二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: 『ハリー・ポッター』二次小説〜騎士王の末裔〜    ( No.45 )
日時: 2012/12/03 15:52
名前: ウルワルス (ID: e22GBZXR)

 翌朝、北サマセットにあるカムランの古戦場に「姿現し」するため、アルバスはマルフォイ一家とローズと共に、庭に向かった。ちなみに、ロン伯父さんはまだ寝ていた(「ご迷惑をおかけして、本当に申し訳ありません・・」と、ローズはマルフォイ夫妻に対して何度も謝った)。
 庭に向かう途中、アルバスは玄関ホールで足を止めた。入ってくる時には気付かなかったが、壁に銀灰色の敷物のような物が掛けられていることに気付いたからだ。何となく見覚えがある物だった。
「あの、マルフォイさん・・」
 アルバスはマルフォイ氏に声をかけた。
「どうかしたかね?」
「この、壁に掛かっている物は、何ですか?」
「ああ、それはヌンドゥの毛皮だよ。少なくとも、そう言い伝えられている。」
 マルフォイ氏は答えた。
「私はそれをタンザニアで手に入れた−−スコープから聞いているかもしれないが、私は魔法省国際魔法協力部に勤めていて、外国に出張することが時々ある−−。
 タンザニアのようなアフリカの国々では、魔法の技術がヨーロッパほどには発達していない。それに加えて、あちらではマグル界の環境が悲惨な状態でね。その影響で、魔法界でも薬草が育たなくなってきていた。
 そんな中、タンザニア魔法省の要請で私が派遣された。私が現地で考案した『地下水脈呼び寄せ呪文』と『降水術』が功を奏し、タンザニアでは再び薬草が育つようになった。私が滞在していた村落の長はそれに感謝して、家宝である『ヌンドゥの毛皮』の一部をくださったというわけだ。」
「ヌンドゥって、すごく危険な生き物なんですよね?」
 ローズが言った。
「その村長さんの御先祖様は、どうやってヌンドゥの毛皮を手に入れたんでしょうか。」
「言い伝えによると、何世紀も昔、その村は近隣の森林に棲むヌンドゥによる被害に苦しめられていたそうだ。ヌンドゥは図体は巨大であるにも関わらず、誰にも気付かれずに移動して人や家畜を殺すことができたらしい。また、ヌンドゥの襲撃の前後には必ず病が流行ったとも伝わっている。
 しかし、『海の彼方』から1人の『白い肌の魔法使い』が到着してからは、状況が一変したという。彼の名は『イグノートゥ・ペーベール』といって、村の魔法使い達を組織してヌンドゥに立ち向かった。そして、激しい戦いの末にヌンドゥは退治されたそうだ。」
「そのイグノートゥ・ペーベールの子孫が、マルフォイさんにヌンドゥの毛皮を差し上げた村長、ということですか?」
 アルバスは言った。
「いや、それは違うと思うな。」
 スコープが言った。
「『海の彼方』からやって来た『白い肌の魔法使い』となれば、現地の黒人魔法使いではなく、喜望峰を回って航海してきたヨーロッパ出身の白人魔法使いに違いない。
 父上。イグノートゥ・ペーベールは、ヌンドゥを退治した後どうしたんですか?」
「ヌンドゥの毛皮の一部を剥ぎ取り、自分用のマントを作った後、再び『海の彼方』に去って行ったそうだ。」
 「マント」と聞いて、アルバスは何故この毛皮に見覚えがあるのかが分かった。この毛皮は、元来父・ハリーの所有物で、近頃は兄・ジェームズが学校での悪戯に使用している「透明マント」によく似ている。
「では、そろそろ行きましょうか。」
 マルフォイ夫人が言った。




            *



 スコープは、アルバスと共に父に「付き添い姿現し」をしてもらい、ローズとナターシャは母にしてもらった。
 カムランの古戦場は、見渡す限りに広がる平原で、花もたくさん咲いていた。魔法族にとっては重要な史跡であるため、厳重な保護呪文がかけられており、マグルには位置探知が不可能になっている。なお、マグルは「カムランの戦い」に参加しておらず、この戦いのことは噂で聞き知っただけであるため、マグルにとって「カムラン」は伝説上の土地に過ぎない。
 スコープにとってカムランを訪れたのは今日が初めてだったが、何故か以前にも来たことがある気がしてならなかった。スコープは不思議な感慨を抱きながら、辺りを見渡した。平原のそこかしこで、魔法族の家族が休暇を楽しんでいる。100メートル程前方には、「カムランの戦い」の戦死者の供養のために築かれた塚山があり、その傍らに魔法史博物館があった。