二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 「 僕が、守らなきゃ 」 - カガリビト ( No.4 )
- 日時: 2012/10/13 13:20
- 名前: 蟻 ◆v9jt8.IUtE (ID: yWjGmkI2)
- 参照: 下の子ふたりのかけあいが好きすぎる
「今日も、つまらないなあ」
朝みたいに、ベッドに乗っかりながら水色の空を見ていた。イレンは自分のベッドに寝転がり、読書をしていた。スリミーは、朝ごはんを食べると、さっさと仕度してまた世界を修復しに行った。
「それって、幸せなことなんだよ。それともトゥールは、世界の『ヒーロー』にでもなりたいのか?」
イレンは、本に集中しながらも僕の言葉に耳を向ける。ぶっきらぼうに、皮肉を込めてイレンは言うが、僕だってそんな事は分かりきっていた。
これで、いいのだ。世界が大きな亀裂を生み出す前の、まだ平和な今で。できる事ならばもっと戻ってもいいぐらいだ。それぐらいに、世界は危ない。
だけど、僕は。僕は、僕の役目を果たしたい。
折角彼女が僕らを生み出してくれたのに、イレンと僕の二人はいつもこの家で皆を待ってる。十人の、カガリビトを。
「いつかの未来」を、十人が滅びても守れるように、僕とイレンはずっと大事に大事に置かれている。置かれているという表現は少しオーバーな気がするが、とにかく僕らは十人の次の世代を守れるように、今は傷つかないようにしているのだ。
「トゥール」
本の閉まる音と同時に、イレンが僕の方を見て微笑み、名前を呼ぶ。
「買い物の時間だ」
僕らが食べ、動き、眠っている場所は、この世界の中で一番大きく、活気の溢れた場所だそうだ。ここに来る前に、彼女が言っていた。そしてまた、こうとも言っていた。
——活気のある場所は技術が進んでいるという事。それはとても便利でいいけれど、大きく進んでいる場所は、破滅も大きく進んでいる……だ、そうだ。
つまりこの場所は、世界の中で最初に壊れていくであろう場所。だから僕らは、この街に住んで、周辺を三人程度で守っている。酷い場合は彼女も一緒に手伝う、らしい。だけど僕らは手伝わない。
「トゥール、これ持ってくれ」
「はいっ?」
いきなり呼ばれたからびっくりしたあ……。
リンゴとレモンが溢れ出るほどに入った紙袋を僕に押し付けて、イレンは自分の服のポケットを探る。何か見つけたのか、一瞬だけ表情を変えると、ポケットの中からひとつのメモを取り出した。
おそらくスリミーが書いた買い物メモだろう。毎日毎日、本当に偉いなあ、スリミーは。
「行くぞ」
「あ、うん」
メモをまたポケットにしまい、紙袋の中身を落とさないように、そしてイレンに追いつくため、慎重に、できるだけ速く歩いた。