二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 『ハリー・ポッター』二次小説〜騎士王の末裔〜 ( No.80 )
- 日時: 2013/02/10 18:54
- 名前: ウルワルス (ID: JnbcEu1t)
スコープは痛む頬を押さえ、呆然としながら、どんどん遠ざかっていくローズの後ろ姿を見つめていた。
「お兄様。」
ナターシャが言った。
「ローズさんは多分、お兄様のことを−−」
「それを言っては駄目だ、ナターシャ。」
ジェームズがいつになく真剣な口調で言った。
「それは、スコープが自分で気付くか、或いはローズが自分で言うべきことだよ。」
「そういうことだったのね!」
リリーが納得したように言った。
周囲の会話は、スコープの耳にはほとんど入っていなかった。彼は考えていた。
よく分からないけど、ローズが今辛い思いをしていることに間違いはない。さっき泣いていたのだから。
スコープは、自分が辛い思いをしていた時にローズがしてくれたことを思い起こした。ならば、今自分がすべきことは・・・
「ローズの寝室に行ってくるよ。」
スコープは立ち上がって言った。
ちなみにこの屋敷の大きさは相当なもので(5階建て+地下1階)、部屋もたくさんあったため、マルフォイ兄妹とローズは1人につき1部屋を宛われていた。
*
ローズ・ウィーズリーは、寝室のベッドに腰掛けて泣いていた。
『あんな美女とお付き合いできるなんてテディは幸せ者だね・・』
『ボーバトンに行った時、・・・・・・確かに皆かわいかったですね。』
先程のスコープの発言が、耳の奥でこだましていた。
スコープは、自分のことを親友としてしか見てくれない。もしも自分が、ビクトワールやボーバトンの女生徒のような美少女であれば、スコープは自分を異性として意識してくれるのだろうか?
『女子として何の魅力もない、君が!?』
今度は、夏休みに「漏れ鍋」で言われたジェームズの言葉が甦ってきた。
ジェームズの言い方にはむかつくが、確かに自分が女子として魅力的だとは思えなかった。スコープにしても、自分とボーバトンの美少女を比べれば、その美少女の方が魅力的だと思うだろう。もしスコープがボーバトンの女生徒と恋に落ちて付き合うようになれば、自分は耐えられるだろうか?
そういえば、この冬WWWが最新の「惚れ薬」の発売を開始したらしい。「解毒剤」を服用しない限り効果が失われることはないとのことだ。随分と高価だそうだが、それをスコープに贈ってみようか?
そこまで考えて、ローズは自分がつくづく嫌になった。紛い物の愛を望むなんて。それに、惚れ薬を使って自分への性愛を生じさせるのは、スコープの意思を強制的にねじ曲げるということだ。これまで自分と仲良くしてくれ、色々と助けてくれたスコープに対して、そのようなおぞましい行為に及ぼうと考えるなんて・・・
不意にローズは、部屋の扉をノックする音に気付いた。
「入っていいかな・・?」
スコープの遠慮がちな声がした。
ローズは慌てて涙を拭うのに忙しく、答えることが出来なかった。それにどのみち、答えることは出来ないだろう。スコープに会いたいのか会いたくないのか、自分でもよく分からなかった。
スコープは1分程待ってから部屋に入ってきた。ローズがひっぱたいた跡が、まだ頬に残っていた。彼はベッドに近付き、ローズの隣に腰を下ろした。
「僕がジェレイントにノットを攻撃させて、退学を通告された日のことを覚えているかい?」
スコープが意外な切り出し方をしたので、ローズは驚いた。もちろん、あの日のことはよく覚えている。スコープが魔法大臣の馬鹿息子から自分を救ってくれたのも、同じ日のことだった。
「僕がノットを攻撃した時、みんなは僕に化け物でも見るかのような目を向けていた。」
ローズの答えを待たず、スコープは話し続けた。
「マクミラン先生の指示で談話室に戻ってからも、誰も僕に話しかけようとはしなかった。−−もっとも僕が悪いんだから、みんなを恨むつもりはないけどね−−
だけど、君は違った。昼食の時間になると、いつも通り一緒に食べようと誘ってくれた。
放課後、先生方が僕の処分をめぐって会議を行っている間、不安でたまらなかった。その時、君はずっと僕の傍にいて手を握っていてくれた。」
ローズは、顔が熱くなるのを感じた。あの時は自分も、周りの目など気にしていられず、随分と大胆な真似をしてしまった・・。
「それから、僕がホグワーツで過ごした最後の日には、とてもクィディッチをする気分になれなかった僕にキスしてくれた。」
ローズは自分の顔が、その名のごとく薔薇のように赤くなるのを感じた。
「あれのおかげで、僕はちゃんとプレイできたんだと思うよ・・」
「さっきはごめんなさい。叩いたりして・・」
暫くして、ローズは言った。
「何が君に涙を流させ、あそこまで激昂させたかは、僕には分からない。」
スコープは言った。
「だけど今、何か辛いことがあるなら、僕は君の傍にいる。君が僕にそうしてくれたように・・」