二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 『ハリー・ポッター』二次小説〜騎士王の末裔〜 ( No.129 )
- 日時: 2014/04/04 16:31
- 名前: ウルワルス (ID: BgA0tTDI)
ローズが死んでしまうのではないかという危機感は、スコープの中でこれまでになく大きくなっていた。
もしローズが死んでしまったらとても耐えられないと、スコープは思った。ハロルドが死んだ時も悲しかったが、ローズの死はそれとは比べものにならないくらい激しい悲嘆をスコープにもたらしそうだった。スコープは、聖マンゴの癒者達が治療法を見つけ出すのをこれ以上待っていられなかった。
「明日、祖父母の家に行って古文書を漁ってみようと思います。」
スコープは、心配そうな表情を浮かべたウィーズリー夫妻に言った。
「アイサムの昔話を聞きましたよね? 古文書を調べれば、ローズを回復させるためのヒントが見つかるかもしれません。」
「私も一緒に調べにいくわ。」 ウィーズリー女史が言った。
「祖父母の家をご存知でしょうか?」
「学生の時に、一度訪れたことがあるの。」 女史が答えた。
「どういう御用向きで訪れたのですか?」
「それは言わないでおくわ。」
「何故です?」
「君の心を救うためだよ。」 ウィーズリー氏が言った。「これ以上詮索しない方がいい。」
スコープは、明日祖父母に訊いてみようと思った。
*
翌朝になっても、ローズの意識は回復しなかった。ハーマイオニーは早めに朝食を済ませ、ルシウス・マルフォイ邸の門前に「姿現し」した。門を叩くと、屋敷僕妖精が現れた。
「ハーマイオニー・ウィーズリー様でございますか?」
スコープから既に話が通っているらしく、僕妖精が言った。
「ええ。」
「古文書庫に御用がおありだとのことですね。どうぞお入りください。」
ハーマイオニーは、僕妖精の後から館に入った。
「お邪魔します。」
ハーマイオニーは居間に立ち寄り、ルシウスとナルシッサ夫妻に挨拶した。ナルシッサはあからさまに顔を背けた。
「ようこそ、ウィーズリー殿。」
ルシウスはそう言ったが、やはり、少し不快そうだった。
スコープは既に古文書庫に来て、椅子に腰かけ文書を読み込んでいた。熱心に読み込む余り、自分が来たことにも気が付いていないようだ。
『ローズ、あいつとはあんまり親しくなるなよ。』
ローズを回復させる手掛りを得るために古文書を読み込むスコープの姿に見入るうちに、ハーマイオニーは、9と4分の3番線のプラットフォームでロンが彼を指してローズに言った言葉を思い出していた。あれはもう2年近く前のことだ。
『純血なんかと結婚したら、ウィーズリーおじいちゃんが許さないぞ。』
あの時は、ローズとスコープが親友になるとは、ましてや、ローズがスコープに対して友情以上の気持ちを抱くようになるとは、思ってもみなかった(そもそも、彼がグリフィンドールに入ったことからして意外だった)。だが今では、婿に迎えるとしたらそれは彼だと、自信を持って言える。この子なら、必ず娘を幸せにしてくれる・・・
手に取っている文書の読み込みを終えたらしく、スコープが顔を上げた。
「あっ。」
スコープは慌てて立ち上がった。
「挨拶が遅れて申し訳ありません、マダム・ウィーズリー。」
礼儀正しい子だなと、いつも思う。
「お訊きしたいことがあるのですが・・」
スコープが控え目に尋ねた。
「何かしら。古代ルーン文字で書かれた文書に、分からない箇所でもあったの?」
「昨日もお訊きしたことなのですが、あなたはどういう御用向きでこの家を訪れたのですか? 祖父母に訊いても、あなたが夫君とハリー・ポッター氏と共に訪ねてきたとしか教えてくれないのです。」
「ごめんなさい、教えられないの。少なくとも、今は・・」
質問に答えるとなると、スコープの祖父がデスイーターだったことに言及せざるを得なくなる。ハーマイオニーは、家族が犯罪に関わっていたと教えることでスコープを傷つけたくなかった。だからこそ、ロンも昨日あのような態度をとったのだろう。
スコープは少し不満そうな表情を見せたが、「困らせてすみません。」と謝り、古文書の読み込みに戻った。
*
スコープは次々と文書を読み込んでいったが、めぼしい情報は昼食時になっても見つからなかった。スコープは心配する祖父母を尻目に、ウィーズリー女史と共に昼食抜きで古文書を読み続けた。
まだ目を通していない文書は残り少なくなってきた。スコープは、イグノタス・ペベレルという人物が書いた『旅行記』という文書を手に取った。彼は「イグノタス・ペベレル」という名に興味を引かれた。どこかで聞いたことのある名前だと思った。
その文書は、ペベレルが魔法学校卒業の記念旅行として1人でアフリカ大陸を周航した時の旅行記だった。寄港地の風物や、そこでの体験談が述べられていた。
途中まで読み進めたスコープは、この文書には欲しい情報は載っていないと思い、読むのをやめようとした。