二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: 『ハリー・ポッター』二次小説〜騎士王の末裔〜   第一部 ( No.32 )
日時: 2013/03/24 13:23
名前: ウルワルス (ID: MDrIaVE2)

 入学から7ヶ月余りが経ち、季節はもう初夏だった。学年末試験が近付き、生徒達は勉強に追われるようになった。そして、夜空には蠍座が見えるようになっていた。

 天文学の授業で星空を観察しながら、スコープは幼い頃の日々を思い出した。幼い頃は、屋敷の近辺の星空をよく箒で飛んだものだ。空中高くから、箒に乗って眺める星々の美しさは、格別だった。
 「箒」といえば、スコープは週に1度のローズへの、箒での上手な飛び方のレッスンを続けていた。ローズは、見違えるように上達していた。「ローズ。」
 スコープは、隣で蠍座をスケッチし、星の名称・等級などを書き込んでいたローズに声をかけた。ほとんどの生徒は互いに私語しながら作業を進めていたから、授業中とはいえ特に問題はなかった。
「君は、星空のもとで飛んでみたいとは思わないかい?」
「空中から星を眺めるなら、周りに余計な光が無いわけだから、地上から見るよりも綺麗でしょうね。」
「では、この授業が終わったら決行しようか?」
 ローズは一瞬躊躇したが、頷いた。



            *



 ローズは、グリフィンドールの談話室でスコープを待っていた。
 それにしても、自分がここまで「不良」になるとは、入学当初には思ってもみなかった。先生に見つかれば、グリフィンドールは大幅に減点されるだろう(もっともグリフィンドールは他寮、特にスリザリンに対して大幅にリードしているから、あまり影響はないかもしれない)。それにも関わらずスコープの提案を受け入れたのは、その提案に対して非常にロマンティシズムを感じたからだった。男女が一緒に(しかも空から!)星を眺めるなんて、まるで恋人同士みたいではないか。

「待たせたね。」 スコープがやってきた。「行こう。」
 だが、玄関ホールで障害に行き当たった。ホグワーツ城に住み着いているポルターガイストのピーブズが、ホールの壁にボールを打ちつけてテニスをしていた。
「今夜は諦めた方がいいかも・・」
 大理石の階段の陰に隠れながら、ローズは小声で言った。
「いや、その必要はない。」
 スコープは自信ありげにそう言うと、ローブの中から掌サイズのボールのような物を取り出した。
「インスタント煙幕『ダークネス』だ。君の伯父上のお店の商品だよ。」
 そう言いながら、スコープは今度は蝋燭と、しなびた「手」を取り出した。ローズは悲鳴を上げそうになったが、スコープは魔法を使って蝋燭に火を点し、「手」に取り付けた。それからスコープがインスタント煙幕のスイッチを入れると、玄関ホールは瞬く間に暗黒の支配するところとなった。蝋燭に点火したはずなのに、その灯りも見えない。
「な、何だ!? どういうことだ!? 何にも見えない! こんなことは初めてだ!」
 あのピーブズが、慌てふためいている。だが、それはローズも同じだった。
「スコープ、どこにいるの!?」
「さっきから君の傍にいるよ。」 
 ローズは、スコープに手を握られるのを感じた。
「僕の方では君が見えてる。『輝きの手』があるからね。」
 スコープはローズを先導しながら言った。
「あの『手』も、WWWの商品なの?」
 スコープのひんやりとした、しなやかな手の感触を感じ、ローズはどぎまぎしながら尋ねた。
「いや。クリスマスに父上がくださった物だよ。見てくれは悪いけど、今みたいな状況ではとても便利だ。」





            *




 来年度に備えてクィディッチの練習をするというサウロス・マルフォイに付き合って、マヌイル・ノットと共に真夜中の飛行訓練場に来ていたヴァレンティン・レストレンジは、こちらに近付いてくる2つの足音を聞いた。
「まずいぞ。誰かがこっちに来る。」
 ヴァレンティンはサウロスとマヌイルに警告し、3人は箒倉庫の後ろに隠れた。やって来たのは2人のグリフィンドール生、スコーピウス・マルフォイとローズ・ウィーズリーだった。ヴァレンティンは激しい嫉妬を覚えた。
 ウィーズリーには、初対面時から惹かれていた。だからこそ、入学した最初の週に、早くも言い寄ったのだ。必ず受け入れられるという万全の自信があったが、彼女はにべも無くはねつけた。それを恨んで、初めての飛行訓練の時間に彼女を侮辱し、挙げ句の果てには箒から突き落としてしまったのだが、これがいけなかった。自分が所属するスリザリンがホグワーツ史上最大の減点の対象になったばかりか、これをきっかけにウィーズリーは自身の宿敵スコーピウスに想いを寄せるようになった。鈍感なスコーピウスは気付いていないだろうが、その手のことに経験が豊富なヴァレンティンは、魔法薬の授業などの際に、既に感づいていた。