二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: ポケモンメモリアル集 ( No.17 )
- 日時: 2012/08/20 08:58
- 名前: 霜歌 ◆P2rg3ouW6M (ID: 6zao/Ohq)
Ⅴ さよならの夕日
私がクーちゃんと初めて出会ってから、二年後の夏休み。
夏休みも終わりに差し掛かった、八月の終わりのことだった。夕方になると涼しい風が吹き、暑さで寝苦しい夜を過ごすことも少なくなった頃のこと。
「えぇ? 旅行に行くの? 一週間も?」
突然のお母さんの話に、私は心の動揺を抑えられなかった。クーちゃんは私の後ろに隠れ、顔だけをひょっこりと出し、お母さんを見つめている。
お母さんは機嫌がいいのか、微笑みながら言った。
「そうよ。あなた最近、妙に疲れたような顔してるじゃない」
毎日毎日、仲間はずれにされていれば、疲れも出る……。
夏休み中、宿題のために学校へ行っている間も、いつも悪口祭りなんだから。
にこやかに言った後、お母さんの顔が残念そうに曇る。
「でもいろんな乗り物に乗るし、ホテルにはポケモンをいっしょに連れて入れないのよ」
「じゃあクーちゃんを家においていけって言うわけ?」
また大人の勝手な都合か。
私の不愉快そうな顔を見て、お母さんは微笑んで、どこからかパンフレットを持ってきた。背を伸ばして覗き込んでみれば、広い庭のある家の写真と一緒に「育て屋のご案内」と書いてある。
「ここにポケモンを預けることが出来るの。庭はポケモンたちが住む自然を再現してあるんですって」
「ふぅん……」
まだ納得のいかない私は、低い声で答えた。
お母さんはさらに微笑む。
「ハハコモリは虫と草タイプだから草木が大好きでしょ? たまには、野生ポケモンの気分を味わらせてもいいんじゃないの?」
確かに、ずっと人間の家の中で暮らしていて、窮屈な思いもしているのかもしれない。虫ポケモンたちは、夏の暑い間、大抵は涼しい森で過ごしているというのに。最近のクーちゃんはどこか元気がないし、今がチャンスなのだろうか。
「わかった……」
「じゃ、決まりね!」
お母さんは、さっそく電話をかけ始めた。
「クーちゃん、楽しんできてね」
私がそういって頭を撫でてやると、クーちゃんは優しげに笑った。
クーちゃんの様態が悪いと連絡が入ったのは、私が旅行から戻りクーちゃんを引き取りにいこうとしていた直前だった。詳しい事情は後で話すから、とにかくすぐに来て欲しいのだと言う。
お母さんもお父さんも、仕事で留守だ。一人で行くしかない。
育て屋なんて、信じるんじゃなかった。
〜つづく〜