二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: 『ハリー・ポッター』二次小説〜騎士王の末裔〜    ( No.79 )
日時: 2013/01/27 16:18
名前: ウルワルス (ID: e22GBZXR)

第14章  それぞれの思い


 



 翌日はクリスマスだった。
 マルフォイ兄妹、ポッター兄妹、ローズが居間に集まってクリスマス・プレゼントを交換していた時、一騒動が持ち上がった。ジェームズが、両親(ポッター夫妻)からアルバスへのプレゼントの中身をすり替えていたらしく、プレゼントの包みに入っていたクリームサンド・クラッカーを口にした途端、アルバスは孔雀に変身した。
「完璧だな。」
 ジェームズは嬉しげに言った。
「ピーコックリームをWWWの商品とすることには、もう何の問題もないだろう。」
 アルバス-孔雀は怒ってジェームズに跳びかかったが、ジェームズは的を逃さないシーカーの技で孔雀の首根っこを掴んだ。アルバス-孔雀はバタバタと暴れ、美しい羽根が飛び散った。
「ジェームズさん。アルバスさんを放してあげて!」
 ナターシャが言った。ジェームズが孔雀を放すと、ナターシャは車椅子を孔雀に近付け、その体を撫でた。
「とても綺麗ですよ、アルバスさん。」
 アルバス-孔雀の方でも、青い目玉模様のある羽根を扇状に開き、ナターシャに体を擦り寄せた。ジェームズに対する怒りは早くも消えてしまったようだった。
「我が弟ながら、おめでたいやつだな。」
 ジェームズが言った。
「休暇中はその姿のままでいるかい?」
 孔雀は、特に不満そうな様子は見せなかった。





 アルバスとはこういう訳で会話できなかったものの、スコープはポッター家での数日間を楽しく過ごした。しかし、ボーバトンに向かう日が近付くにつれ、スコープは次第に憂鬱になってきた。
 言語や習慣を異にする場所に、上手く適応できるのだろうか?
 ボーバトンで同級生となる生徒達の友人関係は既に固まっているだろう。途中編入して、新しい友人が作れるのだろうか?
 何より辛いのは、ローズ、アルバスと別れねばならないことだった。イースター休暇にはまた会えるだろうし、その約束も既に交わしていたが、一緒に過ごせるのは所詮1週間程度に過ぎない。彼らと共に過ごす時間が温かいものであればある程、別れはより辛いものとなるのだ。


 この休暇中にポッター家で過ごす最後の夜、居間にてスコープは出来るだけ明るく振る舞おうと努めていた。自分の憂鬱な気持ちを、少しでも紛らわしたかったからだ。ローズが明らかに沈みがちだったので、彼女を元気づけたいという動機もあった。
「ローズ、君はヴィーラを知っているかい?」
 スコープはローズに尋ねた。
 ボーバトンが位置する南仏にはヴィーラが多いらしく、編入試験ではヴィーラに関する問題も出た。
「普段は、ただその場にいるだけで間抜けな男性を誘惑できるほど美しいけど、怒った時には獰猛な半鳥人のような姿になるんでしょう?」
 ローズが答えた。
「ビクトワールの曾おばあさんは、ヴィーラだったそうよ。」
 リリーが言った。
「そうか。それじゃ、ビクトワール先輩が美人なのも当然だね。」
 スコープは言った。
「それにしても、あんな美女とお付き合いできるなんてテディは幸せ者だね・・」
「余談だが、ビクトワールのお母さんの母校は、君が明後日から行くことになってるボーバトンなんだよ。」
 ポッター氏がスコープに言った。
「ボーバトンには、美少女がうじゃうじゃいるそうだよ。」
 ジェームズが言った。
「期待が持てるじゃないか、スコープ。」
「編入試験のためボーバトンに行った時、何人かの女生徒とすれ違ったんだけど、確かに皆かわいかったですね。」
 スコープはそう言ったが、突然足に痛みを感じた。それまでナターシャの傍に蹲り彼女の手で優しく撫でられていたアルバス-孔雀が、スコープの足をつついていた。ナターシャも、たしなめるような目をスコープに向けていた。
「2人とも、どうしたんだ?」
 スコープには2人の行為が何を意味するのか分かりかねた。
「ボーバトンで好きな人ができて、ゆくゆくは国際結婚することになるかもしれないわね、スコープ。」
 リリーが言った。
「『国境を越えた愛』って、素敵だと思わない?・・・痛っ! アル兄さん、何するの!?」
 アルバス-孔雀が、リリーの足を嘴でつついた。
「一体どうしたんだよ、アル・・」
 スコープは言った。
「でも確かに、外国の女の子と仲良くなるってのもいいかもしれない。近頃は、魔法界もグローバル化の波に洗われてるから・・」
 突然、隣で椅子が動く音がした。スコープがそちらに目をやると、ローズが立ち上がっていた。彼女の目に涙が浮かんでいることに気づき、スコープは驚いた。
「どうした、ローズ? 何か悲しいことが−−−」

 バシッ!

 スコープはローズに思い切り頬を張られ、椅子から転げ落ちた。
「ローズ!」
 リリーが仰天して叫んだ。
「一体どうしたっていうの!?」
「私、もう寝るわ。」
 ローズは涙声で言うと、足音も荒く居間を立ち去り、寝室に向かった。