二次創作小説(映像)※倉庫ログ

『ハリー・ポッター』二次小説〜騎士王の末裔〜   第一部 ( No.33 )
日時: 2016/03/18 00:15
名前: ウルワルス (ID: nLJuTUWz)

「どうして倉庫の戸が開いてるのかしら?」
 ウィーズリーが言った。
「大方、閉め忘れたんだろう。教師や管理人といえど、もの忘れくらいするさ。」
 スコーピウスが答えた。
「そうでなければ、誰かが僕達みたいに、箒を拝借するために開けたってことになる。どちらにせよ、心配する必要はないと思うな。」
「仮にその人達が、私達のことを先生方に密告しようと思っても、できないものね。」 ウィーズリーが言った。
 そして2人はそれぞれ箒を取り、空中高く飛び去った。最近の飛行訓練の時間(ヴァレンティン達3人にとっては「清掃時間」でしかないが*)にも思っていたことだが、ウィーズリーは飛ぶのが随分と上手くなっていた。

「ウィーズリーのやつ、『密告しようと思ってもできない』とほざいていたが、それはどうかな。」
 マヌイルが言った。
「僕は父上を呼んでくる。グリフィンドールから減点するチャンスだ。」 マヌイルは城に向かって走っていった。
 残されたヴァレンティンとサウロスは、スコーピウスとウィーズリーが飛び去った後の夜空を見上げた。
「スコーピウスのやつ、あの穢らわしい『混血』と仲良くしやがって。」 サウロスがいまいましげに言った。
「やつらの関係がこのまま発展すれば、将来、由緒正しきマルフォイ家の血筋に『穢れた血』が混じることになってしまう。そんなことには耐えられない・・」
 それを聞いて、ヴァレンティンも「そんなことには耐えられない」と思った。サウロスが言ったのとは違う意味でだが。




            *




「試験が近いとはいえ、一晩分の勉強時間を棒に振るだけの価値はあるだろ?」 スコープが言った。
「ほんとね。とっても綺麗・・」 ローズは答えた。
 2人は、満天の星々の下、澄み切った夜気を身に受けながら飛んでいた。
「僕は7月20日の夜に生まれたんだけどね、」 スコープが切り出した。「僕が生まれた時、夜空にはアンタレスが普段にも増して明るく輝いていたそうだよ。」
「アンタレスって、蠍座(Scorpius)のα星よね。」
「だから、両親は僕を『スコーピウス』と名付けたんだってさ。
 君の御両親は、どういう動機で『ローズ』と名付けたのか知ってる?」
「単にママが、薔薇(rose)の花が好きだったから、だそうよ。」
 そんな他愛もない会話をしながら、2人はしばらく飛び続けた。

「そろそろ戻ろう。明日も授業があるから、朝寝坊するわけにもいかないし。」 スコープが言った。
 ローズとしては、スコープと一緒に もう少し星空の下での飛行を楽しみたかったが、彼の言うとおりだった。急降下を始めたスコープに続いて、ローズも箒を降下させた。


            *


Side:スコープ




 ぐんぐんと降下していたスコープは、地上に4つの人影を認めた。それらの人影は確かに、自身の宿敵であるサウロス・マルフォイ、ヴァレンティン・レストレンジ、マヌイル・ノット、及びマヌイルの父親にして魔法薬学教授兼スリザリン寮監セオドール・ノットのものだった。スコープは驚きの余り「あっ」と声を上げ、思わず箒から手を放してしまった。
 スコープは地面に叩きつけられ、その際に右腕が嫌な音をたてるのを感じた。骨折したに違いない。
「スコープ!」 ローズが着陸した。「一体どうしたの!? 大丈・・」
 ローズの言葉が止まった。ノット達に気付いたらしい。
「これは、これは。」
 セオドール・ノットが、冷たい笑みを浮かべながら言った。
「スコーピウスに、模範生であるはずのミス・ウィーズリーではないか。真夜中に、しかも学校の箒を使って空中デートとは、感心できんな。グリフィンドールから、1人につき100点ずつ減点する。」
「父上、罰則はどうします?」 マヌイルが、にやにやしながら言った。
「そうだな。書き取りやトロフィー磨きでは、こやつらには生ぬるかろう。」
「ノット先生が許可するからと言って、管理人に体罰を与えさせるってのはどうです?」 サウロスが言った。
「私達は規則を破ったのだから、どんな罰であろうと受けるに値することは、分かっています・・」 不意に、ローズが言った。
「だけど、どうしても受けたくない罰があるのですが・・」
「ほう、それは何だね?」 ノットが、残酷な笑みを浮かべながら言った。
「『禁じられた森』に入ることです。本で読んだんですけど、あの森には、アクロマンチュラ、狼男、トロール、巨人など、恐ろしい生き物がたくさんいるんですよね?」
「分かった。では、君とスコーピウスには、明日の夜にでも『禁じられた森』に入ってもらおう。」 ノットが言った。
「そんな・・!」
 ローズが悲痛な声で言った。サウロスとマヌイルは、さも愉快そうに笑った。一方ヴァレンティンは、なぜか少し気の毒そうにローズを見ていた。



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