二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 『ハリー・ポッター』二次小説〜騎士王の末裔〜 ( No.46 )
- 日時: 2012/12/21 14:17
- 名前: ウルワルス (ID: e22GBZXR)
スコープ達は、まず博物館に入った。館内では、カムランの戦いの前後の時代の事物ばかりか、ブリテン魔法界の歴史全体が扱われていた。スコープとローズは大いに楽しんだが、アルバスとナターシャは少し退屈そうだった。
「全体として、マグル史との関連性についての言及が少なすぎると思わないかい?」
出口に近い最後の展示物を眺めながら、スコープはローズに言った。
「これまでの歴史観は、『魔法界の発展にはマグル界からの影響はほとんど無い』という立場に基づいているからでしょうね。」
ローズは答えた。
「だけど実際には、魔法界はマグル界と無関係ではいられなかった。中世から近世初頭にかけての『魔女狩り』みたいに、魔法界にとっては迷惑千万な場合もあったけど、例えばヨーロッパとアメリカのような、世界の各地域の魔法界の繋がりの緊密化は、『大発見時代』に端を発するマグルによる『グローバル化』に多くを負っていると、僕は考えるね。」
「実は私も、歴史観の問題に限らず魔法族はマグルのことをもっと重視すべきだと思ってるの。
例えば、私達魔法族の主要な意思疎通手段は梟便じゃない? だけど今時のマグルは、『スマートフォン』っていう小さな携帯型の装置を使って、いつでもどこでも瞬時に連絡を取り合うそうよ。私のママは両親−−つまり、私の母方の祖父母−−との連絡のために1つ持ってて、私も使わせてもらったことがあるけど、本当に便利なの。伝えたいことを、口頭でも文字でも伝達できるんだから・・」
「ホグワーツ特急にしても、汽車ではなく『リニアモーターカー』とやらを使った方が、時間短縮になるし環境にも良いんだろうね・・」
「私達魔法族がマグルの利器を取り入れるだけでなく、私達の魔法をマグルのために役立てることも必要だと思うの。そうすることで、魔法族とマグルは互いの長所を生かし、よりよい世界を築けるはずよ。」
「いっそのこと、魔法界とマグル界が一つになればいいのにね・・」
*
アルバスとナターシャは、いきいきと会話を交わすスコープとローズを、後方から見ていた。
「アルバスさん。」
「何だい?」
「私のお兄様とローズさんって、すごくお似合いだと思いません? 2人とも知的ですし、興味や関心の対象が似通っているように感じられるんです。」
「そう言われると、確かにそうだね・・」
今までは特に意識してこなかったが、アルバスは自分の親友と従姉妹が互いをどのように思っているのかについて、考えてみた。
アルバスの目には、2人が互いを異性として意識しているようには見えなかった。先学期、スコープがローズを「夜の空中デート」に誘ったことが明らかになった時には、グリフィンドールの同級生であるラウル・アンダーソン、ジム・カーペンターなどは、スコープはローズのことが異性として好きに違いないと思ったようだった。しかしそう訊かれたスコープは、まったく怪しさを感じさせずに否定したし、アルバスには2人の関係が親友以上のものであるとは思えなかった。
*
博物館から出て昼食を食べると、スコープはアルバス、ローズと共に、食後のひとときにのんびりとくつろいでいる家族を残して、塚山に登った。登るにつれて、最初にスコープが感じたデジャヴが甦ってきた。
頂上には巨大な石碑があり、一面に古代ルーン文字が刻まれていた。
「何て書いてあるんだろう?」 アルバスが言った。
「刻まれているのは、すべて人名だよ。戦死者の名前だろうね。」
スコープは言った。
「どうして読めるの!? 古代ルーン文字を勉強するのは、3年次からのはずよ・・」
ローズが驚いて言った。
「ホグワーツに入学するまでに、独学で勉強していたんだ。僕の将来の夢は魔法史家になることで、そのためには古代ルーン文字くらい すらすら読めなくてはならないからね。」
「スコープ。あなたって、本当にすごいわ・・」
ローズはスコープに尊敬の眼差しを向けた。
「ローズ、もしかして君・・!」
今度はアルバスが驚いたように言った。
「どうかした? アル。」 ローズは尋ねた。
「あ、いや。何でもない・・」
何故かアルバスは、嬉しそうだった。
しかし、スコープにはアルバスの発言に不自然さを感じる精神的余裕はなかった。石碑を見つめるうち、スコープは自分でも説明のつかない衝動に駆られ、碑の表面に手を置いた。その時、厳かな声が聞こえてきた。
「己が何者であるかを思い出せ、スコーピウス・ヒュペリオン・マルフォイ・・我らの犠牲を忘れるな・・」