二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: 『ハリー・ポッター』二次小説〜騎士王の末裔〜    ( No.61 )
日時: 2016/03/18 22:33
名前: ウルワルス (ID: nLJuTUWz)

 「似愛薬」を調合する日は、魔法薬の直前に魔法史の授業があった。授業内容は、主に「闇の王子」モルドレッドについてだった。

「・・・近親相姦によって生まれたためか、このモルドレッドという人物には異常な性癖がありまして。彼には大蛇を生成・消失するという能力が備わっていたのですが、自分が作り出した大蛇に捕虜や犯罪者を食い殺させることがよくあったそうです。その様子を眺める時、常に彼は狂ったように高笑いをしていたといいます・・・」
 ビンズ先生は、いつもの一本調子で授業を進めていた。スコープ、アルバス、ローズ以外は、クラス全員が眠り込むか放心状態になるかしていた。モルドレッドのような、良くも悪くも歴史の展開に大きな役割を果たした、興味深い人物に関する話も、ビンズ先生にかかると とてつもなく退屈に思えるのだった。
 スコープとアルバスは、ジェームズが貸してくれた透明マントについて小声で話していた。
「この透明マントと、君の屋敷の玄関ホールに飾ってあった『ヌンドゥの毛皮』の色は、よく似ていると思わないかい?」
 アルバスが言った。
「君のお父さんは、イグノートゥ・ペーベールという魔法使いがヌンドゥの毛皮でマントを作ったっておっしゃってたよね? このマントは先祖代々我が家に伝えられてきた物だと僕の父さんは言ってたんだけど、もしかしたらイグノートゥはポッター家の先祖で、これはもともとヌンドゥの毛皮だったのかもしれない。」
「だけど、父上が話してくれたのは所詮伝説に過ぎない。あれがヌンドゥの毛皮だという証拠はどこにもないよ。村長が父上への土産の箔付けのために、あの話をでっちあげた可能性もある。イグノートゥ・ペーベールなんて魔法使いは、今まで読んだどの本にも載っていなかったし。」
「私はスコープが正しいと思うわ。」
 ローズが口をはさんだ。
「それに、『幻の動物とその生息地』に書いてあるように、透明マントは大抵の場合デミガイズの毛皮から作られるのよ。ヌンドゥのような強大な魔力を持つ生き物の毛皮に透明術をかけようとしても、上手くかからないでしょうしね。」
 ローズはそれだけ言うと、魔法史の教科書に目を戻した。

 ローズが見ていたのは、教科書に載っているモルドレッドの肖像画だった。モルドレッドの顔は青白い細面で、髪は色素の薄いブロンド、目は薄い青色だった。ローズは、誰かに似ていると思った。結局魔法史の授業中は誰に似ているのか分からなかったが、その癖、その「誰か」は自分にとって身近な人物だという気がしてならなかった。



            *


 魔法史の授業が終わると、スコープは透明マントで包まれたジェレイントのケースを、怪しく見えないようマントの中でかかえながら、魔法薬の教室に向かった。

「誠に申し訳ないことに、」
 授業が始まると、ノットはいきなりこのように切り出した。
「『似愛薬』の調合に必要な闘蛇(とうだ)の表皮を調達するのを、すっかり失念してしまってね。本来なら、緊急に予定を変更しなければならないところだ。」
 スコープは嫌な予感がした。
「しかし、一部の生徒が教えてくれたのだが、」
 教室の前方の席に座っていたサウロスが、アルバス、ローズと共に最後方のテーブルに着いているスコープの方を振り返り、にやりと笑った。
「この中に、闘蛇を持ち込んでいる者がいると聞いた。」
『大丈夫だ・・ジェレイントは、透明マントで見えなくなっているんだ・・ノットに詰問されても、白を切り続ければいい・・』
 スコープは自分に言い聞かせ、 「一体誰が持ち込んだんだろう?」と思っているような表情を浮かべようと努めた。
「生徒が学校に梟・鼠・猫・ヒキガエル以外の生き物を持ち込むことは、基本的に禁止されている。ましてや、闘蛇のような危険な生き物であればなおさらだ。恐らく縮小呪文でもかけているのだろうが、その闘蛇が誰かを噛み殺さないかは飼い主の意思次第だ。危険であることに変わりはない。学校の規則を歯牙にもかけない悪童の意思など、当てにできるはずもないからだ。」
「まったく、おっしゃる通りです。」
 サウロスが調子に乗って発言した。
「実は、」 ノットが続けた。「このことを教えてくれたのは、今発言したミスター・サウロス・マルフォイ、及びミスター・レストレンジと我が子マヌイルの3名だ。皆の安全を案じての、立派な行為である。よって、1人につき50点をスリザリンに与える。」
 教室の前半分を占めるスリザリン生達が歓声を上げた。
「さて、闘蛇を持ち込んだ生徒についてだが、その者は私がこの場で闘蛇を没収して殺し、その表皮を『似愛薬』の調合のため皆に提供したとしても、文句は言えんぞ。」
 ノットは突然杖を抜いた。
「アクシオ・バトルサーペント(闘蛇よ、来い)!」