二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: 『ハリー・ポッター』二次小説〜騎士王の末裔〜    ( No.83 )
日時: 2016/03/18 23:30
名前: ウルワルス (ID: nLJuTUWz)

第15章  ボーバトン魔法アカデミー






 1月1日の昼過ぎ、スコープは荷物をまとめると(病身のジェレイントはおいていくことにした)、家族と共にロンドン郊外に設置されているポートシステムを使ってパリに移動し、モンパルナス駅に向かった。6番線と7番線の間にある分厚い柱を通り抜け、6.5番線に到着したスコープの目に飛び込んできたのは、ホグワーツ特急とは似ても似つかぬ、グレイの車体に青いラインが横に入った列車だった。
「これはTGV。1970年代にフランスのマグルが開発した列車だ。」
 父が教えてくれた。
「TGVに乗れば、パリからボーバトンまで1時間ちょっとで着く。だからこそ、発車時刻が午後4時半でも何の問題も無いんだよ。」

 

 スコープは家族に別れを告げると、TGVに乗り込んだ。彼が乗り込んだ車両はほぼ満席だったが、4人掛けであるにも関わらず浅黒い肌をした少年が1人で座っている席を見つけた。
「初めまして。」
 スコープはその少年にフランス語で声をかけた。
「座っても、いいかな?」
 少年は驚いたようだった。
「もちろんだよ。僕なんかと一緒の席でよければ・・」
 少年の言葉を不思議に思いながらも、スコープは彼の向かい側に座り、窓の外に目をやった。景色は飛ぶように過ぎていき、TGVのスピードを実感できた。
「あの、君・・」
 少年が遠慮がちに声をかけてきた。
「名前は? 見かけない顔だけど、どの寮の生徒なんだい?」
 ボーバトンには、創設者の名を冠した3つの寮がある。バロンデュール、シャルパンサーニュ、ディオールシアンだ。だが、スコープが配属される寮はまだ決まっていなかった。自分がどの寮に入るのかは全校生徒の前で決定されるのだと、編入試験の際に説明されていた。
「僕の名前はスコーピウス・マルフォイだ。ホグワーツ魔法魔術学校で学んでいたんだけど、その・・ある事情があって、今日からボーバトンに途中編入することになった。」
 ホグワーツを離れることになった本当の理由は、さすがに初対面の相手に話す気にはならなかった。
「寮は、まだ決まってない。
 ところで、君の名は?」
「僕は、アイサム・ムウィレレ。」
 少年は答えた。



「ところで君、このTGVをどう思う? 僕としては、魔法も使わずに一体どうやってこれ程までの速力を生じることが出来るのか、驚嘆の念を禁じ得ないのだけど・・」
 互いに一通り自己紹介を終えた後(アイサムはスコープと同学年のバロンデュール生で、両親はマグルだった)、スコープはアイサムに言った。
「僕に言わせれば、TGVなんて糞食らえだね。『穢れた血』の手になるものなど・・」
 アイサムが答える前に、通路の方から別の声が答えた。スコープがそちらを向くと、彼やアイサムと同じ年頃と思しき数人の男子生徒がいつのまにか現れていた。
「ドランペルージ・・」
 彼らの存在に気付いたアイサムが言った。その表情には敵意が見て取れた。
「黒んぼの『穢れた血』の分際で、僕の名を呼び捨てにするな。ムウィレレ。」
 グループのリーダーらしきライトブラウンの髪をした少年が、高圧的な態度で言った。
「今度僕の名を呼ぶ時は、必ず『ムシュー』を付けるんだ。
 さて、君。」
 ドランペルージはスコープの方に向き直った。
「見かけない顔だな。名前と所属寮を教えてくれ。それから、純血か否かも。」
「名前はスコーピウス・マルフォイ。」
 スコープは無愛想に答えた。こいつらと仲良くする気にはなれなかった。
「今日からボーバトンに編入することになってる。まだ寮は決まってない。」
「じゃあ、君は僕のことを知らないんだな。僕はジュール・ドランペルージ。無論純血で、寮はディオールシアンだ。」
 ドランペルージが言った。 
「名前を聞いて、君が純血だということは分かった。マルフォイ家はブリテンの魔法使いの旧家として、こちらの純血家門の間でも知られてるからね。ただし、単にそれだけの理由で有名なんじゃない。」
「『血を裏切る者』ドラコ・マルフォイを出した家系だからだ。」
 ドランペルージの取り巻きの1人が言った。
「僕の父上は、彼が純血でありながら、トランシルヴァニアでの純血支持法の撤廃に一枚噛んでいたことに、失望と怒りを感じておられる。」
 ドランペルージが言った。
「『穢れた血』の手になるTGVを賞賛したことや、黒んぼの『穢れた血』と喜んで一緒にいることから推して、君はドラコ・マルフォイの息子なんだろう?」
「ああ。だけど僕の父は立派な人だ。少なくとも、君の父親よりはね。」
 そう言うなりスコープは杖を抜いた。