二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: 「 僕が、守らなきゃ 」 - カガリビト ( No.8 )
日時: 2012/10/13 14:22
名前: 蟻 ◆v9jt8.IUtE (ID: yWjGmkI2)
参照: ティエさんはしっかりもの。

 ティエは、僕ら十二人のなかでも一番真面目だ。真面目すぎて、一年中仕事をしていたなんてことは少なくない。ずっと前に帰ってきた時は、スリミーに「こまめに帰ってきなさいよ」と怒られていた。それからも特に変わったとは思わないが。でも今回は、ティエにしては早い方だと思う。六ヶ月だけど。

「それにしても、ここは落ち着くねえ……」

こげ茶色のソファにもたれながら、ティエは言った。
 イレンがコーヒーの入ったマグカップを二つ持ってきて、ティエに渡す。

「はい、コーヒー」
「ありがとう、イレン」
「ええ? 僕の分はないの?」

ティエとイレンが座っているソファと対になっている、三人用のソファを占領していたアルカが驚いたような顔をする。その言葉を聞いたイレンは殺気だった顔でアルカを睨んだ。
 その殺気に怯んだアルカは、渋々とキッチンへと向かった。

「ところで、そのカゴは何だ?」

ティエの膝に乗っている、至って普通の茶色いカゴ。イレンは訝しげな視線をティエの目に向けて、問う。

「ああ——うーん、まあ、秘密」

暖かい視線をカゴに向けるティエ。質問には答えずに、ごまかすように笑った。なんか、質問内容が悪かったのだろうか。イレンは大して気にしてない様子だったので、僕も記憶の端っこに留めておくだけにした。
 
「……世界は、どうだった?」

コーヒーを飲んだ後に、イレンは訊ねる。

「ああ! もう凄かったよ! 今回はね、ここから東の方にある島国に行って来たんだ。その国は陽ノ国といって、最近までどことも交流がなかったそうだけど、技術の進歩が凄く速くってね。技術だけならこの国だって越えられると思うよ」

その赤い瞳をいっそう輝かせて、自分の大好きな世界を語る。ティエは、彼女の創ったこの世界が何よりも大好きで、彼女の創った人々のことが、僕らよりも大好きなのだ。

「技術が進歩しているってことは、そこも危ないんじゃない?」

アルカが淹れたてのコーヒーを啜り飲んで、口に出す。すると、ティエは少し悲しげに笑った。

「うん、そうなんだよ……陽ノ国は最近まで交流していなかったから、今急激に進化してきている。その分、脆弱な様でさ。あたしが何とか、ギリギリ大丈夫なところまで修復はしたけど——」
「進化が続いているってわけなのか。何人か陽ノ国に送った方へいいんじゃないか?」

深刻そうな表情をしていたイレンが、ティエの方を向いて発する。

「ああ、心配はないよ」

心配そうにしていた顔をあげて、今度はまた明るく笑う。本当に、ころころと表情が変わるなあ。

「その為にあたしは彼女に声を届けたんだから」