二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 『ハリー・ポッター』二次小説〜騎士王の末裔〜 第一部 ( No.36 )
- 日時: 2012/11/18 14:52
- 名前: ウルワルス (ID: e22GBZXR)
小川の畔に、背に傷を負ったユニコーンが蹲っていた。スコープは、これほどまでに美しい生き物を見たことがなかった。すらりとした体躯は純白に輝き、角と鬣は真珠色の光を放っている・・・。
「ハグリッドに知らせなきゃ。」 ローズが杖を掲げた。
その時だった。突然ユニコーンは立ち上がり、走り出そうとした。しかし、まるで透明な何かに引き裂かれたかのように、背から脇腹にかけての部位から銀色の血が迸った。ユニコーンは断末魔の嘶きを発し、地に倒れた・・・。
「そんな・・」
ローズはユニコーンに駆け寄り、跪いた。
「死んでる・・・。私達が森の入り口でぐずぐずしていなければ、助けてあげられたかもしれないのに・・・」
スコープも責任を感じながらユニコーンに近寄り、その傍らに跪くローズを見やった。彼女は泣いているらしく、両肩が小刻みに震えている。スコープは黙ってローズの両肩を抱き、立たせた。ローズはそれを振り払うことなく、身を寄せてきた。2人は身を寄せ合ったまま、ユニコーンの屍−−美しくも悲しい光景−−に、ハグリッドに合図を送ることも忘れてしばし見入っていた。
不意に、疾駆する蹄の音が聞こえてきた。スコープとローズは反射的に杖を構えた。
やって来たのは、半人半馬の生き物、ケンタウルス達だった。10人はいる。皆、背に矢筒を背負い、手には弓を持っている。
「遅かったか・・・」
ユニコーンの死体を見て、先頭を走ってきた金髪のケンタウルスが言った。それから、彼はスコープとローズに話しかけた。
「私の名はフィレンツェ。この森に住むケンタウルスだ。
君達はホグワーツの生徒ですね? こんな所で一体何をしているのです? ユニコーンが殺されたのに、君達はどうやって助かったのですか?」
「分かり切ったことではないですか、父上。」
2人が答えるより先に、フィレンツェと同じく金髪のケンタウルスが言った。こちらはまだ若い。人間に例えるなら、せいぜい17歳くらいだろうか。
「こいつらがユニコーンを殺ったに違いありません! それで説明がつきます。」
「慎め、ラバン。」 フィレンツェが言った。
「この2人はまだ『子馬』だ。ユニコーンを殺すことなどできないし、そのようなことは考えもしないだろう。」
「私達は、罰則としてこの森に入ることになったんです。」
ローズが言った。
「少し前までハグリッドと一緒でした。手負いのユニコーンを見つけるよう言われて、探していたら・・」
「ここでユニコーンを見つけました。」
スコープは後を引き継いだ。
「ハグリッド先生に知らせようと思ったら、透明な何者かに襲われたみたいにいきなり大量に出血して、そのまま死んでしまったんです。
なんで僕達が無事だったのかは分かりません。ユニコーンを襲ったのは、捕食するためだったのでしょうか・・」
「だったら、死体をそのままにしていくはずがないだろう。」
ラバンが、疑わしそうに言った。
「ハグリッドから既に聞いたかもしれませんが、ユニコーンが殺されたのは今回が初めてではありません。」
フィレンツェが言った。
「26年前にも同じことがありました。その時の犯人は、死の淵にある命を長らえさせる効能を持つ血を飲むために、ユニコーンを殺しました。しかしこの度は、どうもそれとは違うようだ・・」
「殺した後はそれっきりとは、遊びとして殺したとしか思えない。」
別のケンタウルスが、怒りに声を震わせながら言った。
「火星が明るい・・」
不意に、フィレンツェが言った。その目は、一際明るく輝く赤い星に向けられていた。
「火星が明るく輝くのは、大きな戦いの前触れです。」
「『例のあの人』の死によって、魔法戦争は終わったのではないのですか?」
ローズが言った。
「我々ケンタウルスも、当初はそう考えていました。しかし、火星の輝きは薄れるどころか、近年ますます強くなっています。これほどの長期間火星が明るく輝き続けたのは、我々の間に伝わっている限り、1例だけです。」
「それって、『カムランの戦い』に至る20数年のことですよね。」
スコープがそう言うと、ケンタウルス達は驚いたようだった。
「歴史の本に書いてありました。火星が輝き続けていたにも関わらず、人々はモルガン・ル・フェイの死により戦いは終わったと考えていたことも・・。
何だか、今と状況が似ているような・・」
「その通りです。」 フィレンツェが言った。
「だが、同じではない。『カムランの戦い』に至る時期に明るく輝いていたのは、火星だけでした。しかし近年は、アンタレスも火星に劣らぬ輝きを放っています。」
「アンタレスが一際明るく輝き始めたのは、12年前の夏からだ。」 別のケンタウルスが言った。
スコープは、はっとした。自分が生まれたのは、12年前の夏だ・・・