二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: ポケモンメモリアル集 ( No.10 )
- 日時: 2012/08/18 21:08
- 名前: 霜歌 ◆P2rg3ouW6M (ID: zVt/LmGE)
クーちゃんはあの身勝手で最低なトレーナーのポケモンだったけれど、今では私のかけがえのない友達だ。朝、目が覚めた時の柔らかい草の香りや、夜、寝るときの温かい鳴き声も、すべて私の生活の一部となっている。今更クーちゃんのいない生活なんて、考えられなかった。
「絶対に、嫌!」
「なんだとぉ?」
私がわめくように大声を張り上げると、ガキ大将の顔に血が上った。頬が赤くなり、口がびくびくと動いている。その様子を見て、周りの男子たちがオロオロと騒ぎ出した。
「やべえ、〝オーバーヒート〟がくるぞ!」
「お前らうるせぇ! 帰れ!」
周囲の騒がしさにガキ大将が八つ当たりをするように怒鳴ると、言われなくても帰ります、というように、男子たちはいそいそと足早に帰っていった。
「おい、チビ。本気で言ってるのか」
「そ、そうよ」
しどろもどろにならないように短く答えると、ガキ大将も負けじと言葉を搾り出した。
「どっ、泥棒のくせに」
「だ、誰がいつ泥棒なんてしたの!」
「お前がしたじゃねーか! お、俺のクラスのポジションをとりやがって!」
クーちゃんと一緒に暮らす事で、自分の人気が戻るとでも思っているのだろうか。
そんなくだらない理由でわざわざガーメイルまで連れてきたなんて……と冷めた思いが胸に広がった。
「そんなの私の知ったこっちゃないわ。人のせいにしないでよ!」
最後の一言に突き放されたように、ガキ大将はそれ以上は言い返してこなかった。言い返そうと言葉を必死に探せば探すほど、顔がますます赤に染まっていっている。
「覚えとけよ!」
吹っ切れたように言うとガキ大将はくるりと私に背を向け、他の男子たちと同じように足早に帰っていった。
「勝った」という誇らしい思いが湧きあがり、私は得意顔でガキ大将の背中を見送る。
だいたい、自分の人気が落ちたからといって、何も私のクーちゃんをとることはないと思う。自分で新しいポケモンを捕まえて、またみんなにチヤホヤされていればいいんだ。そもそも、私とクーちゃんに人気を奪われるなんて、もともとの人気が大してなかったに決まっている。
ふっと玄関から空を見上げると、茜色の空に鱗のような雲が流れていた。それよりも離れた淡い色の空には、綿のような雲が一つ浮いている。黒い何か通ったと思えば、一羽のスバメだった。
クー? とクーちゃんが背後から私の顔を覗き込んだ。
「クーちゃんは、ずーっと私といっしょなんだもんねー」