二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: 『ハリー・ポッター』二次小説〜騎士王の末裔〜    ( No.63 )
日時: 2014/05/18 15:04
名前: ウルワルス (ID: O0NjrVt8)

 2人は教室の扉を僅かに開け、室内を覗き見た。その間にも、ノットがスコープ、アルバス、ローズの「罪状」を述べ、グリフィンドールから合計200点減点するのが聞こえた。ここまで聞けば、聡明な2人が状況を把握するには充分だった。
「さて、僕達はどうするべきか?」
 ルイスが囁いた。その時、教室内ではスコープとノットが互いに対して杖を向けたところだった。
「無論、教師の横暴に抗するかわいい後輩の手助けをしなくてはならない。」
 ジェームズは言った。
「では・・」
「ああ。『ウィーズリーの暴れバンバン花火』の威力を、ノットめに見せつけてやる。」
 2人はローブの中から様々な種類の花火を取り出し、次々と杖で点火した。


 何重もの爆発音がしたかと思うと、薬学教室内はたちまちのうちに「炎の祭典」と化した。
「この状況をどう活かすかはスコープ次第だ。僕達はずらかろう!」
 ジェームズはルイスに呼び掛け、2人はとんずらした。




            *




 スコープは、ノットと向かい合いながらも呪いを放つことができないでいた。「腐っても教師」であるノットよりも先に、相手に呪いを命中させることができるとは思えなかった。
『ローズかアルが、ノットが僕に呪いをかける隙を衝いてやつを攻撃してくれれば・・』
 その時、救いがもたらされた。突如として立て続けに爆発音が聞こえたと思うと、火花で出来たドラゴンやらキメラやらペガサスやらが、或いは空中にやはり火花で書かれた悪口雑言の数々が、薬学教室を埋め尽くした。さらに、教室の前方に集中して置かれていた様々な引火性の物質が次々と爆発し、飛び散った有害な液体がスリザリン生達に降りかかった。
 ノットは完全にスコープから注意をそらし、杖から水を放出して消火活動に専念していたが、その左手はいまだにジェレイントの角をしっかりと握っていた。
「フィニート・インカンターテム(呪文よ、終われ)!」
 スコープの杖から放たれた閃光が、ジェレイントに命中した。ジェレイントにかけられていた縮小呪文が解除され、見る見るうちに2メートルを超す巨体へと戻っていった。その過程で、それまで角を掴んでいたノットは吹っ飛ばされ、杖を取り落した。
 ジェレイントは、病身とは思えない敏捷さでノットに襲い掛かった。ノットは必死で抵抗していたが、杖無しでは如何ともし難かった。
 ふと、スコープは誰かが火花をものともせずに、ノットの喉を噛み裂こうとしているジェレイントに対して杖を向けるのを目にした。ヴァレンティンだった(サウロス、マヌイルを始めスリザリン生の多くは、教室が火花でいっぱいになった直後に逃げ出していた)。
「ヴァレンティン、お前などにこの喜劇を邪魔させはしない・・」
 スコープは、自分の中で今まで眠っていた何かが目覚めつつあるのを感じながら、独り言ちた。
「エヴァーテ・スタティム(宙を踊れ)!」
 スコープは後方からヴァレンティンを狙い撃ちした。呪文の閃光が命中すると、ヴァレンティンは空中を飛ばされ黒板に激突してのびた。
 ヴァレンティンの助けを失ったノットは、喉元へと迫りくるジェレイントの咢(あぎと)に対し、右腕を上げて防ごうとした。しかし、死の瞬間は何秒後かに延ばされたものの、右腕はジェレイントの毒牙に噛み裂かれた。ノットが絶叫し、鮮血が飛び散った。それを目にした刹那、スコープの中で何かが目覚めた−−−


            *


「スコープ、やり過ぎよ! ジェレイントを止めないと!」
 ローズは、奇妙に歪んだ表情を浮かべて自らの呪文が引き起こした惨劇を見つめるスコープに対し、相変わらず派手な音を立てている花火にかき消されないよう大声で言った。
「クックック・・」
「・・スコープ?」
 スコープは、歪んだ表情を通り越して今や酷虐な笑みを浮かべていた。
「フフフフ・・・フハハハハハハハ!」
 スコープは、狂ったように高笑いした。

 ローズは今こそ、魔法史の授業で感じた疑問の答えがはっきりと分かった。「闇の王子」モルドレッド、蛇が人を食い殺す様を高笑いしながら眺めていたという狂人モルドレッドが、誰に似ているか。その「誰か」とは紛れもなく、彼女の親友にして想い人であるスコーピウス・ヒュペリオン・マルフォイその人だった。

「スコープ・・」
 こんなスコープは、見ていたくなかった。ローズの知っているスコープは、さっぱりとしていて、親切で、知的で、紳士的な少年だった。このままでは、スコープは永久に「壊れて」しまうかもしれない。彼女の声も、永久に届かなくなってしまう・・・

「ペトリフィカス・トタルス(石になれ)!」
 ローズは杖を取り出し、今度こそノットの喉を噛み裂こうとしていたジェレイントに対して、「全身金縛り術」を放った。