二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: 『ハリー・ポッター』二次小説〜騎士王の末裔〜    ( No.57 )
日時: 2012/12/29 18:32
名前: ウルワルス (ID: fS.QmYjo)

 暗くなるころには、列車はホグズミード駅に到着した。

「イッチ年生はこっち・・イッチ年生はこっちだ・・」
 スコープ、アルバス、ローズがフォームに降り立つと、懐かしい声が聞こえてきた。しかし、その声には元気がなかった。
「ハグリッド、大丈夫?」
 3人は、1年生を集めている声の主、「禁じられた森」の森番兼魔法生物飼育学教授、ルビウス・ハグリッドに近づき、ローズが尋ねた。ハグリッドは巨大なマスクを着用していた。
「久しぶりだな。アル、ローズ、スコープ。
 夏の間に、ちょっと体調を崩しただけだ。なんともねえ・・」
 そう言いつつも、ハグリッドはよろめいた。アルバスとローズが支えようとしたが、2人ともつられてよろけた。
「とても大丈夫とは思えないけど。」
 アルバスがそう言ったが、
「1年生はみんな集まったようだな。俺はもう行かねばならん。お前さん達も、急ぐといい。
 ああ、そうだ。スコープ、ジェレイントは元気か?」
「ええ。
 先生のペットは? バックビークは元気にしてますか?」 
「・・バックビークは、つい1週間前に死んだ。」
「そんな!」
 ローズが悲痛な声を上げた。
「仕方ねえ。年だったからな・・」
「1年前* はあんなに元気だったのに・・」
 ローズは納得できないようだった。
「さあ、もう行くんだ。俺も行かねばならん。1年生がまちくたびれとる・・」
 ハグリッドは1年生達を連れて、行ってしまった。その後ろ姿は、どこかふらついているように見えた。
「きっとハグリッドは、バックビークを亡くした悲しみのあまり体調を崩しちゃったんだよ。可哀そうに・・」
 アルバスが言った。スコープも同感だった。
「僕も、ジェレイントが死んだら、2日間くらい何も食べれないだろうな。」
 2人は、馬車乗り場に向かって歩き出した。
「どうした? ローズ。」
 スコープは振り返って尋ねた。ローズは、立ち止まって何やら考え込んでいるようだった。その視線の先には、遠くに見える「禁じられた森」があった。
「・・なんでもないわ。ちょっとぼうっとしてただけ・・」
「君らしくないね。」
 3人は連れ立って歩き始めた。



            * 



「みなさんにお知らせがあります。」
 新入生の組分け、歓迎会が終わり、みんながお休みムードになっていたところ、フィリウス・フリットウィック校長が深刻な口調で宣言した。
「これまでも学期の最初に言ってきたことではありますが、『禁じられた森』には絶対に入らないように。今年になってからというもの、森では様々な異変が生じています。具体的には、これまでにユニコーンが2頭、アクロマンチュラが14匹殺されており、成獣も含めた72人のケンタウルスが原因不明の病に苦しんでいます。ケンタウルスの子供のうち5人が、既にその病のため亡くなっています。
 ユニコーンは禁じられた森に棲息する他のいかなる生き物よりも動きが素早く、アクロマンチュラを襲うような生き物はいまだ森で発見されておらず、医学に優れるケンタウルスが原因不明の病に苦しめられていることからも、これらがいかに懸念すべきことかということがお分かりいただけるでしょう。」
 生徒達はシーンと静まり返っていた。「お休みムード」はすっかり消え去っていた。1年生達は、入学早々にこのような話を聞かされ、随分と怯えているように見えた。スリザリン・テーブルでは、サウロス・マルフォイらが薄ら笑いを浮かべていた。
「魔法生物飼育学の授業は、これまでは森の近辺で行われており、時には森の中で行われることもありましたが、生徒達の安全を期して、それに代わる授業場所を担当教授と検討中であります。」
 これには、生徒の一部(主にスリザリン生)から控えめな歓声が上がった。ちなみに、当の担当教授のハグリッドは欠席していた。余程体調が悪いのだろう。

「僕達が夏休みを楽しんでいる間、諸々の事件は解決されるどころか、より深刻化してたってわけだね。」
 校長先生の話が終わり、グリフィンドール塔に向かう途中で、アルバスが言った。
「明日、授業が終わったらハグリッドのところに行こうと思うの。」
 ローズが言った。
「生徒と同じようにハグリッドも森に入らないよう、警告しないと。」
「ハグリッド先生は、それくらい分かってると思うよ。」
 スコープは言った。
「だけど確かに、先生の小屋、じゃなくて家を訪れる必要はあるだろうね。先生は大切なペットを亡くしてショックを受けてるから、僕達が力になってあげないと。先生は生き物がお好きだから、久しぶりにジェレイントを見ることで少しは元気になるかもしれない。」
「・・優しいのね、スコープ。」
 ローズはそう言い、アルバスが「ヒュウ」と口笛を吹いた。






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