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二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: ポケモンメモリアル集 ( No.1 )
- 日時: 2012/08/12 11:33
- 名前: 霜歌 ◆P2rg3ouW6M (ID: 3TVgjhWp)
Ⅰ 水たまり
「育て屋さん……私の、クーちゃん……は?」
心を振り絞るようにして声を出すと、声とともに熱い塊が込み上げてきた。首の後ろが燃えるように熱く、目頭に力が入る。今にも溢れそうな何かを、私は必死に押しとどめようとした。
育て屋のおじいさんの顔を見上げると、おじいさんも額に皺を寄せて目を光らせている。そして、私の肩にごわごわとした温かい手を乗せ、震える声で言った。
「ごめんよ。おじいさんもおばあさんといっしょにポケモンドクターに診せにいったんだけどね、もう、ダメなんだよ……。よくわからない病気なんだ」
その言葉を聞いた瞬間、激しい思いが込み上げてきて、私は声をあげて泣いた。……泣きたかったのに、泣けなかった。口からは、静かな息しか出てこない。
こんなに苦しいのに、こんなにやりきれないのに。泣くことすら、私は出来ない。
おじいさんが私の頭をそっと撫でたが、私はその手を振り払った。
たとえ身長が小さくても、私はもう十二歳。
よけいな同情なんて、いらない。
そう思えば、ますます目頭が熱くなり、顔が火照ってくる。
「おじいさんのバカ……どうしてクーちゃんを見捨てるの……!」
震える唇で言うと、スカートを握り締めた手が一陣の風に拭われ、ますます冷たくなった。
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