二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: 『ハリー・ポッター』二次小説〜騎士王の末裔〜   第一部 ( No.31 )
日時: 2013/03/24 13:03
名前: ウルワルス (ID: MDrIaVE2)

西暦2017年12月26日、東アフリカ−−

 深夜の森林の中を、黒いマントを羽織った1人の男が歩いている。フードを目深に被っており顔はよく見えないが、歩く様子は機敏であり、若い男であることが伺われた。
 不意に男は立ち止まり、棒のような物を取り出した。
「スペシアリス・レヴェリオ」
 男がそう言いつつ棒を振ると、男の頭上に張り出した木の大枝の上に、巨大な獣が姿を現した。体型は豹に似ているが、豹よりずっと大きく体長は4メートルほどもあり、毛色は銀灰色だった。
 その獣は、低い唸り声を上げると、樹上から男に向かって飛びかかった。しかし男は、人間離れした身のこなしで獣をかわした。その際にフードが外れ、ブロンドの頭髪と端正な顔立ちが顕わになった。男は、手に持つ棒のような物を獣に向けた。
「ステューピファイ!」
 男がそう言うと棒の先から赤い閃光が閃き、獣を直撃した。さしもの巨大な獣も、10メートル余り後方に吹っ飛んだ。それでも獣は、恐ろしい唸り声を発しながら何とか起き上がった。そして、現れた時と同様に唐突に姿を消した。
 だが男にまったく慌てた様子はなかった。「レヴェリオ」と言いながら棒を振ると、再び獣の姿が現れた。獣は今にも男を鋭い爪で引き裂こうとしているところだったが、男が先程のように棒から赤い閃光を放つと、やはり後方に吹っ飛んだ。
 獣は、かなり弱っているようだった。男は倒れた獣に棒の先を向け、言った。
「ベルレディウム(Beruledium)」
 獣の動きがしばらく止まった。そして不意に起き上がり、犬が「おすわり」をするかのような体勢をとった。




            *




 クリスマス休暇はあっという間に終わった。1月1日の朝、スコープはホグワーツ特急に乗り込み、アルバスとローズを探した。2人がいるコンパートメントはじきに見つかった。まだ入ったばかりなのか、扉は閉められていなかった。不意にスコープは、新年の余興として2人を驚かせてやろうという気になった。
「サーペンソーティア(蛇出でよ)」
 スコープは2人に見つからないようコンパートメントの陰に隠れて杖を取り出し、父から習得したばかりの呪文を小声で唱えた。杖先からヨーロッパヤマカガシが現れ、するするとコンパートメントの中に入っていった。

「ヤドヴィガ、一体どうしたんだ?」
 アルバスは、ペットの梟・ヤドヴィガが急に籠の中でばたばたと暴れ始めたので、怪訝に思った。
「見て、蛇よ。」 ローズが言った。「スリザリンの連中の仕業じゃないかしら。」
「どうする? 当然ここから出さなきゃならないけど、できれば触りたくないな。」
「『浮遊術』を使えば、その点は問題ないわ。だけど、通路に出すっていうのもどうかと思う。誰かが気付かずに踏んづけたりしたら、その人は噛まれるかもしれないわよ。毒があったら大変でしょ?」

 アルバスもローズもまったく驚いた様子がないので、スコープは拍子抜けした。しかしどうやら、蛇をどう処理するのか決めかねているようだ。ここで自分が登場し、蛇を跡形もなく消したなら、2人とも驚くに違いない。生き物を消滅させるのはとても難しいことだと、父上もおっしゃっていたことだし・・

「僕なら、その蛇を跡形もなく消すことができる。」
 スコープはアルバスとローズの前に姿を現し、言った。
「やあ、スコープ。Happy new year」 アルバスが言った。
「新年おめでとう。」 ローズが言った。
「それから・・」 ローズは、何故か顔を赤らめた。
「プレゼント、ありがとう。とても嬉しかったわ・・」
「こちらこそ。君が贈ってくれた『イエス〜マグルに捧げたその生涯〜』は、とても面白かったよ。
 では、蛇を消すとしようか。」
「どうやって? 『生命体消失術』は、とても難しいのよ。」 ローズが言った。「確か、学校で習うのは6年次だったはず・・」
「まあ、見てなよ。
 ヴィペラ・イヴァネスカ(蛇よ、消えよ)」
 スコープの宣言通り、蛇は消え失せた。
「すごいじゃないか。ローズでも使えない呪文を使えるなんて。」 アルバスが言った。
「どうやって習得したの!?」 さすがにローズも驚いたようだ。
「父上が休暇中に教えてくださった。何でも、マルフォイ家に伝わる秘術だそうだよ。」
「私に教えてくれる? それとも、『秘術』ということは、余所者が習得しては駄目なのかしら。」
「別に問題ないと思うよ。蛇を出したり消したり出来るからといって、それが秘匿するほどのことだとは思えないし。」
「『出したり』ってことは、蛇をつくり出すこともできるんだね。さっきの蛇も、君の仕業かい?」 アルバスが言った。
「ああ。『新年の余興』のつもりだった。」
「『生命体生成術』も使えるの!?」 ローズは、スコープに尊敬の眼差しを向けた。
「是非ご教授をお願いしたいわ。」
「『生命体』といっても、蛇に限るけどね。」
 スコープは、さすがに照れた。