二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: ポケモンメモリアル集 ( No.5 )
日時: 2012/08/17 18:40
名前: 霜歌 ◆P2rg3ouW6M (ID: uT5MQLCg)

Ⅲ はじまりの夕焼け


 自分のポケモンをつれているということで私は学校のクラスでも一躍人気者になった。元々大して友だちもいなかった私の周りには、うっとおしいくらいに人が集まり、やたらとクーちゃんのことを尋ねてくる。「自分のポケモンを持っているって、どんな感じ?」「バトル出来るの?」……私は何か聞かれるたびに適当に答え、受け流していた。

 いつも一人でいた自分の部屋やお使いでも、いつもクーちゃんがそばにいる。私が何か話しかけてもクーちゃんは「クー」と鳴くだけだったけれど、それだけでほんのりと心が温かかった。

「夕焼けこやけでーまた明日ー」

 お使いの帰り道、クーちゃんとのんびりと歩きながら、私は小さく歌う。私が歌うと、クーちゃんも柔らかい瞳で笑ってくれた。
 後ろから沈みかけた太陽の光が差し込んで、背中が気持ちいい。
 昼間の猛烈な暑さはどこへ行ったのやら。風が吹き飛ばしてくれたのかな。
 私とクーちゃんの薄い影が、真っ直ぐに前へ前へと伸びていた。空を見上げれば、赤く染まった羊雲がいくつも流れている。金色の光が、太陽と混ざり合ってこぼれてきそうだった。

 そんな日々が続いたある日。

 学校が終わり、私が家で学校の宿題をやっていた時だった。
 同じクラスのガキ大将的存在の一人の男子が、ガーメイルを連れて私の家へ押し寄せてきた。一人でいることが苦手で臆病なそいつは、自分とガーメイルだけでなく、クラスの男子のほとんどを引き連れてきていた。

 いつものように適当に受け流そうと思っていた。最初は。
 ガキ大将の顔を見たとき、これはマズイことになったぞ……となんとなく悟ってしまった。こいつは人気者の座をとられたことに、不満を感じている。いつもほとんど一人でいた私の周りに、急にあれだけの人が集まるようになったのだから。
 
「な、何か用?」

 大勢の男子と話したことのない私は、どうやら緊張しているみたいだった。声が上ずっている。けれど、それを悟られたくなかったので、あえてそっけなく言った。
 私の後ろにいるクーちゃんが、小さく鳴いたのがわかった。
 ガキ大将が、自分の頭の上に止まっているガーメイルを指差し、薄笑いを浮かべる。

「お前のハハコモリ、俺のガーメイルと交換しろ」
「え?」

 コウカン? なんのことやら。

「交換だよ、交換!」
「エ……」
「だから! 取替えっこだ!」

 何を言っているのかと冷めた気持ちで聞いていたが、だんだんと背筋が寒くなっていった。クーちゃんとガーメイルを取り替える。クーちゃんではなく、私のそばにはガーメイルがいることになる。

「ク、クーちゃんを……」

 激しい思いが胸を貫いて、湧き上がってきた。

「嫌だ!」


〜つづく〜