味しいわけで。こうして普通の人のように朝昼晩、何か問題がない限りは欠かせず皆で食事を摂る。
 ……今日はどうやら、僕とイレンとあと一人で、三人だけのようだけど。
 
「今日も美味しそうな朝ごはんだね! スリミー!」
「あら。ありがとう、トゥール」

僕は、イレンの横で一緒にご飯を食べている、黒髪を一つのみつあみにした女性、スリミーの、エメラルドのような、綺麗な瞳を見つめて言った。スリミーは僕の言葉に、淑やかな笑みを返してくれた。
 彼女は、いつも僕たちのお姉さんみたいな存在だ。この家で食べる料理はいつもスリミーが作ってくれる。スリミーの料理は、それはもうコック顔負けの彼女らしい、優しい味のする料理だ。

「いただきまーすっ」

席に座って、手を合わせると僕はすぐに料理に手をつけた。
 ふわり、と見るだけでも柔らかそうなフレンチトーストに手を伸ばし、噛み千切る。案の定、とても柔らかくて、心地よい感触だ。他にもサカナのバター焼きや、トマトを煮込んだ野菜たっぷりのスープ。どれも見て、匂いを嗅ぐだけでも美味しいことが分かる。口に入れたら尚更だ。

「ふー、ごちそうさまでしたあ」

 そんな美味しいな朝ごはんを、僕はあっと言う間にたいらげた。スリミーがマグカップに注いでくれた、暖かいコーヒーを片手に、僕はイレンを見た。

「む、何だよ、トゥール。私に何かついてるのか?」
「……イレンはさ、どうして彼女が人を創ったと思う?」
「さっきも言っただろう。私には、彼女の考えてる事は分からない」

溜息を吐いて、僕の質問に答えたイレンは、僕と同様にスリミーがマグカップに注いだコーヒーを飲んだ。
 ちょっとくらい、あるだろうに。

「スリミーは?」
「そうねえ……そんな事、考えた事なかったけど。人間が彼女の心に必要だったんじゃないかしら」
「彼女は、人にとっては神様だぞ?」

イレンが、怪訝そうな顔をしてスリミーに訊いた。

「予想よ、予想」

スリミーがいつもとは違う、少し悪戯っ子のような微笑を見せた。