二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: 『ハリー・ポッター』二次小説〜騎士王の末裔〜    ( No.72 )
日時: 2013/01/02 21:00
名前: ウルワルス (ID: e22GBZXR)

 実際に対戦してみると、サウロスの箒メテオライトのスピードは驚異ならぬ脅威だった。

「フリントがスコーピウスに向かっていきます! しかしスコーピウスは華麗な箒さばきで難なくかわし、ドミニクへパス! ドミニクはニコルソンをぬき、クアッフルはポッターへ! 速い速い、フリントもニコルソンも追いつくことが出来ない! ブラッジャーも軽く避けて、そのままゴー・・
 ああ、畜生! サウロス・マルフォイが・・」
 こんな調子で、いいところまでいっても、結局サウロスの、というよりメテオライトのスピードの前に、クアッフルを奪われてしまうのだった。それでも、スコープが先制点を決めた後も、アルバスとドミニクがそれぞれ1回ずつ得点できたため、グリフィンドールの攻撃時はまだましだった。
 スリザリンの攻撃時は、完全にサウロスの独壇場だった。試合開始後30分の時点で、90対30と、スリザリンは大幅にリードしていた。観客席のスリザリン側は、今や興奮と歓喜の坩堝にあり、「サウロス」コールが始まっていた。これまでの6年間、スリザリンはグリフィンドールに敗れ続けていたため、無理もなかったが。
「素敵よ、サウロス!」
 「サウロス」コールの中から、マリーゴールド・ウルクハートの癇に障るキーキー声が聞こえた。

「だから言ったではないか。」
 教員専用席では、薄ら笑いを浮かべたセオドール・ノットが、苦い顔をしたネビル・ロングボトムに語りかけていた。
「『今のスリザリンが相手では、やつが有終の美を飾るのは難しい』とな。」

 サウロスは完全に調子付いていた。彼は10回目のゴールを決めた直後、自身へのコールを繰り返すスリザリン席に向けて右腕を伸ばし親指を立ててみせた。かと思うと、今度は腕をグリフィンドール・チームの方に伸ばし、親指を下に向けた。
「あの野郎、大して上手くない癖に! いい箒があるからって調子に乗りやがって!」
 実況のルイスは、最早中立を装おうともしなかった。
「ジェームズがスニッチを見つけさえすれば!」

 その時、スコープは見た。ジェームズが見つけるべきスニッチを、というわけではない。彼が見たのは、今現在は静止しているサウロスのメテオライトの尾部から、数本の枝がパラパラと落下していく様子だった。
『そういえば、あいつの箒は「試作段階」だったな・・』
 試作段階ということは、まだ万全な安全対策は施されていないに違いない。過度な負荷が加われば、完全に損壊するということもありえる。スリザリン・チームがメテオライトを失えば、こっちのものだ。
 では、どうやってそこまで追い込むか。それについて、スコープはただちに妙案を思いついた。


「アンダーソン先輩。」
 スコープは、キャプテン兼ビーターのハロルド・アンダーソンのもとまで飛んで行った。ハロルドは、ちょうどサウロス目がけてブラッジャーを打ち込んだところだった。サウロスは直前まで気付かなかったが、メテオライトの御陰で辛くも逃れた。
「ウッド先生にタイムを要求してほしいのですが。」

 ハロルドがタイムをとり、スコープは集まってきたチームメイトに自分の作戦を話した。
「果たして、そんなに上手くいくものかな・・」
 ハロルドやヘンリー・ウッドは懐疑的だった。
「スコープがホグワーツでクィディッチをするのは、今日が最後なんだよ。スコープの思う通りにやらせてあげてもいいんじゃないかな。」
 ジェームズが助け船を出してくれた。
「それにどのみち、150点差をつけられるまでに僕がスニッチをとれば済む話だ。」
「・・いいだろう。」
 ハロルドの許可が下りた。


 試合が再開された。先程サウロスが得点していたので、グリフィンドールからのスタートだった。スコープはクアッフルを手に、フィールドを囲む、木杭がめぐらされた狭い空間* へと向かった。サウロスがついてきた。
 スコープは、杭の間を敏捷な動きで飛び回った。ミラージュスウィフトの機動性は、障害物だらけのこの空間では最大限に発揮された。
 一方サウロスは、あちこちにめぐらされている杭を避けるのに苦労していた。メテオライトのスピードは圧倒的だったが、そのぶんブレーキをかけにくく、この状況ではかえって足枷となっていた。
 これこそが、メテオライトに過重負荷を強いて戦線離脱させるためにスコープが考えた作戦だった。
 そうこうするうちに、残る2人の敵チェイサー、フリントとニコルソンがサウロスに加勢しに来た。前方からフリントが、右方からニコルソンが、後方からサウロスが迫ってきた。左方は壁で、真上にはちょうど杭が位置していた。








* 映画『秘密の部屋』のクィディッチのシーンで、ハリーとドラコがスニッチをめぐってレースしてた場所。