二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: 『ハリー・ポッター』二次小説〜騎士王の末裔〜    ( No.76 )
日時: 2013/01/20 14:31
名前: ウルワルス (ID: e22GBZXR)

 翌日、スコープはダイアゴン横丁のオリヴァンダー杖店に向かった。しかし、何度試しても自分に合う杖が見つからなかった。
「退学処分になった者に相応しい杖など無いということなんでしょうか。」
 スコープは言った。オリヴァンダー氏は難しい顔をしていたが、不意にはっとしたような表情を浮かべ、店の奥に引っ込んだ。間もなくオリヴァンダーは、いかにも由緒ありげな年代物のケースを持って戻ってきた。
「この杖は、かの『聖杯の戦士』ギャラハッドの物だったと伝えられておる。」
 オリヴァンダーはケースから杖を取り出して言った。その杖には、銀箔が全体に貼り付けられていた。
「魔法史で勉強したことと思うが、ギャラハッドは闇の魔女モルガン・ル・フェイを激しい一騎打ちの末討ち取り、自らも致命傷を負った。
 ここからが我が家に伝わる伝説なのだが、死の間際に彼はこの杖を、当時から杖作りとして有名だった我が先祖に託したのだという。自分と同じような運命を背負った魔法使いがこの杖を使って功業を成し遂げる日が、いつか訪れるであろうという言葉を遺して・・
 もっとも、この伝説には何の信憑性もない。私は若い頃この伝説の信憑性を確かめるべくコルベニック史料館で調査を行ったのだが、ギャラハッドが死に際してそのような言動をとったと記録している史料は見つからなかった。」
「ギャラハッドは多くの人に看取られて死んでいったそうですから、彼がそのような重大で予言めいた言動をとったのであれば、当然記録されるでしょうね。」
 スコープは言った。
「しかも、直前呪文を調べたところ何の反応もなかった。つまりこの杖は、古いにも関わらずまだ誰にも使われたことがないのだろう。」
 オリヴァンダーが言った。
「さて、前置きが長くなってしまったが、この杖を試してごらん・・」
 スコープは杖を手に取ると、杖が熱を帯びて手が温かくなるのを感じた。次の瞬間、杖先から火花が散ったと思うと、目の眩むような金色の閃光が迸った。同時に、断末魔の絶叫と思しき女性の恐ろしげな叫び声が、微かに聞こえた。
「今のは一体・・・この子の手に触れることで、杖が直前呪文を思い出したとでもいうのだろうか・・・」
 オリヴァンダーは驚きを隠せないようだった。
 スコープは、まさにこの杖だと思った。
「この杖は僕に合っていると思います。お代はいくらですか?」
「お代はいりません。」
「え? どうして・・」
「その杖は元々売り物ではない。それに、もしかすると君は・・」
「僕が、『ギャラハッドと同じ運命を背負った魔法使い』だとでもおっしゃるのですか? ありえませんよ。あの伝説には何の信憑性もないと、あなたもそうおっしゃってたじゃありませんか。僕としても、魔法史家を志す以上、史料に記録されていない事柄を信じることは出来ません。」
 スコープは一気に言った。
「いずれ分かりましょう・・」
 オリヴァンダーはそう言って、やはり代金を受け取ろうとはしなかった。





           *





 翌日、ホグワーツから手紙が送られてきた。手紙を運んできたのは、アルバスのペットの梟・ヤドヴィガだった。





「スコープへ

 

 ボーバトンへの編入が決まったそうだね。おめでとう! もっとも僕達としては、君がホグワーツに復学できれば何よりだと思ってはいるけど・・・
 ところで、ホグワーツでは明日からクリスマス休暇が始まる。夏休みには君のところでお世話になったから、この冬は逆に君を我が家に招待しようと思うんだけど、どうかな? もちろん、ローズも来るよ。
 ナターシャも、是非一緒にどうぞ。リリーが会いたがってる。
 それから、他に2人の客人が来ることになってる。君に会いたいんだってさ。その2人が誰かは、来てからのお楽しみ。



                           アルバスより」 





            *





 12月24日、スコープと妹のナターシャはフルーパウダーを使って、ロンドン、グリモールド・プレイス12番地のポッター家に向かった。

「スコープ!」
 スコープが暖炉から出るやいなや、誰かが抱きついてきた。
「久しぶりね。元気だった?」
 体を離してから、ローズが言った。
「この通り、ぴんぴんしてるよ。
 ああ、そうだ。毎日手紙を送ってくれてありがとう。本当に嬉しかったよ。」
「あんなの、何でもないわ。でもあなたがそう言ってくれて、私も本当に嬉しい・・」
「お2人さん。」
 ジェームズが にやにやしながら言った。
「感動の再会の最中に悪いが、後ろがつかえてるよ。」
「え、あ。ごめんなさい、ナターシャ・・」
 ローズは慌てて脇にどき、スコープも倣った。暖炉から魔法の車椅子* に乗ったナターシャが出て来た。
「久しぶりね、ナターシャ!」
 リリーがナターシャのもとに駆け寄った。







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